人をどれだけ笑わすことができるかというイグノーベル賞
イグノーベル賞とは、一言でいうと「人々を笑わせ、そして考えさせる業績」に対して贈られる賞だ。
「イグノーベル(Ig Nobel)」という名前は、ノーベル賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルの姓に否定的な接頭辞「Ig」をつけた造語で、「下等な、下品な、見下げた」という意味の「ignoble」を掛けたジョークになっている。
もっとも、最高権威と言っても過言ではないノーベル賞と比較しての自虐的な表現であって、優劣を示しているものではない。これまでに受賞しているのは興味深く考えさせられる研究ばかりだ。
イグノーベル賞は、1991年にイスラエルの科学関係雑誌『The Journal of Irreproducible Results(再現不能な結果ジャーナル)』の編集者 マーク・エイブラハムズ 氏によって創設された。彼のエッセイ記事において「イグ」の意味するところについても論じられている。
イグノーベル賞はノーベル賞と同じ化学、平和、物理学、医学生理学、文学、経済学といった部門のほかに、公衆衛生学、昆虫学、心理学などノーベル賞にはない部門も随時追加されている。非常にユーモアあふれる研究が多い一方で、水爆の発明者であるエドワード・テラーが「一般とはまったく違った意味を『平和』に与えた業績を称えて」91年度のイグノーベル平和賞を授与された、といった強烈な皮肉が受賞理由に含まれている場合もある。
イグノーベル賞の選考委員会は一般からの推薦を受け付けており、毎年9000人に対する推薦が届く。推薦された候補者たちは前年までの候補者リストに追加され、その中から何段階かの選考委員会を経て受賞者が選定される。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に合致する内容から毎年9月または10月に10名の個人または団体に授与される。
新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は米国のハーバード大学にて授賞式が行われ、ノーベル賞受賞者も「プレゼンター」として登壇していた。また、受賞者の旅費や滞在費は自己負担で、受賞講演では聴衆から笑いをとることが求められる。受賞者たちは1本の長いロープ紐を握って一列になって壇上に上がる。これは幼稚園のお散歩のパロディになっているようだ。
研究を発表する場面では制限時間が60秒と定められている。制限時間が過ぎると、Miss Sweetie Pooと呼ばれる進行役の8歳の少女が登場し、「もうやめて、私は退屈なの(Please stop. I’m bored.)」と連呼し、発表が強制的に終了となる。聴衆は授賞式の初めに全員が紙飛行機を作り、投げ続けるのが慣例となっている。そして、その掃除のためのモップ係は、ハーバード大学教授のロイ・グラウバーが例年務めている。
賞金は基本的にはないが、2015年から2017年は受賞者に10兆ジンバブエドルが授与された。なお、この時点でジンバブエドルに貨幣としての価値はなかった。また、それぞれの業績に関係した副賞が授与されるようだが、その内容についてはわからない。
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