努力して得られる自信と経験
5年以上も前のことになるが、娘の中学校の入学式に臨席したときのことであった。まだコロナ前だったので、国歌斉唱の後、校長先生の祝辞が始まった。その校長先生の祝辞にとても感銘を受けた。
校長先生はまず、その学校の校訓である「時をいかせ」を新入生にわかりやすく説明された。「時をいかせ」…この校訓の「時」には「時間」という意味と「機会(チャンス)」という意味がある。時間は誰にでも平等に与えられる。中学校生活はたったの3年間…その与えられた3年間という時間をいかに自分自身にとって大切に使うことができるのか、そして、自分に与えられた機会(チャンス)をどれだけ自分の未来に活かせるよう努力できるかが大事だと伝えられた。
次に、校長先生は、ご自身が好きな言葉を引用し、努力の大切さを強調された。
努力して結果が出ると、自信になる。
努力せず結果が出ると、傲りになる。
努力せず結果も出ないと、後悔が残る。
努力して結果が出ないとしても、経験が残る。
3年間という限られた中学校生活で、自分なりに努力をして自信をつけることが自分自身の成長のためにとても大切である。なぜなら成功した理由を自分自身で作り出し、その過程を知っているからだ。しかしながら、努力もしていないのに、たまたま物事がうまくいってしまうと、それは自信過剰となって、努力を怠ることにも繋がる。ましてや、努力を全くしないで過ごしてしまえば、「あぁ、あのときもっと頑張っておけば良かった」と後悔することになる。一生懸命努力をして、それがその時点では結果に繋がらなかったとしても、努力をしたことで自分自身の中に経験として蓄積され、その努力がいつか実を結ぶ。経験とは失敗でもあり、成功までのプロセスの一部でもある。上手くいかなかったとき、「後悔」をするだけなのか、次に成功するための「経験」を得られるのかは、努力をしたかどうかにかかっている。だからこそ、この3年間で何事にも挑戦し、努力を重ねて自信をつけるとともに、様々な経験をして欲しい…このように語られたのだ。
このときの校長先生の訓話は、新入生にとってだけでなく、出席した父母や若い先生方にとっても、素敵な「気付き」となる深い内容のものだった。当時、児童福祉施設長だった私は、校長先生が引用された言葉は、児童福祉施設で働いているベテランの職員にも、若手の職員にもぜひ伝えたいと感じた。児童福祉の仕事、つまり日々の養育や自立支援、ソーシャルワークは、努力の結果がすぐには現われない仕事である。
たゆまぬ努力の蓄積が結果となって帰ってくるのは、子どもたちが成長して社会人となり、幸せな家庭を築き、社会の役に立っている大人としての姿を見せに来てくれた時だからこそ。