ウルトラマンから考える その2
『ウルトラマン』の最大の功績は、世界に類をみない「巨大化する変身ヒーロー」というキャラクターを創出したことであろう。銀河系から300万光年離れたM78星雲からやってきたウルトラマンは、宇宙の平和を守る宇宙警備隊員である。彼は宇宙の凶悪犯ベムラーを追って地球に到着したが、誤って科特隊のハヤタ隊員を殺してしまう。そこで自分の命をハヤタに与え、2人は一体化する。宇宙からやって来た謎の人物=ウルトラマンは、いともあっさり生と死の境界を越えてしまうのだ。そして最終回の「さらばウルトラマン」では、宇宙警備隊員のゾフィーが、命を2つ持ってM78星雲から地球に飛来する。命は、第2話の「侵略者を撃て」でも重要なキーワードとなる。地球に飛来したバルタン星人は、生命という概念がなく、バクテリア大に身体を縮小し、宇宙船で旅をしている不思議な存在だ。バルタン星は発狂した科学者の核実験が原因で壊滅してしまったという設定で、行きすぎた科学主義への警鐘が込められている。“何か”という意味で、もっとも注目すべき作品群は、鬼才・実相寺昭雄が脚本家の佐々木守と組んだ「恐怖の宇宙線」「故郷は地球」「空の贈り物」「怪獣墓場」の4作であろう。実相寺の研ぎ澄まされた映像感覚と、佐々木の風刺性に満ちたドラマ展開で、大人の観賞にも充分耐えうる完成度の高い作品となっている。
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