【800字エッセイ】新宿区マンションの怪
あたくし、オジおばさんは30代の6年間、新宿区のとある地域のマンションに住んでいた。
確か13階建てのコの字型をしていて、オジおばさんが住んでいたのは大通りに面したコンパクトなワンルームの角部屋だった。
徒歩圏内で使える駅は6路線4駅もあり、マンションの目の前は都バスのバス停だった。
ものすごく立地がいいのに家賃は10万円以下。今はもうちょっと上がってるかもしれないが、今考えても安い。
何か曰くでも?とも思ったがそんなに気にせずに住むことを決めた。
大通りに面してるので防音対策もそれなりに施されていて、ほとんど隣の部屋、上下の部屋の生活音は聞こえなかったが…
ある日寝ていると、上の階がドタドタと騒がしい。時間を確認すると深夜3時前である。
「こういう立地だから、新宿の夜のお仕事の方もたくさん住んでいるんだろう。だから安いのかも」
こんな風に合理的に考えていた。
でも毎晩毎晩その音が聞こえ、どんどんデカくなってきた。
こりゃ堪らんわいということで管理会社に連絡しようとした。その前になんとなくなんだが、1階の郵便受けを見てみたら、上の階の部屋の部分は養生テープで塞がれていた。要するに誰も住んでいなかったということだ。
じゃあ、あの音は??
もしかしたら管理会社の簡易宿泊先になっているのかもなぁ、とか気楽に考えていたある日の夜。
また3時過ぎに音が聞こえて目が覚めた。が、いつもと様子が違う。
オジおばさんの身体が動かない、要するに金縛りにあっていた。
うわぁ…誰も住んでいないのに気がついたから、もしかしたら来るかも…と思っていると、天井から黒いモヤがスーッとオジおばさんに向かってる降りてくる。
カタチははっきりしないが、なんだが良くない気がしたので、心の中で、
「毎晩うるさいんだよ。ここはオレの部屋なの。家賃払って住んでんの。だからオレの部屋には来るんじゃない。」
結構強い言葉で撥ねつけた。するとスッとモヤが消え身体も動くようになった。
それからは金縛りに遭うこともなくなり、上の騒音も無くなった。
このマンション、他にもいろいろなことがあったので、機会があればまた語ります。