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フリーランス・個人事業主が12月までにすべき最強の節税対策:小規模企業共済【公認会計士・税理士が徹底解説】

小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者が将来の退職金を準備しながら節税できる制度として広く知られています。しかし、「誰でも必ず得する節税対策」というわけではありません。この記事では、小規模企業共済の仕組みとそのリスク、そして効果的な利用方法について詳しく解説します。

1. 小規模企業共済とは?

小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主が、将来の退職金のために積み立てを行い、その積立額が税務上の所得控除となる制度です。具体的には、年額最大84万円を積み立てることができ、その掛金は全額が所得控除の対象となります。

この制度を利用することで、掛金を支払った年に所得税が減少するため、節税効果があります。掛金を支払った年の税率に応じて、所得税の負担が軽減されるため、現役の間に収入が多い場合は非常に有効な節税手段となります。

例:所得税率10%の場合

例えば、年額84万円を積み立てたとすると、その年の節税効果は84万円×10%=8.4万円となります。これにより、84万円を将来の退職金として積み立てながら、同時に所得税が減少するというメリットがあります。

2. 小規模企業共済を始める前に知っておきたいリスク

一見すると非常に有利に見える小規模企業共済ですが、実はすべての人にとって最良の選択とは限りません。積み立てた年に節税効果があったとしても、将来取り崩す際には課税対象となるため、トータルでの税負担が増える可能性もあります。

リスク1:退職金として取り崩すときの課税

小規模企業共済は、積み立てた年には所得控除となりますが、将来取り崩す際には、その額が退職所得として課税されます。つまり、取り崩すタイミングの税率が積み立てたときよりも高い場合、節税どころか逆に税負担が増加することがあります。

例:積み立て時と取り崩し時の税率差

例えば、積み立て時の税率が10%だった場合に8.4万円の節税効果があったとします。しかし、取り崩す際に税率が20%に上がっていると、取り崩し時に課される税金は84万円×20%=16.8万円となり、結果的にトータルでの税負担が増加する可能性があります。

リスク2:収入が低い場合の節税効果

所得税率が低い、あるいは所得が非常に少ない場合、小規模企業共済による節税効果はほとんどありません。例えば、年収が103万円未満の個人は所得税が免除されるため、この場合に小規模企業共済に積み立てても、節税効果は一切得られません。

3. 小規模企業共済を活用するための条件

小規模企業共済が効果的な節税手段となるかどうかは、以下のポイントに左右されます。

条件1:現役時代の所得水準

小規模企業共済の節税効果は、掛金を支払った年の所得税率に依存します。したがって、年収が高く、所得税率が高い人ほど大きな節税効果を得ることができます。所得税率が低い場合は、控除による節税効果が小さいため、積立のメリットが薄くなります。

条件2:退職後の所得見込み

退職後に収入が減少し、所得税率が低くなる見込みがある場合、小規模企業共済は効果的です。退職所得は、通常の所得よりも優遇されるため、退職時に取り崩すことで税負担を最小限に抑えることができます。

条件3:将来的な税制変更リスク

税制が将来変更される可能性も考慮に入れる必要があります。現在は退職所得に対して優遇措置がありますが、今後の税制変更によって、その優遇措置が縮小されるリスクも考慮する必要があります。

4. 小規模企業共済の節税効果を最大化するための戦略

小規模企業共済を効果的に利用するためには、以下の戦略を取ることが重要です。

戦略1:掛金の設定

積立額を無理なく設定し、長期間にわたって積み立てることが重要です。無理に最大額の84万円を積み立てる必要はなく、収入に応じた適切な額を設定しましょう。特に、収入が少ない時期は無理に積み立てを増やすよりも、他の投資手段を検討することが賢明です。

戦略2:退職のタイミングでの取り崩し

小規模企業共済の掛金を取り崩す際には、退職のタイミングで一括して受け取るのが最も有利です。退職所得として受け取ることで、退職所得控除が適用され、税負担を大幅に軽減できます。

戦略3:他の節税手段との併用

小規模企業共済だけに頼るのではなく、NISAやiDeCoなど他の節税手段との併用を検討しましょう。特にNISAは、非課税で運用できるため、収入が少ない年にはこちらに投資する方が効率的です。

5. 小規模企業共済を利用すべきかどうかの判断基準

では、具体的にどのような人が小規模企業共済を利用すべきなのでしょうか?以下のチェックリストで判断してみてください。

  • 現役時代の収入が高く、所得税率が20%以上である

  • 退職後の収入が減少し、所得税率が低くなる見込みがある

  • 他に適切な退職金制度がない

  • 20年以上の長期的な積立が可能である

これらの条件に該当する場合、小規模企業共済は有効な節税手段となります。一方、所得税率が低い場合や、退職後も高い収入を見込んでいる場合は、他の選択肢を検討する方が良いかもしれません。

6. まとめ

小規模企業共済は、長期的な積立と将来の退職金準備をサポートする制度ですが、誰にでも適しているわけではありません。特に、現役時代の所得税率と退職後の税率のバランスを慎重に考慮する必要があります。

もし、現在の収入が低い、あるいは将来の収入が高くなる見込みがある場合は、他の節税手段を活用することも検討してみてください。小規模企業共済を最大限に活用するためには、しっかりとした計画と見通しが重要です。

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