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マルチプロダクト時代の新たなPMMモデル『TierPMM』とは

プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)は、プロダクト戦略と市場ニーズをつなぐ橋渡し役として、企業成長に欠かせない役割を果たしています。従来、PMMは事業領域やプロダクト単位でのアプローチが一般的でしたが、SmartHRでは事業拡大に伴い顧客セグメント別にアプローチする新しいPMMモデル『TierPMM』を導入しました。

TierPMMは、顧客セグメントを起点にBizとプロダクトを横断的に繋ぎ込み、マルチプロダクト戦略の実行を支えます。

TierPMM誕生の背景

① プロダクト戦略の複雑化
SmartHRは「労務管理」「タレントマネジメント」「情シス」など、複数の事業領域を展開するマルチプロダクト戦略を掲げています。しかし、領域が広がるにつれ、横断的な顧客ニーズに対応する必要性が高まりました。既存の領域単位のPMMだけでは解決が難しい課題への対応として、顧客セグメントに基づいて事業領域を横断するTierPMMの必要性が顕在化しました。

② Biz組織体制の移行
組織体制の観点からも大きな変化がありました。これまで機能別(セールス、CSなど)で分けていたBiz組織を、顧客セグメント別に「エンタープライズ事業本部」と「グロースマーケット事業本部」に再編しました。
この新体制により、職種を超えた連携や横断的な意思決定のスピードが向上しました。
しかし、事業本部間にまたがる機能(パートナービジネス、業務推進、PMMなど)をどのように一貫性を持たせるかが新たな課題となり、これを解決する役割としてTierPMMが期待されています。

③ Tier別戦略の不明確さ
SmartHRでは顧客セグメントをSMB、MMB、EBのような規模別のTierで分けています。
しかし、実はTierごとのポジショニングや中期的な戦略が曖昧でした。
それもあって、Bizからプロダクトへのフィードバックが悪くいうと場当たり的なものになってしまっていたり、予算策定においてBiz(Tier区分の組織)とプロダクト(領域区分の組織)の連動があまりないまま検討が進んでいたりしました。
結果的に、いつまでにどのプロダクトをどのTier向けに強化すべきかや、各Tierの予算やリソース配分が全社的に適切かどうかの判断が難しく、マルチプロダクト戦略を適切に推進しづらい状態でした。

複数領域×全Tier を対象とするSmartHRならではの難しさがあり、極端に言うとこんな状態でした

TierPMMの役割

こうした背景をもとに生まれたTierPMMは、SmartHRのプロダクト全体とTier別戦略を一貫した形でつなぎ、マルチプロダクト戦略の実行を支えます。
現在はBiz組織に合わせて、エンタープライズ事業本部(以降:EP事業本部)とグロースマーケット事業本部(以降:GM事業本部)それぞれにTierPMMを1名ずつ配置しています。
私はEP事業本部を担当しており、TierでいうとMMB(501~2,000名)とEB(2,001名~)の2つが該当します。
各Tierによって業務の濃淡ありますが、この半年でやってきたことは主に5つです。

1. Tierカットでの市場ニーズやBiz状況の理解
顧客セグメント別のニーズや市場の変化をいち早くキャッチし、Biz↔︎プロダクトを繋いでTierに適した戦略を実行するため、泥臭く情報収集しています。
具体的には、担当Tierの商談同席、電話ヒアリング、成約・失注・チャーン分析はもちろん、EP事業本部の各種会議(マネージャー定例、セールス定例、エクスパンション定例、プランニング定例など)へ参加しBiz組織へ深く入り込むなどしています。

2. Tier別のポジショニング明確化
市場ニーズの理解に加えて、SmartHRの全プロダクトを横断的に把握し、各Tierに合わせてどのような顧客価値を提供できるか整理しています。
2~3年先を見越して、いつ・どのようなポジショニングを目指していくか、そのために必要なピースがなんなのかを少しずつ可視化していきました。
各事業領域を担当するPMMやPMとの連携しながらTier向けの全体ロードマップを大枠で作成したり、それを元にEP事業本部と営業戦略の話を進めています。

3. 予算計画策定
プランニングチームと連携して、プロダクト観点から直近1,2年の予算計画策定をサポートしています。
従来、Bizの予算計画は基本的にBizメンバーのみで進めていたのですが、そうすると主要な論点が営業力強化やキャンペーン施策などに限られてしまい、どうしても変数が少なく、予算達成が困難に感じられる局面も出ていました。
そこで、プロダクト×Tier別の目標値を可視化し、モニタリング・実行できる体制を整備しています。
営業努力だけでなく、プロダクトの現状や伸び代も含めて議論することで、本当の意味で適切なストレッチを効かせた予算計画、頑張れば実現できると思える計画を立てていきました。

ちなみに、プランニングチームの皆様は人材濃度が非常に高く雰囲気も抜群で、一緒に仕事していてとても楽しいです。

4. プロダクトとBizのアライメント
中期的なポジショニングや直近の予算状況を踏まえて、Tier別戦略とプロダクト戦略を繋ぎこむべく、Biz観点からロードマップアライメント(※)を推進しています。

具体的には、ISやSales、CSのハイパフォーマーから得た定性情報を取りまとめたり、データアナリストの定量情報の分析結果とすり合わせ。それらをTier別の中期的なポジショニングと照らし合わせて、TierPMM同士でバランスを取りつつ、勝因と敗因を整理し、重要論点を絞り、プロダクトチームへ連携しています。

5. 戦略の実行
描いた戦略や計画を実行するため、イネーブルメントにも入り込んでいます。
具体的には、各事業領域を横断したTier別のデモの型を作成したり、プロダクトの最新状況を踏まえたロープレ込みの研修を企画・実施していたりします。
その他にも新規プロダクトリリースを見越した販売体制やGo To Marketの検討であったり、Tier別のパッケージング企画なども着手し、戦略を一貫して実行→PDCAを回せるようにしています。

今後の展望

TierPMMの導入によって、徐々に改善の兆しが見えてきています。

  • 顧客セグメントごとの中期的なポジショニングが整理され、2~3年先を見据えた施策が動き始める

  • Bizとプロダクト間の連携がより一層強化され、戦略実行の一貫性が担保され始める

ただし、この役割も始まったばかりで、まだまだ伸び代も多いです。

  • 顧客セグメントのさらなる深掘りと、競合環境も含めた解像度向上

  • 中期的な目標とその達成に向けた具体的なロードマップの整備

  • Bizとプロダクト開発のタイムラグを考慮した効率的なPDCAサイクルの構築

やるべきことが大盛りですね!

おわりに

TierPMMは、SmartHRの複数事業領域を横断し、顧客セグメント別に最適化された価値提供を実現するための重要な役割になっていきそうです。この新しいPMMモデルにより、顧客の期待を超える価値を提供し続けたいです。

最後に一言。
薄々勘づかれたと思いますが、TierPMMはプロダクト全体とBiz全体の双方を把握し、かつ、上流から下流まで幅広く立ち回っていることから、カバー範囲がまぁまぁ広いです。
頭のネジを2,3本外してカオスに向き合っており、刺激的な毎日です。
マルチプロダクトを展開されている企業様で、近しいポジションをやっている方がいらっしゃいましたらぜひ情報交換 & 労り合いましょう笑

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