「世界孤児の日」の制定に向けて
2012年10月31日、1億3千万人いると言われている世界中の孤児のために、国連「世界孤児の日」制定推進宣言が韓国の木浦(もっぽ)市で採択された。田内千鶴子氏の生誕100周年を記念してのことである。10月31日は千鶴子が誕生した日であり、亡くなった日でもある。
田内千鶴子氏は日本ではほとんどその名を知られていないが、坂本竜馬と並ぶ高知が生んだ偉人と評される。戦前より、韓国にある孤児養育施設:木浦共生園で孤児たちを育て、太平洋戦争や朝鮮動乱の続く中、はげしい反日感情による迫害や嫌がらせに屈することなく、どんどん送り込まれてくる孤児たちを3000人も育て、社会へと送り出した。千鶴子氏を自分たちの母として慕った孤児たちにより、彼女の無私の愛が韓国中に感動を呼び起こし、日本人として初めて「大韓民国文化勲章国民章」を授与された。千鶴子氏は56歳の若さで天に召されたが、千鶴子の葬儀は木浦市初めての市民葬となり、彼女の死を悼む3万人の市民が涙の参列をした。韓国孤児たちのために命を捧げた千鶴子氏は、今もなお「韓国孤児の母」として多くの韓国民に尊敬され慕われている。
竹島問題、従軍慰安婦問題等で険悪になっている日韓関係の荒波を乗り越えて、田内千鶴子の愛と犠牲に心を打たれた日韓の市民たちが、「世界の孤児たちを救おう!」と熱い思いで一致し和解することができた。坂本龍馬は命を懸け、その機知と行動によって徳川幕府を倒し、結果的に内戦を防いで明治維新をもたらす一粒の麦となった。田内千鶴子は命を懸け、その愛と実践によって多くの韓国孤児を救済し、結果的に戦争を防いで日韓和解と世界平和をもたらす一粒の麦となっている。採択された宣言文は以下の通り。
2023年11月1日、木浦共生園前の広場にて、田内千鶴子生誕111周年記念「ありがとう、木浦のみなさま」感謝碑除幕式が行われた。韓国孤児のオモニと称えられる田内千鶴子氏の偉業は木浦の人々の支えなくしてはあり得なかった。感謝碑はそんな思いが込められ、日韓交流のシンボルとして建立されたものだ。
<トップの写真:社会福祉法人こころの家族ホームページより引用>
https://www.kokorono.or.jp/111anniversary/
戦後、韓国木浦の「共生園」で孤児の養育にあたり「韓国孤児の母」と呼ばれた田内千鶴子氏の意思を受け継ぎ、国連「世界孤児の日」制定運動が進められてきた。この運動は、田内千鶴子の長男で社会福祉法人こころの家族理事長の田内基氏が2002年に提唱、「孤児を含む代替的な保護が必要な児童に対する問題意識を世界的に拡散させる」ことを目的としている。2018年には国連世界孤児の日制定請願のためのニューヨーク大会を開催、2020年からは、国連「世界孤児の日」制定推進委員会が活動を続けているが、現時点で国連世界孤児の日は制定されていない。