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4. The World Is Yours 徹底解説
Track.4
The World Is Yours
まえおき
まずはタイトルの「The World is Yours」は「世界はお前の物だ」という直訳すると大胆な言葉である。これはアメリカの悪党達全員に影響を与えた「Scarface」というアル・パチーノ主演の麻薬映画の中に出てくる有名なシーンと、映画内に出てくる「The World is Yours」と書かれた特徴的なオブジェクトに対するオマージュであるのは間違いない。映画のあまりの影響力に様々なラッパー達の歌詞の中で主人公のTony Montana(トニー・モンタナ)をはじめとするキャラクターだけでなく、映画内のセリフをサンプリングして曲に盛り込んだり、映画で学んだ思想などを歌う者まで多数いるほどである。
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影響を受けたラッパーの例を出すとIce Cubeの曲「The world is mine (世界は俺の物だ)」があったり、もっと時代的に近い所だとFutureの「Tony Montana」という曲があったりと、本当に数えきれないほどのラッパーがScarfaceに憧れている事がわかる作品が多数存在する。今作はそんな多くのオマージュした曲たちの中でも初期の方であるのは間違いない。
今回のビートを担当したPete RockとはLarge Professorから紹介されたらしくNASの為に造った曲ではなくすでに作り貯めているビートの中からNASが選んで、気が付けばスタジオで録音が開始されたぐらい早く進んだのは有名な話である。Jazzyなピアノと太いベース、軽快なドラムが印象的で「落ち着いたBoom Bap」って感じの印象を個人的には受けている。踊る曲というよりはリリックをしっかり聴くためのビートって感じもしていて、20歳前後でこれを選ぶNASの渋いセンスが伺える。
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Hook
原文:
It’s Yours
Whose world is this ?
The world is yours, the world is yours
It’s mine, it’s mine, it’s mine. Whose world is this?
It’s Yours
Whose world is this ?
The world is yours, the world is yours
It’s mine, it’s mine, it’s mine. Whose world is this?
直訳:
お前のだ!
この世界は誰の物なんだ?
世界はお前の物だ、世界はお前の物だ
俺のだ、俺のだ、俺のだ。この世界は誰の物なんだ?
解説:
ほぼスタートと同時に1984年にリリースされたT La Rock & Jazzy Jay の「It’s Yours」という曲からサンプリングしたフレーズ「It’s Yours」をスクラッチをぶっ込みながらHookで始まる。
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続く「Whose world is this?(この世界は誰の物なんだ?)」の部分は実はPete Rockが直々に歌っている。これはPete Rockがインタビューで言ってたことだが「コーラスの部分でNASに歌わされたよ。あいつは俺に、これを歌って欲しいんだ!って言ってきたけど、最初断ったんだよな。でも、奴が勝手に歌いだして、気が付けばスタジオで歌うハメになってレコーディングまで始めちゃったって話だよ。今となってはNASに紹介してくれたLarge Professorに感謝してるよ」という経緯を発言している。「It’s mine, It’s mine, It’s mine(俺のだ、俺のだ、俺のだ)」の部分もPete Rockが歌っている。
NASは「The world is yours(世界はお前の物だ!)」の部分を歌っているが、このフックは全体的に冒頭で説明したとおり、映画「Scarface」からインスパイアされているのは明らかだ。「世界は俺の物だ」と「世界はお前の物だ」という軽い矛盾みたいなのを生じてるが、それはもちろん意図的にやっていて、聴き手に解釈を任せる為である。
そもそも映画内の「The world is yours」の解釈も様々だったのも事実だが、とにかくあまりにも「パワーワード」的な要素が強すぎるためインスパイアを受けて自身の歌詞に使用したのが始まりだと私は勝手に解釈する。しかし、もちろんちゃんと意味もしっかり持たせているが、簡単に言って「世界はお前の思う通りになる」や「人生の良し悪しは結局自身で決めるものであり、自分にしかコントロールできないものだ」という解釈が強いと私は受け止めている。だからこそ、世界はお前のだと言ったり自分のだと言って矛盾点を産んでいるのだ。
要は「世界は人口の数だけ存在する」ってことである。
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Verse 1
原文:
I sip Dom P, watchin’ Gandhi ‘til I’m charged, then
Writin’ in my book of rhymes, all the words past the margin
直訳:
俺は「ガンジー」を見ながらドンペリをすすってチャージする。そして、
俺のライムブックの中に余白を超えるぐらい書き込んでいく
解説:
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