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ライナーノーツ〜種を探す〜

こんにちは、関野です。

文月プロデュース公演 #1 『草の便り』という作品を鎌倉で作ることになりましたので、その目論見と過程をしっかり明示しておくためのライナーノーツ第3弾です。

前回の記事で鎌倉に行き実際に公演の会場となる劇場の見学と本読みをした我々はついに初稽古をしました。

まずは前回の稽古以降少し日が空いてしまったので、それぞれがどのようにその期間を過ごし、なにか気になっている点があるかを確認するところから稽古は始まりました。

普段僕が主宰する劇団カツコの公演では脚本と演出が僕であるため、あまりこういったことはしません。

なぜなら、作家である僕と演出家である僕が、脚本という設計図にタッチしながら、同時に演出家として、具体的に俳優にディレクションを行えるからです。

これは良い面と悪い面があって、そもそもその物語が立ち上がってきた背景や種を僕が台本と演出で逐一言葉にしながら共有できるという良い面と、一方で、どこまでが作家の領域で、どこまでが演出家の領域かクリアでないという悪い面がありました。

つまり、物語が立ち上がる前の動機や熱量(目的)と見せ方(手段)が判別しずらくなってしまうという弊害があります。僕はこれまでの作品作りで、目的と手段がひっくり返ってしまうことが多々ありました。

そういう意味では今回作家と演出家が完全に分離していることはとても良いことだと思っています。


僕たちはまず、今回の『草の便り』という作品の種を探すという稽古をすることから始めたのです。

まずは、この空いた期間で俳優と僕自身に課していた宿題である。

『作品のいびつだと思った点』の共有から始めました。

【いびつだと思う=身体が拒絶をする=現状の課題】

という過程のもと、イメージが躓く箇所を早いうちに共有していくことが大切だと思ったからです。

ただ、あくまでこれは取り組みのスタート位置であって、最終的には必ず解決しなければならない課題であること、つまり、このイメージの躓きを諦める布石にしてはならないということを共通認識にしました。

これを始めて気がついたのは、思ったより言葉にならないなという点でした。

台本を読んで、『変だな。』とか『なんだこれ?』という躓きやいびつだと思う前の違和感を言葉にしていくことがこれほど大変な作業だとは思っていませんでした。

けっこう人は途中でイメージをすり替えながらキャラクターというものを演じれてしまうし、キャラクターの軸足が俳優本人に寄りすぎてしまうなと感じたので、すぐに本読みに切り替えました。

あくまでイメージが崩れる様が客観的に現れるのを指摘する方法にシフトチェンジしました。

俳優という職業は自身の言葉で語るというタイミングを間違えると大きな言葉の制約を受けてしまう職業だなということが気がつけたのは大きな収穫だったと思います。

本読みを終えた後は、僕から見えたイメージの断絶を中心に、どのような補助線を引けば、この作品の根幹が見え得るのかを提案しながら進めて行きました。

そして、具体的にどのような場所で生活しているのかを共通認識するために地図や間取り図を描いてみたりしながら、この作品のイメージを膨らませていくことを中心に進めて行きました。

場所の共有を終えると稽古もかなり終盤になり、最後に代表のナカノキョウコが今回の種になるイメージや今わかる範囲の今後の展開について時系列の整理をして、その日の稽古は終わりました。

稽古後、私は帰路でこんなメモをとっています。

イメージはあくまで言語で成り立ちうると思っていたが、全然そんなことはなかったっぽい。映像や匂いでこそイメージは成り立つ。バランスの方が重要だ。言語化に踊らされてはだめだ。ただ、言葉なしでイメージを伝えること自体はかなり危険な気がする。演出が踊りながらイメージを伝えたらクソ笑える。イメージの又貸しはだめ。僕は言葉しか使えないっぽい。いかちー。

すんごい『っぽい』って使っているけれど、俳優が身体を使うために、僕は演出家として、いろいろな言葉を使わなければならないという覚悟みたいなメモになってしまっている。ただ、だいぶ饒舌なメモで僕が相当楽しんでいることがバレバレだ。

次の稽古も頑張ります。

次回【言語と非言語】

文月プロデュース公演 #1 『草の便り』
作    ナカノキョウコ(文月)
演出   関野 翔太(劇団カツコ)
出演   昆野 祐希 三浦 碧至 大関 朱音
制作   類家 アキヒコ(劇団カツコ)
企画・製作 文月
あらすじ
彼女は疲れていた。人に求められることにも、人に求めることにも。
ある日、ほんの少しのきっかけで彼女は東京を捨てて鎌倉に移住することを決める。ちいさな陶芸教室で働き始めた彼女のもとに、故郷から妹が訪ねてくる。ゆったりとした時間が流れる街で、彼女たちは、変化する風景と向き合って行く。
2018/11/16(金)-11/18(日)
     14:00  19:00
11/16 ————————◆
11/17 ———◆————◆
11/18 ———◆————◆
  チケット 1,500円
@大町ジャンクション ドミトリールーム
神奈川県鎌倉市大町2−2−35
鎌倉駅徒歩10分