新渡戸稲造のおじいさんが素晴らしい!
日本全国どこでも大地の履歴を紐解くと、大なり小なり土木事業の痕跡と恩恵が見えてくるだろう。なぜなら、古来より日本人が米を作ってきた歴史の中で、ため池や水路をつくり、田に水を引き、川を治めて洪水から田を守るといった土木事業は不可避だったからである。農業のための土木を解明するキーワードは「水」だ。
青森県十和田市の場合、大地の履歴を読み解く手がかりは、十和田市をはじめ周辺の田園を潤す稲生川にある。この川の存在を知っている日本人は十和田市民以外はほとんど知らないだろう。稲生川は幾多の人知と困難を重ねてきた人工河川である。この農業水路は、琉水百選にも選ばれ、地域に親しまれているシンボル的存在だ。そしてもう一つの手がかりは、毎年5月4日頃にある太素祭。祭りの開催中、稲生川がつくられた歴史を学びながら楽しむウォーキングイベントも行われており、そのゴール地点である太素塚をめざす。現在、およそ6万8千人が暮らす田園都市・十和田市だが、かつては人家も樹木もない荒漠たる原野だった。その三本木原台地に「神の水」を引き、不毛の地を蘇らせた男がいた。
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