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ファストファッションが地球を壊す!
毎年6月12日は、国際労働機関(ILO)が児童労働の撤廃を呼びかけるために定めた『児童労働反対世界デー』である。国際労働機関(ILO)と国連児童基金(UNICEF)は、2000年に推計の発表が始まって以来、減少していた児童労働が増加に転じ、貧困が増加し、適切な対策がとられない場合、児童労働者が890万人増え、さらに緊縮政策によって社会的保護が十分に行わなければ、児童労働者は4,620万人も増え、2億人を超える可能性があると予測している。これは世界の子どもの9人に1人にあたる。危険有害労働に従事している子どもの数も、650万人増えて7900万人もいるとのことだ。チョコレートの原料となるカカオ、Tシャツの原料となるコットン、携帯電話に含まれる希少金属・鉱物など、生産現場に児童労働があると指摘されるのは、どれも私たちの生活に身近なものばかり。私たちは、知らないうちに、児童労働で作られたものを使っているのだ。
1997年、サッカーボール産業に多くの子どもたちが関わっていることが問題となった。低賃金の上に、硬い皮を扱うため、子どもたちは手を怪我し、時には変形してしまうこともあった…。この問題に対し、FIFA(国際サッカー連盟)をはじめ国際機関、NGO、スポーツ業界が協力して、サッカーボール産業の児童労働撤廃に取り組み、状況は改善されつつある。この児童労働がグローバルな問題となってもう25年以上になる。英国のBBC放送が「ベトナム・カンボジアにおける児童労働問題の特集」を行ったことに端を発したのだが、このとき世界中から批判を浴びたのは、世界的なスポーツブランドを誇るナイキである。ナイキは12歳の子どもたちに強制労度をさせ、靴などを作っていたとの告発内容であった。これをきっかけにNGOがナイキ非難のキャンペーンを行った。ナイキ側はこの工場はナイキのものではなく、契約工場だと弁明したが、この言い訳は国際社会には通じなかった。児童労働だけでなく、低賃金労働、長時間労働、セクシャルハラスメントなどの問題点の存在が明らかになったのだ。BBCは再度この問題を取り上げ、スイスのダボス会議の会場では、ナイキ非難のキャンペーンとデモが行われ、世界中にこのニュースは流れた。こうした事実を知ったアメリカのNGO団体および学生たちは、大学キャンパスやインターネットを使用し、ナイキの社会的責任を批判。運動は製品の不買や訴訟問題に発展し、ナイキのイメージと売り上げはかなり落ちこんだ。利益追求のために人権を無視し、社会的責任を果たさなかった結果だ。ナイキは、サプライヤーの労働環境や安全衛生状況の確保、児童労働を含む人権問題に、企業の責任として取り組まなければならないことを身をもって経験し、これを契機にグローバルない概念となりつつあったCSR(企業の社会的責任)を重視する方向に大転換したのである。
結果的に、ナイキの事件は、企業や消費者、国際機関や市民団体など社会全体が協力することで、児童労働を始めとする人権問題の予防と撤廃が実現できることを証明したのである。有名スポーツ用品ブランドのナイキは、ベトナム製造委託先の工場で現地基準の177倍の有害ガスにさらされていることや、途上国の工場で児童労働や低賃金・長時間労働が行われていることが発覚し、その労働環境がNGOなどから激しく非難された。ナイキは当初、生産をサプライヤーに委託しているという理由から自社の責任範囲外であり、サプライヤー側の問題であるとして対応しない方針を示したが、そういった態度が火に油を注ぐこととなり、株主総会での反搾取工場決議の提起や学生団体からの搾取工場による商品の販売差し止め請求、NGOから全米やカナダ、ヨーロッパにまで広まった不買運動が起きてしまい、売上と共に株価も下げる結果となった。
2013年、バングラデシュの縫製工場「ラナプラザ」が崩落し、少なくとも1,132人の死者、2,500人以上の負傷者が確認され、世界的にみても例のない労働災害として注目され、政府やILO、国際的アパレルブランドなどの支援の下、縫製工場の建築構造や火災、電気などの安全性を担保する取り組みが急速に進む要因となった。
労働者が劣悪な状況や多くの健康リスクがある中で長時間にわたり非常に低賃金で雇用されるため、搾取工場と呼ばれてきた。H&M、ナイキ、アディダスといった世界的に有名なファッションブランドは、いずれも『搾取工場』の使用で批判されている。ファストファッションも大きな問題点を抱えている。日本でも、ユニクロ、しまむら、GUなどがファストファッションの典型だが、購買者にとってのファストファッショの良さはやはり価格だろう。しかしながら、価格を抑え、しかも他社との売り上げ競争に勝つために、色合いを明るくする、色褪せを防ぐ、撥水性を持たせる、シワになりづらくするなどの機能を服に持たせるための加工のため、環境破壊につながっている。
まずは水質汚染だ。洋服を製造するためには大量の水が必要とされ、世界の工業用水汚染の20%は、繊維の染色と処理に起因している。染色工程で、有害な化学物質が水中に放出され、これにより地下水や河川などの水質悪化、周辺地域の水資源の枯渇が懸念されている。製造時にかかる環境負荷だけでなく、実は私たちが洋服を洗濯するときにも、マイクロファイバーやマイクロプラスチックが海洋に流出しているといわれている。
次に大気汚染だ。化学繊維の製造には、大量の化学薬品や有害物質を使用する。これらの物質が大気中に放出されると、大気汚染の原因になる。石油由来の合成繊維を材料とした製品製造にかかる温室効果ガス(GHG)排出量は、合計12億トンのCO2に相当し、これは世界の国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量だという。
さらには大量の廃棄物だ。環境省の調査によると、年間で一人当たり約12枚の衣服が捨てられており、さらに一回も着られていない服が一人あたり25 着もあるといわれている。現在、捨てられた洋服の95%はそのまま焼却・埋め立て処分されている。その量は年間で約48万トンに上り、この数値を具体的に換算すると、大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしていることになる。
最後に生物多様性の損失にもつながってしまっている。化学繊維による製品製造は多大な環境負荷をもたらすが、天然繊維だったら問題はないかというと残念ながらそうではない。アメリカ国内で栽培されている綿花(コットン)には、成育に大量の水を必要とするうえに、年間1,000万トンもの殺虫剤が使われる。また、ウール(羊毛)を得るために羊を放牧するだけでも土壌や水質が汚染され、生物多様性に影響を与えている。天然繊維は、原料の育成段階で大量の化学物質や化学肥料が使用されるため、決して環境にいいとはいえず、次第に土壌の質は劣化していくのだ。
以上の問題は、巨大化したグローバルファッション産業、ファストファッション業界が環境に及ぼすダメージの大きさを示している。私たちが低価格の洋服を購入して、短期間のうちにごみに出してしまうような生活スタイルは、巡り巡って私たちが暮らす地球環境にも悪影響を与えることにつなっがていくのだ。
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![合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104755080/profile_0cf24193831c0d7075fcda6f41570b72.jpg?width=600&crop=1:1,smart)