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多様性をおもちゃや絵本で楽しむ

 明けましておめでとうございます。
 今年もnoteの一日一記事アップに邁進しますので、どうぞよろしくお願いします。2024年最初の記事は、おもちゃと絵本で楽しむダイバーシティです。

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 愛知県にある中部大学幼児教育学科の千田隆弘先生による「おもちゃと絵本でダイバーシティを考えよう」という講座を受講する機会に恵まれた。

 多様性には、人間の多様性と生物多様性の2つがある。講義は「人間になぜ多様性が必要か」という命題から始まった。

 人間は、問題を解決するに際し、自らの経験で判断しがちである。多様性のない画一的集団は、個々の経験も重複しているため「死角」が生まれる。集団構成員に多様性があれば、その「死角」は狭まり、集合知の力が大きくなる。異種との接触で多角的に物事を見ることで経験が繋がり、アイディアがアイディアを生むようになる。だから、人間には「多様性」が必要だとわかりやすく説明していただいた。

  多様性を妨げるものとして、①仲間意識、②ヒエラルキー、③フィルターバブル現象、④エコチェンバー現象の4つがあると、マシュー・サイド氏の著書『多様性の科学』から引用して説明いただいた。
① 仲間意識:人間は同類を好む。集団を作る際、多様性を意識しないと偏りができる。
② ヒエラルキー:人間は序列が定められた集団の中で生きるよう設計されている。自然とヒエラルキーができあがり、抑圧し、反論が出なくなり、チーム全体が支配的なリーダーに意見を合わせる。考え方の多様性が失われる。
③ フィルターバブル現象:社会的に孤立したり、自分の好みのYouTubeしか見ないなど、自身の価値観のバブル(泡)の中で異なる意見に触れる機会が無い状況にあり、情報にフィルターがかかってしまう。
④ エコーチェンバー現象:同じ意見の者同士でコミュニケーションを繰り返し、自分自身の意見や信念が正当化、強化されてしまう。インターネット、特にSNSでのコミュニティや情報接触がエコーチェンバー現象の代表例として挙げられることが多い。例えばTwitterでは自分の趣味嗜好に合うアカウントをフォローし、自分にとって聞きたくない声をミュートやブロックできる。こうなると、自分の意見を肯定してくれる気持ちがいい空間になっていき、精神的には快適だろうが、自分たちの考え方だけが共有され、強度を上げてしまう。

 生物多様性の説明の中で、やなせたかし氏が作詞した『手のひらを太陽に』と、金子みすゞが書いた『わたしと小鳥とすずと』が取り上げられ、目から鱗の学びとなった。
 『手のひらを太陽に』 の、歌詞を読むと、1番から3番の歌詞までに9種類の生き物がいる。「ぼくら」という人間を入れたら10種類か。1番には「ミミズ」「オケラ」「アメンボ」、2番には「トンボ」「カエル」「ミツバチ」、3番には「スズメ」「イナゴ」「カゲロウ」。雌雄同体の環形動物であるミミズに始まり、昆虫、両生類、鳥類まで登場し、まさに生物多様性の歌である。
 『わたしと小鳥とすずと』には、「鈴」という「物」、「小鳥」という「鳥類」、「わたし」という「人間」が登場する。「鈴」という生物ではない物体まで入れて、有名なフレーズ「みんなちがって、みんないい」で終わる素敵な詩は、生物多様性を超越している。

 千田先生は「絵本の主人公の性別比較」を通して、絵本におけるジェンダーについても説明された。絵本の主人公の50%が男性、13%が女性、4%が両性、33%が不特定となっており、私たちは知らず知らずのうちに、男性が主役の絵本を選択する環境を作ってしまっている可能性を言及した。ダイバーシティに関連した絵本だけでなく、多様性玩具や共有玩具もたくさん講義の場に持ち込まれ、私たち受講者は絵本を読んだり、おもちゃに触れたりする機会にも恵まれた。

 「多様性玩具(ダイバーシティトイズ)」とは、人種、職業、体型、障がいなども含む「多種多様な人が暮らす世界(多様性)」を感じられるおもちゃのことだ。日本では馴染みが薄い言葉だが、これからのおもちゃを考えるうえでは、この「多様性=ダイバーシティ」が重要なキーワードになるだろう。バービー人形は、すでにダイバーシティを取り入れ、車椅子のバービーや義足のバービーがすでに商品化されている。付属のスロープをドールハウスなどと組み合わせることで、バリアフリーのごっこ遊びも楽しむことができ、バービーとともに遊ぶことで、世界や社会の多様性に気づき、それを自然と受け入れるようにという願いが込められている。

 「共遊玩具」とは、目や耳の不自由な子もそうでない子も大人も、障害の有無にかかわらず、楽しく遊べるよう「配慮」が施されたおもちゃのことで、そのパッケージには「盲導犬マーク」や「うさぎマーク」がついている。「盲導犬マーク」は、目の不自由な子どもも楽しめるよう配慮が施された玩具に表示するマークで、「うさぎマーク」は、耳の不自由な子ども楽しめるように配慮が施された玩具に表示するマークだ。

 千田先生が持参されたいろいろな種類の絵本やおもちゃをじっくりと楽しませていただき、さらにおもちゃの語源まで教えて下さった。「おもちゃ」という言葉は、「持って運ぶもの」という意味の「もちあそび」が語源となっており、「もちあそび」➡「もちゃそび」➡「おもちゃ」と変化して定着したとのことだ。新たな学びと気づきだけでなく、とても幸福な時間を過ごすことができたステキな講座だった。

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合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己
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