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北畠典生先生にお教えいただいたこと -恩を知り、恩に報いる生き方-
法話 97号 2月・3月 発行「北畠典生先生にお教えいただいたこと -恩を知り、恩に報いる生き方-」
蜷川 祥美
2024年12月25日(水)、浄土真宗本願寺派勧学、文学博士、龍谷大学・岐阜聖徳学園大学名誉教授、山形県天童市・善行寺住職、学校法人善行寺学園理事長・天童幼稚園園長北畠典生先生がご往生なさいました。1928年にご誕生なさり、96歳のご生涯を全うされ、浄土往生を果たされました。先生は、永らく龍谷大学で教鞭をとられ、数多くの学術業績を残されました。また、1995年から1999年まで龍谷大学学長 兼龍谷大学短期大学部学長をお務めになり、1999年から2005年まで岐阜聖徳学園大学学長 兼岐阜聖徳学園大学短期大学部学長、2001年からは、兼ねて聖徳学園理事長をお務めになりました。その後、2001年から2005年まで浄土真宗本願寺派監正局長、2012年から2013年まで、浄土真宗本願寺派本山本願寺初代執行長をお務めになるなど、多方面で偉大なご功績を残されました。
岐阜聖徳学園大学で学長をお務めの頃、「報恩講と新成人の集い」にて、「恩に生かされて-新成人に贈る言葉-」と題したご講演を賜りました。その際の講演録は、『豊かに生きる 21世紀へのメッセージ』(2005年6月8日・自照社出版)に収録されています。
その一節をご紹介いたします。
事実私たちは、多くの周囲のご縁(条件)の支えを受け、他者の恵みによって生かされているのです。/その全他者の根源的恵みの根本を、親鸞聖人はみ仏(阿弥陀仏)の上に見出され仰(あお)がれたのです。み仏というのは、時間的にも空間的にも、絶対価値を持ったお方、換言すれば、無量の智慧(ちえ)と無辺の慈悲(じひ)という完全なお德を持った究極的な真実存在者をさしています。ですから、自らの心の拠(よ)りどころの全体を、そのみ仏の根源にあると受けとめられて、自分はそのみ仏に帰依し信順して救われる、大きな素晴らしい恵みによって生かされているといういのちのめざめのことを恩と受けとめられたのであります。/恩とは、この漢字が示しているように、心に因(よ)って知り得るものであります。それ以外に恩ということは知り得ないのです。そして、恩を知る、すなわち「知恩(ちおん)」とは、いま申しましたようにいのちの自覚(めざめ)のことでありますから、これはきわめて大事なことであります。恩を知ることによって、自然のうちにあらためて恩に報じようという「報恩」の気持ちが湧(わ)いてくるのではないでしょうか。報恩ということを忘れずに、少なくとも忘恩(ぼうおん)の徒にならいようにみなさんは成長してほしいと願っています。恩を忘れてしまうということは、自分の尊いいのちを自らが否定することになるのです。恩を知ることによって、自らのいのちがいよいよ尊く、いっそう輝いてくるものであります。/私は、「恩を知り」「恩に報いる」生き方が人間の本来の姿ではないかと考えます。恩を知ることによって、二十一世紀が輝かしい世紀として、みなさんによって創造されていくものと確信しております。そこに一人ひとりの真の個としての人生が力強く展開されるのです。そうすることによって社会もまた、いよいよ明るく健全なものとして一層開かれていくことでありましょう。
阿弥陀仏の四十八願中の第十二願を光明無量の願といいます。光明無量とは、多くの周囲のご縁(条件)の支えを受け、他者の恵みによって生かされているというあらゆるいのちの真実をそのまま受けとる智慧のはたらきに限りがないということです。第十三願を寿命無量の願といいます。寿命に限りがない、すなわち変わらぬ真実であることを意味します。これらの願はすでに成就しています。つまり、阿弥陀仏とは、空間的に無限の広がりをもった存在であり、時間的にも変わらぬ存在ですので、真実そのものなのです。
私たちは、限りある寿命、限られた能力しかもたず、変化し続ける価値観のなかで、変わらぬ真実に気づかず、自らの利益のみを求める虚仮、すなわち嘘、偽りの生き方をしています。そのようなものに、真実を疑いなくうけとり、真実の世界である浄土に往生して仏と成るための手立てとして、「南無阿弥陀仏」という名号が与えられました。これは、阿弥陀仏の無辺の慈悲を示しています。
また、「南無阿弥陀仏」とは、浄土往生を果たすことができることに対する報恩、感謝の思いで称える言葉でもありますので、多くの周囲のご縁の支えを受け、他者の恵みによって生かされているという真実に気づかせていただいたことへの報恩、感謝の思いも生まれることになりましょう。阿弥陀仏の真実を信じて生きるものは、「恩を知り」「恩に報いる」生き方を志向するのです。
北畠典生先生は、仏教伝道協会のホームページ「先学に聞く 第6回」の動画の中で、「みなさんに信頼されて、その信頼に応えるように最善を尽くすことが大切なことです」と、後学に向けてメッセージをくださいました。
特に、門下生や龍谷大学、岐阜聖徳学園大学の学生、教職員は皆、先生の学徳の高さ、お仕事に対する取り組み方、お人柄の高潔さに全幅の信頼を寄せておりました。恩を知り、恩に報いる先生のご生涯は、多くの方々に信頼される生き方であったのだと思います。
なお、こちらのYouTubeが掲載されている仏教伝道協会の記事はこちらからご覧いただくことができます。