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「はっきよい のこった」の意味

 大相撲を見るのは小さいころから好きだった。ただ、相撲の取組の際に行司が発している言葉は「はっけよい のこった」だとずっと思っていた。日本相撲協会によると、「はっけよい」ではなく、「はっきよい」が正しいのだそうだ。

 相撲協会はこの言葉の語源として、「気を高めて全力で挑め」という意味の「発気揚々はっきようよう」だとの公式見解を示している。この「はっきよい」という言葉には諸説あり、勝負を促す意味の「ハヤキホヘ(早く競え)」という言葉が変化して「はっきよい」になったという説や、
易学の「八卦が良い」という験担ぎの意味があるという説がある。

 「はっきよい、のこった」の語源は、日本語ではなく、ヘブライ語だという驚きの説も存在する。ヘブライ語とは、古代イスラエルに住んでいたヘブライ人が母語として用いていた言語だ。ヘブライ語で「ハッケ」は「投げつけよ」、「ヨイ」が「やっつけよ」、「ノコッタノコッタ」は「投げたぞ!やったぞ」という意味があるそうだ。

 相撲の行司は他のスポーツでの審判のようなものだから、「はっきよい のこった」は試合開始の合図だと思うかもしれないが、実際には開始の合図ではない。大相撲では、力士同士が呼吸を合わせ、両手を土俵についてから立つことで立ち合いが成立するのがルールとなっており、開始の合図は存在しない。行司が「はっきよい」と言うのが、立ち合い成立の直後なのでそれが合図のように見えているのだ。

 「はっきよい」という言葉の意味や語源には、いくつかの説があると言われている。
 ■「発気揚揚」説:「発気揚揚はっきようよう」とは「気を盛んに出す」という意味の言葉で、「気分を高めて全力で勝負せよ」と力士を鼓舞しているという説だ。立合いが成立した直後や、力士が土俵上で組み合って動きが止まったときに、勝負を促す意味で使うのだ。

 ■「早く競え」説:上記と同じような意味で、力士に勝負を促すかけ声だという説がある。早く競いなさいという意味の「ハヤキホヘ(早く競え)」という言葉が変化して「はっきよい」になったというものだ。

 ■「八卦良い」説:「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の「八卦はっけ」からきているという説だ。この言葉の意味は、「占いは当たる場合もあれば、当たらない場合もある」というもの。「八卦」とは古代中国のえきにおける基本図像のことで、「八卦良い」は「良い八卦(占い結果)になった」ということだ。

 このように「はっきよい」の語源は諸説あるが、行司が発しているタイミングから、「力士に勝負を促している」という意味で捉えるのが自然かもしれませんね。

 次に、「のこった」の意味である。相撲は相手を土俵外へ押し出す、地面に手をつかせるなど自らが「土俵に残る」ことで勝ちとなる。そのことから、「のこった」は、力士が両者とも「土俵上に残っている」「まだ勝負が決っていない」ということを意味している。

 相撲では「はっきよい、のこった」以外にも、意味や語源があまり知られていない言葉がある。

1.どすこい
 「どすこい」とは西日本の方言で、「大きい」や「太い」を意味する言葉だ。土俵上で力士が輪になって歌う「相撲甚句すもうじんく」という民謡の中で使われている。体が大きく、たくましい力士を表す言葉としてぴったりだが、実際に力士が日常で「どすこい」と言うことはない。

2.「ガチンコ」
 今では一般的に使われるようになった「ガチンコ」という言葉だが、本来は相撲界の隠語だ。力士同士が激しくぶつかるときに「ガチン」と音がすることから、真剣勝負を表す言葉として使われていた。また、八百長とは縁のない力士のことを「ガチンコ力士」とも呼ぶ。

3.「ちゃんこ」
 力士が食べるイメージがある「ちゃんこ鍋」ですが、実際には鍋だけでなく力士が食べる料理を総称して「ちゃんこ」と呼ぶ。また、その語源は諸説あると言われている。
➀ちゃんこの「ちゃん」は「お父ちゃんで親方」、「こ」は弟子を表しているという説
➁昔、力士が巡業先で料理をするために中国人に借りた鍋が「チェーコウ」と呼ばれていて、その鍋の名前から由来しているという説
➂名門の相撲部屋で料理をつくっていた古株のお相撲さんが、「ちゃん公」と呼ばれていたという説
 どれが正しいのか定かではないが、いずれにしても「ちゃんこ=鍋」ではないということだ。

 「はっきよい、のこった!」や、その他の相撲で使われる言葉の、意味や語源について調べてみた。歴史のある相撲は競技としてだけでなく、使ってている言葉にも奥深いものがある。相撲用語がヘブライ語に由来するという説ももっと調べてみたい。


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