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【シビックテックレポート6日目】アメリカのシビックテックにおけるCode for Americaの役割についての考察

こんにちは!これまでのレポートでは各地の面白い取り組みについて紹介してきましたが、今日は少し視点を変えてアメリカ全体のシビックテックをサポートするCode for Americaがどのような役割を果たしているのかについて調べたこと、考えたことについて書いていこうと思っています。

また、このレポートは、Code for Americaのスタッフの方々にヒアリングした内容をもとに書いていますが、複数の方から聞いた話を組み合わせて解釈している、かつ僕の聞き取り力の低さからその解釈が間違っているかもしれませんので、あくまで報告書のようなものではなく僕が話を聞いて思ったことについて書いた感想文的なものであると思って読んでもらえると助かります。そうした内容であるため、個人名も写真も使わずに書いており、厳密性に欠ける部分はたくさんあるのですが、どうかご了承くださいm(_ _)m

1 各地の活動がうまくいくように盛り上げる仕組み

Code for Americaには各地のシビックテックのサポートを行うことをメインの役割とする「ネットワークチーム」という部署が存在し、その部署の人が日々コミュニティの改善に取り組んでいます。まずこのような仕組みがある時点で驚きなのですが、ネットワークチームの方々とお話をする中でアメリカのシビックテックコミュニティの活動も全てがうまくいっているわけではなく、解決しなければならない問題が多く存在しているというお話を聞くことができました。

そして、その中でも特に印象的だったのが、シビックテックコミュニティで活動している人は「テクノロジーの活用」と「行政の課題解決」という難解なことに取り組みながらイベントの開催やリクルーティングまでしなければならず、さらに本業は皆別の仕事をしているという過酷な環境で活動しており、かつては多くの人が活動するのをやめてしまったという話でした。
こうした状況を打破するため、Code for Americaは「トレーニング」「サミット」「コミュニティフェローシップ」という3つの取り組みを行っているのだそうです。

1.1 トレーニング

まず1つ目の「トレーニング」はCode for Americaが提供するリソースや便利なツールの使い方、良い事例などをコミュニティのリーダーに向けてシェアする取り組みであり、Code for Japanさんが今年から取り組んでいるシビックテックオンラインアカデミーと非常に似たコンセプトの活動です。実際に僕も一度参加させていただきましたが、説明も非常に丁寧で参加者からのフィードバックも熱く、大変盛り上がっていました。

1.2 サミット

2つ目の「サミット」は僕が1日目の記事でも書いたBrigade congressや毎年一回行われているCode for America summitなどが該当します。こうした場では別のコミュニティメンバーとの関係作りや事例のシェア、そして全体のルール作りなどの共通認識が必要なことが行われるのだそうです。ちなみに、こうした場への参加者は非常に多く、2018年のデータだとBrigade congressはアメリカ全体の60%、サミットは全体の70%以上のシビックテックコミュニティから最低1人以上参加しているのだそうです。

1.3 コミュニティフェローシップ

3つ目の「コミュニティフェローシップ」に関しては、Code for Americaは行政に外部からフェローという形で人材を長期間送り、自治体の課題解決を行う「フェローシップ」という活動に取り組んでいるのですが、そのフェローシップを「該当地域で活動している人」の中から選出しているのだそうです。このようにすることで、フェロー期間で生まれた成果の持続性向上やフェローを通じた自治体と実践者の間の関係性強化、フェロー参加を通じた新たな仕事の場の創出などにつながっているのだそうです。

2 生まれた成果の持続と拡散のための仕組み

さらに、上記のような成果を生み出すまでのサポートだけではなく、生まれた各地の成果がその後持続・拡大していくために「Code for Americaによる引き継ぎ」や「ストーリーテリング」などが行われているということも聞くことができました。

2.1 Code for Americaによる引き継ぎ

まず、1つ目の「Code for Americaによる引き継ぎ」に関しては、Code for AmericaにDevelop チームという部署が存在し、フェローシップなどで生まれた成果のうち持続するためにサポートが必要なものや拡大を狙うものはCode for Americaが開発を引き継いでいるのだそうです。その結果、Criminal JusticeやFooo issueなど様々な課題に対する成果物が継続、発展しているということでした。僕も実際に各地のコミュニティを見ている中で、何度かCode for Americaの方が出張していてばったり会うということがあったのですが、行政や企業、市民コミュニティなど様々なセクターにプロダクトの価値をアピールしていて大忙しなんだよ笑顔で話す姿は本当にかっこよかったです。

2.2 ストーリーテリング

ストーリーテリングについては、先日記事にも書いたHack for LAやOpen Oaklandをはじめとする多くのシビックテックコミュニティの活動内容が近年「スピーカーを読んでオープンデータやシビックテックの良さを語ってもらう」というコンテンツから「実際に課題を解決するプロダクトを作る」というコンテンツに移行しており、それはCode for America全体のカルチャーチェンジが影響しているのだそうです。具体的に言うと、これまでは「オープンデータっていいよねというのを広めていこう」という段階だったものが、「実際にデータを使って何をするか考えよう」という段階に移ったのだそうです。そして、それを推進するためにCode for Americaも各地のサクセスストーリーやナレッジを広報チームなどが中心となってシェアしているのだそうです。また、こうした一連の動きについて今回ヒアリングさせていただいたネットワークチームの方は「From Open data to service delivery」と表現しておられました。アメリカのシビックテックは行政の改善やオープンデータの推進を中心にしているという印象を持っていたので、こうした動きが起きているというのは驚きでしたが、日本を見ても数年前と比較するとオープンデータの認識を広めるという部分はかなり進んでおり、アメリカと同じような動きの重要性がより高まってくかもしれないという新しい気づきを得ることができました。

3 ネットワークに入りたいと思えるような仕組み

また、上記1や12のような取り組みは各地のコミュニティがCode for Americaのネットーワークに入り、Code for Americaが発信する情報をキャッチしてくれること、そして円滑にコミュニケーションができるような関係性ができることが必要であり、そのためにCode for America側としては「みんながネットワークに入りたいと思うような取り組み」を行なっているのだそうです。具体的には、ネットワークに入ることでCode for America summitなどのイベントに無料で参加できる(普通に参加すると参加費だけで5万円以上かかります)、HerokuやDrop boxの有償版が無料で使える(Code for Americaがスポンサー契約をしているから実現できるそうです)、前述したオンラインでのセミナーなどに参加できるのだそうです。また、ネットワークチームの方は言っておられませんでしたが、僕自身がCode for Americaのスタッフの方や各地のブリゲイドの方と話していて思ったことは多くの方が「ソーシャルインパクトを起こしたい」「社会に貢献したい」という思いを持っており、そうした思いを実現できる場所としてCode for Americaが存在していることが重要なのではないかと感じました。金銭的なメリットはもちろん、そうした心理的に惹きつけられる魅力があるからこそコミュニティリーダー同士も戦友のような関係性になっているし、Brigade congressの盛り上がりなどが実現しているのかなと感じました。

4 できない部分は任せる姿勢

また、話を聞く中でNAC(National Advisory Council)という制度の存在を知ることができました。これはCode for Americaの手が届かない各地のコミュニティとのやり取りや組織づくりなどをシビックテックコミュニティのリーダーの中から任命された9人(4人がエリアリーダー、5人がイベントなどを担当)が担うという仕組みです。NACはシビックテックコミュニティの規模が拡大(現在アメリカ国内だけで約80地域にシビックテックコミュニティが存在)する中でCode for Americaのネットワークチームだけではサポートがうまくできない部分が出てきたことから、こうした仕組みを立ち上げようという声が上がったことで生まれた仕組みであり、なんとNACメンバーはミーティングにかかる旅費等の費用以外特別な給料などを受け取らず、皆自分の本業やコミュニティ運営がある中で自分から手を挙げて役割を担い率先して取り組んでいるのだそうです。ネットワークはCode for Americaにとっても重要な部分である中で、NACという草の根的な組織にその大部分を任せるという運営スタイルは各リーダーの強い思いやCode for Americaとリーダーの間に強い信頼関係があるからこそ成り立つ仕組みだと感じました。

最後に

今回は前回までの各地の取り組みとCode for America側の方々に聞いた話を組み合わせて、Code for Americaとシビックテックコミュニティの間の関係性について考察してみました。アメリカはシビックテックが発展しててすごいなとは思っていたのですが、Why(なぜ発展しているのか)やHow(具体的にどのような取り組みが存在しているのか)があまり見えていなかったので、今回話を聞く中でイメージが湧いたことは大きな一歩だったなと思っています。特に、「From Open data to service delivery」という言葉はとても刺激的で、今後の僕自身の活動にも大きなヒントをいただいたような気がしました。

Code for Americaは本当に徹底して透明な組織なので取り組みを頻繁にブログで発信していたり、イベントや会議などの内容をYoutubeにアップしていたり、スタッフの方々の連絡先が公開されていたりと文献が本当にたくさんあるので、今後日本の方々にもシェアしながら僕も情報をどんどんキャッチしていこうと思います。

ここまでは「アメリカすごかったよ!」的な内容を中心にレポートを書いてきましたが、いよいよ明日はレポートのまとめとして、僕自身の研究も踏まえて「アメリカでもできていないこと」「日本から世界に」という視点で記事を書ければと思っていますので、乞うご期待!🙃

また、はじめにも書きましたが今回のnoteはあくまで感想文的なものなのですが、ヒアリングした内容の中にはこれまでどんな文献に載っていないようなこともたくさんあったので、今後しっかりとしたレポートも書いていきたいと思っています。レポート用にヒアリングさせていただいた方に許可を得た上で録音した音源もあるのですが、ヒアリング内容を元にレポートを書くためには色々と準備や承認が必要になるため、また落ち着いてからじっくり取り組もうと思っています。

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