少女パレアナとポリアンナ効果
『少女パレアナ』という物語をご存知だろうか。「アルプスの少女ハイジ」や「あらいぐまラスカル」に続くシリーズとして『愛少女ポリアンナ』というタイトルでアニメ化された。
幼くして両親を亡くし、孤児となった十一才の少女パレアナ。冷たく気難しいパレー叔母さんに引き取られるが、あてがわれた部屋は何もない殺風景な屋根裏部屋・・・鏡も絵もない。パレアナはこう言うのだ。
「かえって片づけが早くすむからいいわ」 「鏡のないのもうれしいわ。鏡がなければ、ソバカスも見えませんものね」
屋根裏から見える風景に 「あんないい景色があったら、絵なんか見ないでいいわ。叔母さんがこの部屋をくださってうれしいわ」と・・・。
パレアナは、つらい境遇の中にあっても一生懸命「喜び」を見つけようと努力する。これは、パレアナが亡き父親から教わった「どんなことからでも喜ぶ事を探し出す『なんでも喜ぶ』ゲーム」なのだ。このゲームは、「喜ぶことをさがしだすのが、難しければ難しいほどおもしろい」とパレアナは言う。パレアナは、どんな人に会っても、何かしら「うれしいこと」「喜べること」を見つようとする。パレアナはこの遊びを通して、出会った人々の心を明るく勇気づけ、幸福にしていく。やがてその遊びは町じゅうに広がり、気難しい叔母さんの頑なな心も 、パレアナの「喜びの光」に温められ、溶かされていくのだ。
この物語から「ポリアンナ効果」という心理学用語が生まれている。「ネガティブな言葉や思考・感情よりも、ポジティブな言葉、思考・感情のほうが人生にも大きな影響を及ぼす」ということだ。「ポリアンナ効果」は、人々の幸福感や心の健康に良い影響を与えることが研究で示されており、ポジティブな視点で物事を見ることによって、ストレスや不安を軽減し、より楽観的な心の状態を促すことができる。また、ポリアンナ効果は人間関係にも良い影響を与え、ポジティブな視点を持つことで、他人とのコミュニケーションが円滑になり、信頼関係を築くことができる。その不屈で確固とした楽観主義は、私たちがもっと幸福に暮らすための手助けとなり得るような考え方を明確に示す模範として描かれている。
ポリアンナ効果を活用するためには、ポジティブな視点を養うことが重要で、日常の中で、自分が感謝できることや良い出来事に意識を向けることで、ポジティブな思考を育む。また、ネガティブな出来事や困難な状況に直面した場合でも、ポジティブな要素を見つけることに努めることが大切だとする。例えば、雨が降ってしまったとしても、それによって自然が潤い、美しい花が咲くことができると考えることができる。
人生にとって「心」の持ち様がどれほど大切であるか。同じ条件、同じ境遇でも正反対の人生にさえなっていく。「心」の持ち方ひとつで、どんなに自分自身を、そして周囲をも変えていけるか。
日本には、自己肯定感の低い子どもたちがたくさんいる。少子高齢化、地域の教育力の低下、遊ぶ場所・遊ぶ時間・仲間意識の喪失、地域社会との断絶…子どもが生きづらい、子育てをしにくい世の中であるが、子どもたちにはぜひパレアナのゲームを真似して、常にポジティブシンキングで、喜んで生き、楽しんで行動し、人生の価値を高めてもらいたいものだ。