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大手メーカー↔ITベンチャー、設計↔人事を経験したおっさんが就活生に伝えたいこと

結論:職場は雰囲気で選んでいい

日系大手メーカーとITベンチャー、エンジニアと人事、とそこそこ広い範囲での業務経験があります。その経験の中で感じているのがこの結論です。

現職では学生の方と接する機会も多く、時々就活話を聞きます。
話を聞いていると、
・どんな事業規模が働きやすいか
・どの業界に将来性があるか
等々、みんな色々な考えを持って就活に取り組んでいます。
自分のこれまでを振り返り、自分ってどんな人間なんだと深堀りし、面接の合否に悩み。。。
就活でしかできない経験はたくさんあるので、就活は力の入れどころ、まさに正念場です。
実際、ファーストキャリアは仕事感の形成にとても重要だと思うので、いろんな切り口で考え、最善の答えを出せるといいと思います。

じゃあなんで、この結論なんだということを書いてみたいと思います。

はじめに:私のキャリア

はじめに、冒頭に書いたキャリアについて少し詳しく説明します。
化学工学の修士を取得し、日系大手メーカーにエンジニアとして新卒入社しました。エンジニアとして3年間働いた後、人事総務系の部署に異動。新卒(高専生)やダイバーシティ推進などのばりばり人事職を2年間担当し、またエンジニアに戻ったところで、ITベンチャーに転職しました。

この記事では、就活をしている学生の間でよく話題になる観点について詳しく書いていきます。主に「大企業とベンチャー」や「理系職と文系職」といった対比で書いていきたいと思います。

ちなみに下記の記事にすごく共感しています。下記の記事を実体験としてはどうなの?みたいなところで補足できれば十分と考えています。https://www.mag2.com/p/money/885437

※とは言っても10年もないキャリアですし、そもそも二社間の比較でしかありません。個人的な経験による感想であることは認識ください。大企業擁護のような書き方をしているところも多々ありますが、私自身今はベンチャー企業で働いて満足しているのでどちらを選ぶべきかを話したい訳ではありません。むしろ逆です。よく聞く論調への反証ととらえていただければよくて、意思決定の材料として使っていただきたいと思います。

観点1 責任領域

ベンチャーだと個人の裁量が大きく、若手から責任ある仕事を任せてくれてやりがいがある。大企業だと責任が狭くて会社の歯車感がある。

「そうでもないんじゃない?」というのが私の見解です。

ベンチャーでは、目指している成長速度に比べて人手が圧倒的に足りていない上にその業務に精通した先輩が存在しません。何でもかんでも自分たちで手探りでやるしかありません。当然、マネジャーだったりリーダー的な役回りに任ぜられることも多くなります。結果として若手からいろんな仕事を任せてもらえる、という”感覚”はわかります。

一方で大企業だから若手に大きな仕事がないかというとそうでもありません。

まず「責任領域=扱う金額の大きさ」という考え方だと、大企業では1年目から数億単位の案件がほいほい転がっています。

次に「責任領域=業務の幅広さ」という観点だと、新卒エンジニアでも数十億円の予算管理(と経費処理とか)やら人的なマネジメント業務に忙殺されます。
また、たくさんの取引業者とネゴシエーションも行いますし、金額の規模が大きい=社外関係者も多いので、多様な方々と会社の代表として接する機会もたくさんあります。

ベンチャーはいかんせん資金不足なので金銭的にできることが限られがちで、「責任領域=自分の関係領域の広さ」みたいに定義しても領域はそれほど広くないのでは?と感じます。

理系は専門特化になるので業務領域が狭い。特に大学での専門で分けられるので、同じことをやり続ける。

これはまるで嘘だと思います。似非理系か、会社というよりその人個人の評価(つまり活躍できる領域が偏っている)によるところが大きいでしょう。もちろん会社の方針によって異なるとは思いますが、一部の会社の方針がすべての会社、業種に当てはまるわけではありません。

少なくとも私はエンジニアとして採用され、その後人事・総務周りの仕事をしていました。
人事周りの仕事をしていても、周囲にも常に何名か同じキャリアの先輩がいたので、少なくとも前の会社は「理系に理系の仕事だけをさせる」方針ではありませんでした。
理系としての専門性特化の働き方をしたくないならそういう会社を選べばいいので、会社の規模は関係ないのではないかと思います。

また、エンジニアとして働いていても、働き出して初めて学んだことだらけでした。
学術的に必要な知識と企業活動として違う知識は異なる、という事実もあります。
それよりも専門教育だけでは足りない幅広さが求められました。例えば、私は化学工学を専攻していましたが、仕事では電気、土木の知識もフルで必要になりました。
専門知識は当たり前で、それよりも同僚・上司、さらには工事に来られる職人さん方との意思疎通も求められます。
仕事の成果に専門教育が直結することはむしろ少なかったように思います。

大企業かベンチャーか、理系か文系かで自分の仕事の領域が決まるわけではありません。就職先を決めるときは、単純にこの切り口での比較はできないのではないかと考えています。

観点2 働き方

大企業だと、会社の歯車に甘んじている人が多く、ベンチャーの方がガツガツした人が多い

これも先入観による歪みがあるのではないかと感じます。

大企業に勤めていたときは「同業他社との競争に勝つためにはこんなに休日があったら困る」、「正月こそ他社を出し抜くチャンス。優位性を作らなくては」みたいな論調が強く、私自身もそう思っていました。

目標を達成するためには、チームの総力戦になるためまるで歯車感は感じませんでした。
チームの中での自分の役割は確かに存在します。誰が欠けてもそのチームではなくなってしまうような、仕事って場所を問わずそんな雰囲気です。部活で団体競技に本気で打ち込んだことのあるかたならイメージはつくと思います。

ベンチャーはブラック、大企業はホワイト

これは大嘘。うちの会社が特別かもしれませんが、ひと括りにはできません。

労働時間は大企業に勤めていたときのほうが長く、サービス残業が月100時間を超えることも珍しくありませんでした。
単純な業務の負荷・ストレスは大企業の方が高かったように思います。
(平社員よりも部長級のマネージャーの方がストレスは低い、という調査結果があるらしいです。転職してマネジメント業務が増えたからストレスは減った可能性も否定できません。)
そういった状況だったので、前職では常に(本当に常に)仕事のプレッシャーを感じ続けていました。

ただ、どの会社だろうと部署ガチャ、上司ガチャはでかいです。
大企業側の極限には公務員のイメージがあります。公務員も官僚になると激務薄給ですし、地方公務員でも部署によってはとんでもない激務と聞きます。窓際族的な方の多い部署もあったりすると思うので、会社間の差よりも部署間の差のほうが大きいかもしれません。

部署ガチャ、という観点だとベンチャーに分があるかもしれません。大企業だとまず自分の希望が通ると思わないほうがいいです。いかんせん人数が多いので、全員の希望は叶えられないからです。
少ない人数で、どの部署で採用するかもあらかじめ決まっていることが多いベンチャーの方が、ハズレ感はないかもしれません。
ただし、ベンチャーは人の入れ替わりも激しく、ある日突然事業計画が大転換するなど目まぐるしく状況は変わるので配属ガチャと一概に比較できません。

観点3 収入

タイムレンジを考慮すると、直近10年くらいだと大企業有利、20年くらいだと「わからない」が答えかなーと思います。(自分がベンチャーにかける期待でバイアスがかかっている可能性は大です。)

数年で給料ががっつり下がる確率を考えると、大企業よりもベンチャーの方が圧倒的に不利でしょう。ベンチャーはいつ倒産するかわかりませんから。
ただ、ベンチャーの場合ストックオプションや役員就任などで将来的に大きな収入を得られるとなまじ期待できてしまいます。

大企業だと自分の力で儲けているのか、先人の作り上げた仕組みで儲けているのか分かりにくいこともあります。大企業で活躍していたとしても、会社の業績が悪くなって放り出されたときに本当に自分の力で生き抜けるか、心配になるかもしれません。そういった意味ではベンチャーで事業の立ち上げに近い時期を経験している、というのは安心材料になると考えることもできます。

じゃあどうやって見極めんの?

ここですよね。
ステップとしては下記のようなイメージです。
1.自分の中で評価軸を複数見つける
2.複数の企業を並べて、(可能な限り定量的に)比較してみる
3.最後はえいやー
ここまでやれば「果報は寝て待て」です。

1.の段階で忘れずにいれていただきたいのが、会社の雰囲気が自分に馴染むかどうか、です。
何なら傾斜つけて重視してもいいです。

ここまでだらだらと書き続けたのは、
・どんな観点にしても、一概にどちらがいいとは言えない
・配属ガチャや事業変更で状況はすぐに変わる
ということです。
変わると分かっていることを重視しても入社後のギャップでまた悩むことになるのかなと思います。

そこで何度も繰り返したらいいのではないかと感じる問は、
「この会社に自分と同じ価値観を持つと思える人は何%いるか」です。

先輩社員との懇親会、説明会のふとした瞬間を見逃さないようにしましょう。
意外と思いがけないところで会社のカラーがでます。
私自身、採用業務中にすごく気をつけていたのが、
・「採用担当」と「採用活動に呼ばれてきた社員」の距離感
・説明パート以外での役割分担
です。
私がいた会社は、下記の記事の”①~⑤以外の社風の見分け方”の図で言う左下の象限にあります。
http://www.mynewsjapan.com/reports/1224
お互いに不幸になりたくないので、随所でこの雰囲気を見せるようにしていました。
例えば、
・採用担当者と採用活動に呼ばれた社員の雑談が多い。
・業務外の雑談もする。
・すぐに打ち解け、名前を呼び合う
・片付け、準備は皆でやる。上司も部下も担当も関係ない。
みたいなところは皆ですごく意識していました。

いろんなヒントが転がっているはずです。
最後は自分で決めたことだと納得できるように、いろいろ考えて結論をだしていただきたいなと思います。

最後にもう一点。
どんなに優れた人でも、会社が今欲しいかどうか、他の候補者と比較してどうか、なのでコントロールできない領域は存在します。
ある会社に選ばれなかったからといっても、その人の価値が損なわれるわけではありません。
会社は応募者を選びますし、応募者も会社を選びます。
ビジネスなのでそれでいいんです。

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 学術的な研究結果を元に、適職の見つけ方をわかりやすく解説してくれています。

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 陸上の為末大さんの著作です。ネガティブに見えるタイトルですが、中身はとんでもなくポジティブです。自己分析に悩んだら、おすすめです。

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 アンチもいますが、わかりやすいです。就活で失敗しない方法という章は、企業間比較をやりやすくしてくれると思います。

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