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オリンピックの歴史② 近代オリンピック

 1894(明治27)年6月23日、パリ国際アスレチック会議が開催され、クーベルタンの構想を協議し、オリンピックの復興が満場一致で可決された。その際、第1回大会をアテネで開催することが決定され、同時に次のことも決まった。
■ 1896(明治29)年を近代オリンピアード(大会と次の大会との間の4年間を一周期とする古代の暦にならった単位)の1年目とする。
■ 古代の伝統に従い、大会は4年ごとに開催する。また、その理念を広めて
 いくために、大会ごとに開催地を替える。
■ 競技種目は近代スポーツに限る。
■ オリンピック大会に関する最高の権威をもつ国際オリンピック委員会(IOC)を設立し、初代会長をビケラス(ギリシャ人)、事務局長をクーベルタンとする。

 1896年に開催された第1回アテネ大会は大成功を収めた。1900(明治33)年の第2回パリ大会、1904(明治37)年の第3回セントルイス大会と続き、1908(明治41)年の第4回ロンドン大会、1912(明治45)年の第5回ストックホルム大会から、競技の種目や規定の整理が進み、近代オリンピックの基礎が確立された。
 1914(大正3)年から1918(大正7)年にかけてヨーロッパでは第一次世界大戦が起こり、1916(大正5)年の第6回ベルリン大会は行われなかった。しかし、オリンピック自体は消滅せず、1920(大正9)年にはベルギーのアントワープで第7回大会が開催された。その理由は、戦争の影響により国土が荒れ果て、国民が疲れきっていたべルギーを勇気付けることにあったのだ。国際平和を掲げるオリンピックが、軍事力を背景とした帝国主義の時代に生き残ったことは、社会がオリンピックを必要としていたことを示している。

 オリンピックは、第二次世界大戦後、急速に世界へ拡大していった。ヨーロッパやアメリカ以外の地域でも開催されるようになり、1956(昭和31)年に第16回メルボルン大会、1964(昭和39)年に第18回東京大会、1968(昭和43)年に第19回メキシコシティ大会が行われた。
 オリンピックに参加する国(地域)や選手の数も増えていった。1896(明治29)年の第1回アテネ大会では14か国241人の選手の参加だったが、2012(平成24)年の第33回ロンドン大会では、207の国と地域から史上最多となる約10,500人の選手が参加した。第1回大会と比べて、今や参加国(地域)数は約15倍、選手数は約44倍になった。207か国(地域)という数は、国際連合の加盟国(193か国)よりも多く、このことからも、オリンピックは今や世界中の人々が参加する世界最大の「スポーツの祭典」であるといえる。

 オリンピックが様々な地域や都市で開催されるようになると、オリンピック・ムーブメントは世界中に広がっていった。しかし、全てが順調だったとはいえない。戦手のために中止となった大会もあれば、1972(昭和47)年のミュンヘン大会のように、選手団に11人の死者が出るテロ事件が発生し、競技が一時中断された大会もあったのだ。また、1980(昭和55)年モスクワ大会と 1984(昭和59)年ロサンゼルス大会は、東西冷戦の最中に行われ、大会をボイコットした国が相次いだ。これらの例からも分かるように、オリンピックは、政治など時代の影響を受けながら歩んできた。だからこそ、開催されること自体に「平和の祭典」としての意義があるといえる。一方、新たな問題も発生した。競技・種目数が増加し、観客数も大幅に増えたため、大規模な競技施設が求められるようになった。最近では、競技施設の建設費や、大会期間中の安全対策費など、オリンピックを開催するには多額の費用が必要で、経済的に豊かな国の大都市でなければ開催が難しいことが問題視されている。それとともに環境問題への関心も高まり、大会の開催が環境に及ぼす影響も心配されている。

 参考までに、2021年の東京オリンピックでは、会計検査院がはじいた大会経費の調査報告による、路整備など関連経費も加えた総額は3兆6845億円に上った。立候補時に見積もった7340億円に比べ、5倍の費用がかかった計算だ。そのうち、大会の運営に直接関わる経費は1兆6989億円と認定され、大会組織委員会が「最終報告」として2022年6月に公表した1兆4238億円より2割多かった。組織委の算定には甘さがあったと言わざるを得ない。無駄遣いも目に余る。選手村の料理が175トン、大会関係者用の弁当が30万食分も廃棄され、感染対策のマスクやガウンなど医療用品も大量に処分されていた。 大会関連事業も経費全体を膨張させた。検査院によると、14府省などの329事業で1兆3002億円の国費が投じられた。東京オリンピック2020の経費はアメリカドルだと約200億ドル…それに対して今回のパリオリンピックは約80億ドルだという。

 


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合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己
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