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会社の美意識、社員の美意識

会社組織で働いていると、「理由はわからないけど、優秀なやつがいきなり辞める」事態に、たまに遭遇します。

問題は、待遇なのか、役職なのか、人間関係なのか……。
本人は「スキルアップのため」とか「あらたな挑戦がしたい」と説明しますが、「ほんとうにそうなのか?」と、疑問に思うケースも少なくありません。

このような場合、私は
会社の美意識と個人の美意識にズレが生じたのではないかと、推測しています。

会社の美意識は、言ってしまえば、
経営の核となるようなボンヤリした「価値観・感覚」。
この価値観・感覚は経営方針、事業方針、社員の行動指針、場合によってはオフィスの内装やコーポレートサイト、日々作られる営業資料にまで影響を及ぼします。
この美意識が、事業の特徴を形作っていると言っても、言いすぎではありません。

会社の判断がどんなに正しくても、
会社と社員の美意識に乖離があれば、
社員は「話はわかるけど、自分の考えとちがう」「この会社は肌に合わない」となってしまい、大きな溝が生まれてしまう。

これはもっと身近な話に置き換えるとわかりやすいと思います。
流行りの音楽だったり、小説だったり、お店だったり。
世の中に評価されていたり、友達が良いと言っていたりしても、「自分はなんだか好きになれない」と感じた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

好みのちがい、すなわち、なんとも言えない違和感のようなものは、突き詰めるときっと、美意識のちがいだと思います。

この美意識のちがいが、
会社と個人の間にも存在しているのだと思います。

前述の「働きはいいけど、辞めてしまう社員」は、
この言葉にし難い「美意識のちがい」を敏感に感じ取っているケースも、多いのではないか。


本人自身も、「わるい会社じゃないんだけど……」と思いながらも、「なんかちがうな」という居心地のわるさが、言葉にならず積り積もって、退職につながっているようなイメージです。


私自身、勤めていた頃、役員の言うことはわかるけれど、その判断には納得できない、という事態を数多く経験してきました。
その葛藤はきっと、「何が一番素晴らしく、美しいと思うか」という感覚にズレがあったことが表出していたのだと思います。

この会社と個人の美意識を統一するのは難しいですが、
社員に対して、会社の美意識にも良さがある、価値があることを、きちんと伝えることはできます。
こういったコミュニケーションがきちんと取れれば、採用におけるミスマッチもなくせると思います。(フィーリングではなく深いところで「自社に合う・合わない」が判断できるようになる)

「組織と個人のズレ」を美意識という言葉で表した人を他に知りませんが、こういった思いがけない側面に、退職の本当の理由が潜んでいるような気がするのです。

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