【800字エッセイ】マッサージ「極」
あたくし、オジおばさんは旅好きである。
先日、温泉旅館に行った。
久しぶりの温泉、宿も素敵であった。
泉質も自分に合い、夢心地で浴場を出ると、目に飛び込んできたのはマッサージチェアである。
しかも無料。
ふむふむ、最近のマッサージチェアはどの程度進化したのか試させていただこうと腰を掛けた。
リモコンを手に何やらごちゃごちゃ書いてあるのが面倒臭く、取り敢えず「全身」を選択。下に目をやると「極」と言う文字が。
「極」とは?マッサージチェアの「極」とは??
当然「極」を選択してやろうではないか。
初めのうちは、おぉ、やはり進化しておったかと感心していたが、様子が変わってくる。
明らかに強い。
背中、腰を押す力も揉む力も、叩く力も。
い、痛いではないか…
まるで30代後半の子育てに疲れた女性が夫とケンカして、その怒りをこれでもかとぶつけているかの如く。
な、なるほど…これが「極」なのだな。「極楽」ではなく「極痛」であったのか…
負けてたまるかと、オジおばさんの変な根性をみせ、15分間の闘いは終わった。
ヘロヘロになって部屋に戻り、子育て世代に思いを馳せたのだった。