事務所所属弁護士数の推移メモと雑感

(2020.4.21 2018年データを追記)
(2020.3.9 雑感を追記)

※ジュリナビの2019年法律事務所ランキングTOP200の事務所名を日弁連の弁護士検索にかけて2020年の所属弁護士数を算出
※日弁連登録の弁護士数と外国法弁護士数の合算をカウント
※同名事務所等が原因で所属数に誤差の可能性あり
※昨年200位以下から急増した事務所は漏れている可能性あり
※2018年1月末時点及び2019年1月末時点(両ジュリナビ)と2020年2月27日時点(日弁連登録情報検索結果)の人数を比較
※提携先事務所の弁護士数は除外

【TOP1~100】

【TOP 101~200】

※グラフ内凡例の事務所名をクリックすると、表示/非表示が可能なので、特定の事務所に絞った比較もできます。

・MHM、ベリーベスト、三浦、ZeLo、T&K躍進
・181~200位事務所の総数が昨対比で減少しており、大規模化と小規模化の二極化がさらに進んでいる模様
・(特に地方で)中小規模事務所が複数地域に事務所を展開して規模を拡大している

精緻なランキング結果の発表はジュリナビに任せるとして、個人的に気になった点は上記のあたり。特に、弁護士数が大きく伸びた事務所について、弁護士一人一人の動向を追ってみないと詳細は分からないけれど、以下雑感。

1.ベリーベスト法律事務所

直観的に思うところは、アディーレが景表法違反及び業務停止の影響でレピュテーションが下がり、相対的に選択者が増えたのではないか、という点。ただ、ベリーベストも昨年暮れに非弁行為に関する報道があったので、懲戒請求に対する判断及び、マーケットからどのような反応が現れるかは今後、注視したい。

2.三浦法律事務所

昨年データが18になっているが、「2019年1月に30名超で開業」と発信しているので、移籍した弁護士の日弁連登録情報の変更が同年2月以降に反映されたものと思われる。

ほとんどの弁護士がパートナーして所属するという特異な組織設計で、5大のアソシエイト/パートナー比率が平均2.2であるのに対して、同所は0.2強(世のほとんどの事務所は1人事務所でなければアソ数≧パートナー数なので1を切ることは珍しい)となっている。

大手事務所の場合、一般的にピラミッド型の組織で、パートナーが専門分野の案件を持ってきて自チームのアソと対応するのに対し、同所は(メディア記事を見る限り)案件ベースで適したメンバーで都度、チームが組成され対応するフレキシブルな設計になっている。

三浦先生がトップにはいるものの、ホラクラシー型のイメージに近いかもしれない。結果、新たな働き方や仕事の自由度・自律性を求める企業法務系事務所の若手弁護士の受け皿になっている印象。

3.法律事務所ZeLo

ZeLoは、リーガルテックの先駆けであるLegalForceの知名度も手伝って、テックに関心の高い若手弁護士が集まっている。報酬も高水準だが、その分採用選考はかなり厳選しているとのこと。その中で、TOP200事務所中、昨対比の弁護士数増減率では(多分)No.1だったから驚異的。

60期代中心且つこの規模で大手企業法務系出身、大手外資系出身、メガベンチャー経験者、中央官庁経験者、スタートアップ在籍中など、多種多様なメンバーが揃っているのはあまり例を見ない。また、規制関連に経験のある人材が多いのも特徴。

さらにもうひとつ付け加えると、LegalForceに大手外資系コンサル出身のCOOがいるのだが、ビジネスのフレームワークが叩き込まれた人がグループの中にいることは、業務効率化や生産性向上において相当に寄与しているのではないかと邪推している。

米国では、売上や規模100位程度の事務所でも、CEO、CFO、COO等を設置し、リーガルサービスを事業とする企業のような組織構築がなされており(分業化することで、弁護士は経営や総務等のオペレーションから手離れして法律業務に専念できる)、今後、日本の事務所もそのような形態の構築を進める事務所が増えてくるのではないか——むしろそうなっていくべきだと思う。

昨年、AMTがヤフー出身の人事担当者を事務局長/CHROに迎え入れたので、5大にも今後何らかの採用・組織設計の転換があるかもしれない。

4.T&K法律事務所

NOT出身の先生方によって創設。事務所名の創業メンバーのイニシャルがTまたはKであることに由来(最近、イニシャルがTでもKでもない先生がパートナーになった)。

73期の採用予定人数が10名程度との求人が出ていたので、今後急拡大しそうな気配。

5.森・濱田松本法律事務所

毎年、5大は昨対比で大きく伸びる事務所とそうでもない事務所(採用数に対して、転職・出向等で日弁連の登録数が伸びない)があるが、今年は昨対比でMHMが大きく伸びた。

他の4大が、何かしらの事由でカウント漏れになっている可能性もあるが、増減数だけでは傾向が見えないので、詳細な調査は追々進める。

さておき5大はもっとHRに注力しないと、不景気になったときにピラミッド構造を支えきれなくなる懸念がある——その時はその時で、むしろ出たい人には出て行ってもらう、という考え方もあるかもしれないが。ちなみに、5大の72期総計は214名。NAとMHMは50名越えだった。

以上、あくまで参考情報と推測ということで。

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