環境にやさしい魔法の砂
私たちの生活に身近なガラス製品。地球上ではおよそ5千年の歴史を持つとされるガラスだが、日本でも2千年前のガラス炉が発見されており、安全かつ安定した容器としてガラスびんを中心に使用されてきた。
現在、日本で作られるガラスびんは約124万トン。その原料の95%は「カレット」というリサイクル資源だ。お酒、醤油、ビール、牛乳などの茶色や透明のびんはリサイクルして使われるが、青や緑など色のついたびんは再生が難しく、年間約25万トンが埋め立て処理せざるを得なくなっている。
これを「もったいない」と考え、そのリサイクル用途の開発に努力してきた成果のひとつが「サンドウエーブG」だ。今まで、廃棄・埋立処分されていた色付きのガラスびんやガラスくずを100%原料とし、製造工程において、破砕・エッジレス化(=ガラス特有の「刺さる、切れる」を解消)することにより、良好な透水性・締固め特性を持った造粒砂になった。
地球(地殻)を構成する主要5元素は、酸素(49.5%)ケイ素(25.8%)アルミニウム(7.56%)鉄(4.70%)カルシウム(3.39%)である。一方、5,000年も前に人類の知恵から生まれたガラスびんの主成分は、ケイ素(62.7%)カルシウム(32.4%)だ。使われなくなったガラスびんを元の姿に戻して地球に返す…それが「サンドウエーブG」という環境にやさしい製品の特長だ。
サンドウエーブG(SWG)の特色とその利用のメリットは以下のとおりである。
<特色>
・粒子に粘着力が無いため、施工生が良い。
・自然砂と比較して、雨天時も作業可能であり、乾燥を待たずに施工可能であるため、作業期間の短縮、作業コストの縮減につながる。
・透水性(水はけ)が良い
<利用のメリット>
① 雨水貯留浸透施設
雨が降ると、地面に浸透したり舗装の表面を伝わって側溝から河川へ流れるが、都市化が進み、集中豪雨などで河川の氾濫や住宅浸水、路面浸水を引き起こす。そのため、雨水を一時貯留し、時間をかけて地下に浸透させることにより、洪水被害の軽減と地下水の保全に役立てる「雨水貯留浸透施設」が必要とされる。サンドウエーブGは、敷き詰めて転圧しても、空隙率が約30%に相当し、透水性が良いため、滞留せずに満遍なくその隙間に雨水が貯留し、施工面積が小さくても膨大な雨水を貯留することが可能である。
② ヒートアイランド抑制
天気の良い夏場の舗装表面温度は60℃前後まで上昇し、この路面温度上昇がヒートアイランド現象の原因の一つになる。サンドウエーブGを透水性アスファルト舗装の下に雨水貯留槽として利用することで、貯留された雨水の蒸発時の気化熱で路面温度を5℃〜10℃ほど低下させることができ、打ち水と同じ効果が得られる。また、施工が簡単で駐車場や歩道等に利用が可能である。
③ ゲリラ豪雨対策
ゲリラ豪雨とは、降雨の範囲がきわめて局地的でかつ突発的、短い時間で大量の雨が集中的に降る予測困難な豪雨であり、地盤に悪影響を与えたり、川の水かさが急に増えて、水害を引き起こしたりする。浸水しやすい箇所に対して、サンドウエーブGを用いた雨水貯留浸透層を設けることにより、被害の軽減が図れ、大量の雨水を地下に浸透させることが可能となる。
④ 液状化防止対策
液状化防止対策の一つとして、透水性の高い材料で十分な締固めを行うことにより、浮き上がりや陥没の防止が出来ることが確認されている。
⑤ 防草対策
サンドウエーブGは、水はけが良く、栄養分が無いため、土地盤と比べて雑草が生えにくいという特徴を持つ。さらに、粘着力が無いため、雑草が生えても抜きやすく、雑草の量の減少、雑草処理に関わる維持管理費のコストダウンが可能である。
この「サンドウェーブG]というガラス造粒砂を扱う会社は全国に4か所あり、そのうちの1つが愛知県東浦町にある「トーエイ株式会社」だ。昨年、東浦町や隣の半田市の小学校で「トーエイ」の社員が環境教育を実施し、行内の百葉箱の周囲や公園のベンチの周囲にこのガラス砂をまいて雑草対策をしたという記事を読んだ。ガラス砂は水はけがよく、栄養分がないため雑草が生えにくいそうだ。SDGsで脚光を浴び、トーエイのガラス砂の製造量は2018年の6700トンが2022年には1万5千トンに増えたという。
埋め立てゴミが減少し、地球温暖化の抑止や防災にもつながるまさに「
魔法の砂」だ。日本が世界に誇る「もったいない」の精神から生まれたサンドウェーブG…SDGs実現のために日本だけでなく、グローバルに有効活用されることを期待したい。