コロナで理美容について改めて考える
皆さんは今回のコロナ騒動の中どうお過ごしだろうか?
美容師でもある僕はサロンの経営方針に従い、衛生対策を徹底しながら通常営業を続けている。
正直複雑だ。
サロンには無症状で感染の自覚がないお客様が来店している可能性も充分ある。
ヘアサロンの業務内容は接触なしで成り立たない。
リスクは高い。
僕が勤務しているサロンでは、スタッフは毎日検温し、熱があったり体調不良者は自宅待機だ。
マスクをつけながら背術にあたり、お客様が触るドアの取っ手や席など全て酸化電位水で都度消毒している。
ご来店時にもアルコールでの手指消毒をしてもらい待ち時間のドリンクサービスも中止。
予約に関しても席が一つ飛ばしで空けれるように詰めすぎないように同時に背術できる人数を制限している。
まぁ悲しいことに制限するほど予約は入らないが。
こうやって対策を徹底するのだが元々理美容所は衛生管理について厳しい。
サロンを開業する時点で保健所のチェックが入ったり国家試験の内容も実技・筆記ともに衛生管理が占める割合が大きい。
理美容の休業要請リスト除外
緊急事態宣言後、休業要請の指定範囲に当初理髪店が含まれていた。
それじゃあ美容室はどうなんだという声があり多くの理美容師は問い合わせの対応に追われただろう。
国や自治体の対応のずれやスピードの遅さに振り回された。
全くもって迷惑な話だ。
結局のところ理美容については自粛要請はかからず、休業するかしないかの判断は経営者に委ねられた。
ただ保障がない中で休業しても店の経営が成り立たない。
正直耐えるしかないというのが現状だ。
もうジリ貧である。
多くのサロンが経営難で、休止ではなく閉店に追い込まれることは目に見えている。
セーフティーネットや各種制度を利用して融資を受けても結局は返済の地獄が待っている。
休業要請に対する協力金や給付金が十分に受け取れれば話は別だが。
理美容の事業に関してはそれも無理になってしまった。
もう個人で動くしかない。
色々準備しなければ。
まぁ経済の話は今回置いておく。
それよりも美容国家資格や衛生管理について特に美容師・美容学生やその他の皆さんに知っておいて欲しいことがある。
それが理美容が今回休業要請リストから除外されたことと大きな関係がある。
リスト除外の理由の一つが分かってもらえるだろう。
併せて少し考えてみよう。
国家資格の意義と美容師・美容学生の認識のズレ
資格が必要な美容師だが、この資格がなぜ国家資格なのか説明できない人も多くいるだろう。
実際、サロンの現場でヘアデザインをする上での必要な知識はサロンに入ってから学ぶことが多い。
専門学校で習ったことは正直なところあまり使わない。
なので現代において理美容学生たちは国家資格の必要性に疑問を持つ。
デザインする力があれば物理的にカットすることは可能だからだ。
学生や美容師の中にはこの辺りに疑問を持っている方も多いだろう。
この疑問の答えは何故、理美容の国家資格が出来たのかを知る必要がある。
法律の公布~国家資格の制定
そもそも最初は昭和23年に理容師法が施行されたのだが、実は美容師法はまだ存在していない。
当時法律ができる前も理髪店では普通に顔そりやカットが行われていたわけだが、ある事件が起こる。
結核だ。
BCGワクチンができる前は「不治の病」とまで言われ現在でも多くの人が感染する。
2016年には日本でも約1900人が亡くなっている。
そしていろいろ感染経路を調べているうちにどうやらそれは理髪店でも感染しているようだと分かった。
どうしても接触して施術するので致し方ないのかもしれないが、やはり衛生上しっかりしていればということで、理容師法が生まれたのだ。
後の祭りだが、きっと最初から衛生管理についての法律があればもっと感染は防げたのかもしれない。
なのでこの法律の一番の目的は衛生管理を徹底させることだ。
理容の定義として「容姿を整えること」とあるが、それついてはさほど重要ではなかったのだ。
しばらくして昭和32年、美容師法が出来る。
なぜ遅れて出来たかというと今まで「整える」のが目的だったのが今度は「美しくする」ことにも注目され始めたからだ。
やっぱり時代とともにオシャレになっていたんだろう。
ちなみに美容の定義を説明する条文の中で、「美しくする」ツールとしてパーマやアレンジ、化粧などをメインにして、それに伴う形でカットやカラーもまぁ必要だよねということで後からサブ的に記載されている。
ただこちらも理容師法から枝分かれしたようになっているので、当たり前だがその流れを汲み美容の業務の際の衛生管理が目的になっている。
理容師法と同様、決して美しくするための技術の免許では無いのだ。
「美しくする」事が先行してまた結核が流行ったら元も子もない。
ちなみに現代においてワインディングやオールウェーブ、カットといった実技試験があるのは、時代とともに「デザイン」の重要性が少し理解され始め、後付けで加えられていったのだ。
最近もワインディングの細かい内容が変わったり、カットの内容がグラボブからレイヤースタイルになったりと少しだけ時代に即したものになってきている。
それでも現場のデザインの観点からみると足りない。
時代に即したものになっていないと感じる。
ただ何度も言うがこれは衛生管理が第一優先の法律・資格なのだ。
デザイン優先ではない。
なので実技試験の時に「消毒済み・使用中」の道具を置く場所があったり、タオルの状態や爪の長さ、身だしなみなどデザイン以外のところの衛生管理の点数が異常に高く感じられると思うが施行された当時から見れば当たり前なのである。
僕も当時は、それだけでそんなに点数引かれるなんて訳分からん、と疑問と怒りが半々になったような感情を持っていた。
そもそも大前提が違う。
「美しくデザインするため」ではなく「適正な衛生管理をするため」の法律なのだ。
絶対美容学生はそんなこと分からない。
ヘアサロンでカットやカラーをしてもらう時、美容師が衛生管理してるところよりも、カットやパーマ、カラーなどの華々しい、見た目にわかりやすい技術しか見ていない。
オシャレなファッションの話などもする。
メイクアイテムの新色がどうだとかも話す。
衛生管理なんて頭の片隅にすら存在しないだろう。
美容師に憧れを持った学生は、美容師やるにはそういったカットなどの難しい技術を習得しなければならないという思いが強く、衛生面はどうしてもサブ的な要素になってしまう。
なので筆記試験がおろそかになってしまうのだ。
ちなみに先程も触れたが少しづつ改正はされている。
しかしあくまで厚生労働省の管轄だ。
その省庁側にしたらデザインなんてどうでもよくて、あくまで衛生管理を目的にした法律なのだから試験内容に疑問など抱かない。
だが現場の思いは少し違う。
専門学校を卒業し、免許を取得したからといってすぐにお客様のカットを出来る訳が無い。
またほぼ1から勉強してしばらくはアシスタントだ。
専門学校時代にあれほど練習した技術が全く役に立たない。
あの時間は何だったんだ、という美容師はかなり多いだろう。
休業要請リスト騒動の経緯
今回コロナの騒動で改めて思った。
あえてしつこく感じるぐらいに言おう。
理美容の免許はあくまで衛生管理なのだ。
始めは理髪店が休業要請のリストに入っていたと述べた。
だが誰かが理容師法・美容師法を再確認したのだろう。
国や自治体にしてみたら、衛生管理がしっかりしてるはずの理髪店・美容室では感染は起きにくいだろう、という事で結局は外されている。
ただ実際ヘアサロンでも感染者は出てしまった。
ますますヘアサロンにお客さんが来なくなる。
あとは理美容の事業所数が多いのも一因だろう。
コンビニの約4倍とか言われているが、現在サロンの数は統計上で理美容合わせて約37万件、その従業員は約75万人となっている。
これは私見だが、今回の休業補償の対象リストについて、理美容のそんな数の保障は限られた財源でおそらく難しい。
衛生管理の法律があるのを良いことに、外せるなら外したかったというふうに僕には見える。
潰れるヘアサロンが増えそうだ。
美容師や美容学生、これから美容を志す方へ
「美容師国家資格は衛生管理」
この大前提はこれからも変わらないだろう。
勉強内容に疑問を感じている学生が非常に多い。
この疑問にしっかり答えられる人間も少ない。
美容学生にきちんと説明できないから生徒が離れていく。
学ぶことが楽しくないからやめてしまう。
でももう法律で決まっていることなのだ。
仕方ない。
この資格がないと法律違反で罰せられる。
美容に携わる人にはちょっとでも拡散して欲しい。
正しい知識を共有して欲しい。
この資格の目的をきちんと理解して欲しい。
その上で美容学生にはきちんと学んで欲しい。
実際この勉強した内容は有事である今、本当に役に立つ知識だ。
消毒方法などもそうだ。
アルコールについても水と相性が悪い。
濡れている手では意味がないとか。
次亜塩素酸系はどう、二酸化塩素はどうとか理解してるだろうか。
効果とリスクがそれぞれ違ったりするし使用方法も違ってくる。
今回のコロナショックで美容業界は正直厳しいのが現状だ。
国や自治体の給付などもあまり期待できない中、これからは自分でどうにかしていくしかない。
その中で個々の力が重要になってくる。
周りに頼っていてはどこかで限界が来る。
それなりで終わってしまう。
幸い、インターネットが普及し、オンラインで勉強できる環境が整っているし、サロンの看板の力を借りなくても今はSNSなどで個人が発信できる時代です。
もう有名サロンの看板の魅力は無くなっていくと思います。
看板の力で集客は出来ても、個々の力がないと結局はリピーターが増えない。
今後、国試対策ではない、現場で使うホントの技術を学べるオンラインサロン、動画配信、イベント(コロナ終息後大阪から)などをこれから作ります。
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