岐阜聖徳学園大学 仏教文化研究所「法話」

岐阜聖徳学園大学 仏教文化研究所「法話」

マガジン

  • 法話

    • 51本

    仏教文化研究所が発行している法話。2ヶ月毎に発行されています。

最近の記事

BeRealな仏さま

法話 94号 8月・9月 発行「BeRealな仏さま」 西川正晃  BeRealを皆さんはご存じでしょうか。授業中にそわそわしている学生さんに話を聞くと、BeRealからの通知が来たとのことです。詳しく知らない私は、学生にそれは何なのかを聞いてみると、今大人気のSNSなのだそうです。学生から説明を何度も聞くのですが、なかなか理解できません。自分なりの理解を言葉にすると、「今この場で起こっている風景を、その瞬間に投稿する」アプリです。それなら他のSNSがたくさんあると思う方

    • 帰命無量寿如来・南無不可思議光

      法話 93号 6月・7月 発行「帰命無量寿如来・南無不可思議光」 蜷川祥美 「帰命無量寿如来・南無不可思議光」  親鸞聖人が詠われた『正信念仏偈』の冒頭の2句であり、浄土真宗の門徒が、朝夕、称えてきた言葉です。  南無・帰命とは、信じさせていただくということです。無量寿如来とは、限りのない寿命、すなわち永遠の仏という意味の言葉で、阿弥陀仏の異名です。また、不可思議光とは、私たちの思慮を超えた限りのない光、すなわちあらゆるものの心の闇を照らす智慧のはたらきをもつ仏という意味

      • 震災と忍辱行

        法話 92号 4月・5月 発行「震災と忍辱行」 城福雅伸  能登半島の大地震は大変な被害が出ており心よりお見舞い申し上げます。                  ◇ ◇ ◇  さて、筆者は、阪神淡路大震災(以下阪神大震災)の時、丁度大阪にいました。  震災当日、NHKのテレビは「地震があった」という報道のみで、コンビニでシャンプーなど数本が倒れている映像のみであり、神戸の記者も妙に落ち着いており、震災などなかったかのように雑談ばかりで、なかなか本題に入らず、「一人で

        • 無常感と無常観

          法話 91号 2月・3月 発行「無常感と無常観」河智義邦 1.良寛さん   裏を見せ 表を見せて 散るもみじ  この句は、良寛が晩年、和歌のやり取りを通じ心温まる交流を続けられた弟子の貞心尼が、良寛との和歌のやり取りをまとめた歌集「蓮(はちす)の露(つゆ)」に出てくるものです。有名な句なのでご存じの方も多いと思います。 貞心尼が、高齢となり死期の迫ってきた良寛のもとに駆けつけると、良寛は辛い体を起こして、貞心尼の手をとり   いついつと まちにし人は きたりけり いまはあい

        マガジン

        • 法話
          51本

        記事

          自由は不自由?

          法話 90号 12月・1月 発行「自由は不自由?」西川 正晃 NHKの朝の連続小説「スカーレット」(2019年度後期放送)に登場した世界的な芸術家・ジョージ富士川の言葉がとても印象的でした。それが、「自由は不自由だ」です。スカーレットとは、NHKのいわゆる朝ドラで、戦後まもなく、大阪から滋賀・信楽にやってきた女性が、陶芸への情熱は消えることなく、自らの窯を開き、独自の信楽焼を見出していく、当時では女性陶芸家が珍しかった時代の物語です。古代の窯跡で室町期のつぼのかけらを見つけ

          南無阿弥陀仏と申して、疑いなく往生すること

          法話 89号 10月・11月 発行「南無阿弥陀仏と申して、疑いなく往生すること」蜷川祥美  法然聖人(1133~1212)の『一枚起請文』に、「ただ往生極楽のためには、南無阿弥陀仏と申して、うたがいなく往生するぞと思いとりて申す他には別の子細候わず」とあります。阿弥陀仏の極楽浄土へ往生を遂げるためには、ただひたすらに「南無阿弥陀仏」とおとなえするのです。一点の疑いもなく「必ず浄土に往生するのだ」と思い定めておとなえするほかには、別になにもありませんという意味です。  お念

          南無阿弥陀仏と申して、疑いなく往生すること

          親ガチャ、子ガチャ

          法話 88号 8月・9月 発行「親ガチャ、子ガチャ」城福雅伸 <親ガチャ>  昨今「親ガチャ」という言葉を聞きますが、我々が学生の頃は、「親ガチャ」という言葉はありませんでした。紺谷典子氏によると、経済の衰えた先進国も含め、全世界の国民の平均所得が、この20年間で最低2倍になっているそうですから、日本人の平均年収は、20年前に500万円代であったとしますと、現在は少なくとも1000万円以上あることになります。ところが、現在、日本のみが、規制緩和以降、大企業の役員の年収は先進

          ~雑草という草はない(害虫という虫はいない)~

          法話 87号 6月・7月 発行「~雑草という草はない(害虫という虫はいない)~」河智 義邦 1.NHK朝ドラ『らんまん』  4月から放映されているNHKの朝ドラ『らんまん』は、日本の植物学者・牧野富太郎の半生をモデルとした内容になっていて、俳優の神木隆之介さんが主演されています。牧野先生は、「日本の植物学の父」といわれ、多数の新種を発見し命名も行った近代植物分類学の権威であります。その研究成果は50万点もの標本や観察記録、そして『牧野日本植物図鑑』に代表される多数の著作とし

          ~雑草という草はない(害虫という虫はいない)~

          のぞみはありませんが ひかりはあります

          法話 86号 4月・5月 発行「のぞみはありませんが ひかりはあります」西川 正晃  これは、文化庁長官を務められた心理学者の河合隼雄さんの言葉で、将棋の谷川浩司さんと対談を収録した「無為の力」に収録されています。新幹線の駅員さんに、「のぞみはもうありません」といわれて言葉を失った河合さんは、その後に「ひかりはあります」と言われたそうです。駅員さんも、「(新幹線の)のぞみは終わり、ひかりならまだあります」と事実を述べただけなのです。こうしたなにげない言葉に、河合さんはとても

          のぞみはありませんが ひかりはあります

          親鸞聖人御誕生 850 年・立教開宗 800 年慶讃法要

          法話 85号 2月・3月 発行「親鸞聖人御誕生 850 年・立教開宗 800 年慶讃法要」蜷川 祥美  浄土真宗を開かれた親鸞聖人(1173~1263)は、1173(承安3)年にご誕生され、1263(弘長2)年にご往生なさいました。聖人のご生涯の目標は、生死出づべき道、すなわち、迷いの世界を出て、さとりの世界へ往き、仏となることを目指すことにありました。  聖人は、9歳のとき、天台宗で得度をなさり、修行して仏となることを目指す生活を始められました。しかし、結局、29歳までの

          親鸞聖人御誕生 850 年・立教開宗 800 年慶讃法要

          ワールドカップにおける選手とサポーターの清掃活動に見る日本人のメンタル -清潔にすることは日本人の感謝の表現であり宗教的な感性-

          法話 84号 12月・1月 発行「ワールドカップにおける選手とサポーターの清掃活動に見る日本人のメンタル -清潔にすることは日本人の感謝の表現であり宗教的な感性-」城福雅伸 ワールドカップに出場した選手やサポーターが試合後、ロッカールームやスタジアムをきれいにしていくことを世界が日本人のマナーのよさ、礼儀として高く評価されています。  それを違った角度から見てみましょう。 <ワールドカップでの試合終了後の選手やサポーターの清掃>  今回のW杯の各試合でも、また他の大会

          ワールドカップにおける選手とサポーターの清掃活動に見る日本人のメンタル -清潔にすることは日本人の感謝の表現であり宗教的な感性-

          「重誓偈」~超世の願い~

          法話 83号 10月・11月 発行「「重誓偈」~超世の願い~」河智 義邦 1.後期の勤行「重誓偈」  羽島キャンパスでは、後期の勤行の時間に「重誓偈」というお経を読んでいます。これは親鸞聖人が「(凡夫である私が救われる道を説いた)真実の経典」と示された『仏説無量寿経』(『大経』)の中にある偈頌(げじゅ=仏さまをたたえる歌)です。五言四十四句の十一偈から構成されていて、短時間で読むことが出来ます。『大経』では、主人公となる法蔵菩薩が衆生救済の方法などを四十八通りにわたって誓っ

          過去は変えられる

          法話 82号 8月・9月 発行 「過去は変えられる」西川 正晃 「覆水盆に返らず」という諺があります。一度起きたことは元に戻すことができないことを意味する中国の諺です。家を出て行った妻が、元夫が昇格したのを見て復縁をせまったとき、男が「地面にこぼした水を盆の上に戻してみよ」と言ったことが由来とされています。元には戻り得ない自然現象を使って、復縁はないことをさとしたのです。この諺にあるように、一度起きてしまったことはいくら悔やんでも変えることはできないと、私たちは思い込んでい

          黒白二鼠(こくびゃくにそ)の喩え

          法話 81号 6・7月 発行「黒白二鼠(こくびゃくにそ)の喩え」 蜷川 祥美 仏教では、「諸法無我」「諸行無常」の教えを説きます。真実も含めてあらゆる世界に何一つ変わらぬ実体は存在しないので、この世のものはすべて一瞬一瞬変化し続けており、生まれたものは必ず滅びるという意味です。 私たちの身体や心は、周囲からの影響を受けて変化し続けており、歳を重ねた後には必ず死が訪れます。手に入れた新車もすぐに古くなってしまいます。皆が健康な家族との生活も、誰かが新型コロナウイルスに罹患

          ロシアのウクライナ進行に寄せて

          法話 80号 4・5月 発行「ロシアのウクライナ進行に寄せて」 城福 雅伸 <識者の発言と日本国憲法と国是> ロシアがウクライに軍事侵攻し、ゼレンスキー大統領率いるウクライナがこれに抗戦している。 日本のある識者は、ゼレンスキー大統領はすぐにロシアに降伏すべきだと主張した。そうすればウクライナ人の命は失われずに済むと。 この識者の意見に多くの批判が起きている。 しかしながら論理的には日本人は、この識者と同じ意見でなくてはならないはずである。 日本人は自由や文化、尊厳、幸福

          不易流行-念仏のみぞまこと-

          法話 79号 2・3月 発行「不易流行-念仏のみぞまこと-」河智義邦 コロナ禍(新型コロナ感染状況下)となったこの数年で、多くのこと(もの)を失いながらも、多くのことを学ばさせていただき、気づかされたように感じています。それは決して無理にそう思うことで、この状況の中で何かしらの意味を見いだし、この難局を乗り切ってやるぞと力んでいる訳ではありません。具体的にどんなことについてそう思うか教えて下さい、と尋ねられたら、何からお答えしていいか分からないほどに、公私にわたってそのよう