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「はだしのゲン」が平和教育から消された広島

 昨年、広島市の平和教育副教材から漫画「はだしのゲン」が削除され波紋が広がった。世界最初の原爆が投下された広島で、戦中戦後の苦難な時代を生き抜こうとする少年を描いた同作は、累計発行部数1,000万以上。世界各国で読み継がれてきた。そんな「はだしのゲン」が、なぜ削除されたのか? 
<文字数:3,543文字>

 79年前、原爆が投下され、その年だけで14万人が犠牲になったとされる広島。「ほかの誰にもこんな思いをさせてはならない」という被爆者の願いと平和を求める市民の心をもとに、広島市では平和教育を教育の原点に掲げてきた。漫画「はだしのゲン」は、作者の中沢啓治氏が6歳の時に被爆した実体験をもとにした作品だ。原爆投下直後の広島の変わり果てた街の様子、苦しみ亡くなっていく人々、そして主人公ゲンが戦後の広島を懸命に生き抜く姿が描かれている。そこに中沢氏が込めたのは、子どもたちに逆境の中でもたくましく育って欲しいという願いだった。

 そうした思いも受け継ぎながら、10年前、平和教育の教材に「はだしのゲン」を採用した広島市の教育委員会が、2023年にそれを差し替えることになったのはなぜなのか。そこには、教育現場が抱える深刻な課題があった。それは「ひろしま平和ノート」。広島市教育委員会が独自に作っていた教材だ。小学校から高校まで、年間3時間。広島市立のすべての学校で計画的に平和教育を進めようと、10年前に導入されたものだ。


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