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小説で学ぶ: 社長、法人化しますか?【フリーランス・個人事業主必見】

個人事業主の新井さんは、念願のラーメン屋が繁盛し始めたことで心を弾ませていた。行列ができるようになり、「毎日ラーメンを茹でるだけでお金が入ってくるなんて、俺も成功者だな!」と喜んでいたが、ふと確定申告の書類を見て青ざめた。

「ん?…俺、こんなに税金払わなきゃいけないのか?」

大きなため息をつきながら、新井さんは信頼する税理士、田中税理士に相談することに決めた。

田中税理士のオフィスでの話

「田中さん、助けてください!税金が高すぎて、僕の手元にほとんど残らないんです!」

真剣な顔で訴える新井さんに、田中税理士は微笑みながら、パソコンを閉じて新井さんに向き直った。「新井さん、法人化という言葉を聞いたことはありますか?」

「法人化…?えっと、それって株主総会とかでスーツ着て挨拶するやつですか?」

田中税理士は軽く笑い、「そんなに大げさなものじゃありませんよ。法人化とは、今のラーメン屋を”会社”として登記することです。」と説明した。

新井さんはうなずきながらも、まだ半信半疑の様子で聞いている。

学びポイント
法人化とは、個人事業を「会社」として法人にすることで、税制や経費計上のメリットを得られる手段です。

法人税率と所得税率の違いを理解する新井さん

「まず新井さん、税金が高く感じる理由は、所得税が累進課税だからなんです」と田中税理士は説明を始めた。「個人事業主の所得税は、所得が増えると税率もどんどん上がる仕組みになっています。所得600万円を超えたあたりから、所得税が法人税率よりも高くなることが多いんです。」

「法人化するとどうなるんですか?」と新井さんは興味津々で尋ねる。

「法人の場合、税率はほぼ一定です。法人税率は25~33%の範囲で安定しているので、収入が増えても税負担が急激に増えることはありません。個人事業主と違って、600万円を超えたあたりから法人化の節税メリットが大きくなります。」

新井さんは頭の中で、今後の利益をイメージしながら、「じゃあ、俺のラーメンの儲けも、もう少し残りそうですね!」と納得した。

学びポイント
法人化すると税率が安定するため、個人事業主よりも節税できる可能性が高まります。特に所得600万円以上のケースで法人化のメリットが大きくなります。

法人ならではの経費を活用できる理由

続いて、田中税理士は法人化のもう一つの利点について説明を始めた。

「法人にすると、個人事業主では認められなかったものも経費として計上できるようになるんですよ。たとえば、家族に役員報酬を支払うことが可能です。」

「えっ、それってどういうことですか?」と、新井さんは驚いた顔で田中さんを見つめる。

「個人事業主でも親族に専従者給与として支払えますが、専従者にはその事業に専念してもらうことが条件です。でも法人の場合は、非常勤役員として妻や親族に役員報酬を支払って、それを経費に計上できます。」

新井さんは目を輝かせて、「じゃあ、うちの妻にも報酬を払って、それを経費にできるんですか?家族にお金が渡って、それが節税につながるなんて最高ですね!」

田中税理士はさらに続けて説明した。「それだけではありません。法人だと生命保険料も上限なく経費にできます。個人事業主の場合は控除の上限がありますが、法人では高額な保険料も経費にできますよ。」

新井さんの頭の中には、「法人は家族にも優しく、保険もたっぷり使える」というイメージが浮かんできた。

学びポイント
法人になると、親族に役員報酬を支払って経費に計上したり、生命保険料を上限なく経費に計上できたりと、個人事業主では難しい経費計上が可能になります。

法人設立後2年間の消費税免除というボーナス

「それだけじゃありませんよ、新井さん。」田中税理士はさらに続ける。「法人設立後の最初の2年間は消費税が免除されるんです。」

「えっ!2年間も消費税が免除されるんですか?それはすごい…!」

「そうです。個人事業主時代に消費税の課税事業者であれば、法人化後2年間の免税期間は大きなメリットになります。ただ、2023年からインボイス制度が始まっていて、取引先によっては課税事業者を求められる場合もあります。その際は『2割特例』を使って、売上高の2%で簡易的に消費税を納税できます。」

新井さんは「じゃあ、法人化すると2年間は消費税も大きく節税できるんですね!」と笑顔でうなずいた。

学びポイント
法人化すると設立後2年間の消費税が免除されるため、課税事業者である個人事業主にとって大きな節税効果が期待できます。ただし、取引先のニーズに応じて課税事業者の選択も検討が必要です。

法人化のリスクも忘れずに

ここまで聞いてすっかり法人化に心が傾いた新井さんだったが、田中税理士は冷静に注意点も伝えた。

「ただ、新井さん、法人化にはデメリットもあります。法人を維持するための税理士報酬や、決算書類の作成費用など、個人事業主よりも運営コストがかかる場合が多いんです。」

「そうですか…法人化にはデメリットもあるんですね。」

「はい。また、法人化すると経理や税務が複雑になります。法人税申告が必要になるなど、個人事業主時代のように年に一度の確定申告だけでは済みません。運営コストも増えるため、法人化を決める際は慎重に判断することが大事です。」

学びポイント
法人化には運営コストや手続きが増えるため、慎重に判断することが必要です。法人化の際には、税理士に相談しながらデメリットも踏まえた計画が求められます。

法人化の決断とその後の展開

「田中さん、説明を聞いて納得しました。僕のラーメン屋は600万円以上の利益が出ることもあるので、思い切って法人化してみたいです!」

田中税理士は頷いて、「わかりました、新井さん。しっかりとサポートして、法人化の節税効果を最大限に活かしていきましょう。」と約束した。

こうして新井さんは法人化を決断し、「株式会社新井屋」という名前でラーメン屋を新たな形でスタートさせた。法人化に向けた手続きや運営に苦労もあったが、田中税理士のサポートを受けながら、法人化のメリットを着実に享受していった。そしてラーメン屋にはさらに多くの客が訪れるようになった。

「法人化して良かったなぁ」とスープをかき回しながら、新井さんはしみじみと実感するのだった。

最終学びポイント
法人化は税負担の軽減や経費の拡充などのメリットがある一方で、運営コストや手続きの煩雑さも伴います。法人化を検討する際は、税理士と相談し、メリット・デメリットを総合的に判断することが重要です。

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