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平和世(みるくゆ)は沖縄の願い!

 太平洋戦争末期、国内最大の地上戦で多くの住民が犠牲となった沖縄は6月23日、戦後78年目の「慰霊の日」を迎える。今年も最後の激戦地となった摩文仁の平和祈念公園で沖縄戦没者追悼式が行われ、平和の誓いが新たにされることだろう。今年、沖縄の玉城デニー知事はどのような平和宣言を読まれるのか楽しみだ。かつて翁長前知事は平和宣言の中で、「悲惨な戦争の体験が平和を希求する沖縄の心の原点だ」と指摘。米軍属による女性暴行殺人事件を念頭に、「非人間的で凶悪な事件に県民は不安と強い憤りを感じている」と指弾、「広大な米軍基地があるが故に、事件・事故が繰り返された」と訴えた。

 毎年、この式典では小学生や中学生が平和の詩を朗読する。7年ほど前だっただろうか、当時小6の仲間里咲さんが朗読した「平和(ふぃーわ)ぬ世界(しけー)どぅ大切(てーしち)」…。仲間さんは、「命の短いセミが戦争を知らない私たちに、命の大切さを伝えてくれている」と感じ、沖縄戦が終わった季節に響く蝉時雨とともに平和を訴えたいとの思いを込めたと語った。仲間さんの姿は、1995年の沖縄米兵少女暴行事件の抗議集会でスピーチした女子高生:仲村清子さんの姿と重なった。戦後50年の年に起きた米兵による暴行事件の被害者はなんと小学生…あまりにも凄惨な事件は日米地位協定の改正を訴える大きな抗議集会となり、沖縄県民総決起大会には太田昌秀沖縄県知事(当時)をはじめ、8万5千人もの市民が集まった。その際、仲村清子さんは次のように語った。
「基地が沖縄に来てから、ずっと加害はくり変えされてきました。基地がある故 の苦悩から、私たちを解放してほしい。今の沖縄はだれのものでもなく、沖縄の人々のものだから。私たちに静かな沖縄を返してください。軍隊のない、悲劇のない、平和な島を返してください 。」

 ところで、沖縄の子どもの貧困率は29.9%、日本の子どもの貧困率16.3%のダブルスコアだ。沖縄の子どもの3人に1人が貧困状態に置かれている。沖縄の平均年収は、本土の468万円を大きく下回り327万円。沖縄の世帯総数に占めるひとり親世帯の割合は、母子家庭が5.46%、父子家庭0.9%であり、この割合は全国の約2倍。ひとり親世帯の貧困率は58.9%。有業者で年間所得が200万円を下回る世帯割合は24.7%と、全国9.4%の2倍を超える。失業率は本土の3.3%に対し、5%。 非正規雇用率は44.5%と全国で一番高い。そして、沖縄県の出生率は全国1位。良いことだが、必然的に子ども一人にかけることのできる教育費は減少する。

 戦時中に悲惨な集団自決の起こったチビチリガマ(島民が避難生活を送った鍾乳洞のひとつ)を訪れた際、「みるくゆにがてぃ」という歌詞の書かれた碑を見つけた。「平和な世を願って」という意味だ。「みるくゆ」の語源は「弥勒が治める平和で豊かな世界」。「平和世(みるくゆ)」というフレーズがとても印象的だった。米軍基地に脅かされ、貧困に苦しむ沖縄の子どもたちに、本当の意味での「みるくゆ」が訪れるのはいったいいつのことになるのだろうか。


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