生成AIはメディアビジネスを取り巻く環境をどう変えるか
先日のnoteで、メディアが生成AIを活用するポイントを挙げてみました。
そもそもメディアが生成AIをどう活用するか以前に、生成AIによってメディアビジネスにはどんな影響が見込まれるのでしょうか。
生成AIが広がることによって、あらゆる企業・個人の生成AI活用によりコンテンツが爆増し、コンテンツの制作・流通にパーソナライズがより広がります。コンテンツの企画・制作・流通にいたるまでAIエージェントがサポートしてくれることで、少ないコストで一定品質のコンテンツを作れるようになり、コンテンツの総量は爆増するでしょう。また、個人の関心を学習したAIエージェントがコンテンツを探してくれることで流通のパーソナライズがより進み、興味やリテラシーに応じたコンテンツが個人ごとに制作されるようにもなるでしょう。
これらの社会的な変化が、Webメディアのビジネスモデルへもたらす影響を考えてみます。来年・再来年のWebメディア運営戦略を考えるヒントとなれば幸いです。
コンテンツあたりの平均PVが低下する
コンテンツが爆増して競争が激化する(供給過多になる)ので、平均PVは間違いなく低下します。競争相手は他のメディア企業に留まりません。個人や企業が公開するコンテンツの品質と総量はどんどん増えていき、メディアブランドの存在感は小さくなります。
同時に、人口減少、ニュースプラットフォームの成長率鈍化、新フォーマットのコンテンツの出現といった要因で、Webメディアのコンテンツに対する需要も減少していきます。
Webメディア実務に関わる方は体感していると思いますが、平均PVが低下していくのは生成AIの出現前からあったトレンドです。生成AIはこのトレンドを加速させていくでしょう。数年前と比べるとリーチを高める難易度はどんどん上がっています。
コンテンツあたりの平均広告単価が低下する
AIエージェントがパーソナライズしたコンテンツを制作してくれるということは、Webメディアが公開するオリジナルのコンテンツを消費するのが人間ではなくAIボットになるということです。例えば、あるトピックをAIエージェントに尋ねるとWebニュースを収集・編集して教えてくれるようになります。このときに、人間はオリジナルの記事を読まなくともAIエージェントとの会話で満足してしまうのではないでしょうか。そうなると、Webメディア上の広告インプレッションが減り、ターゲティングもより難しくなり、広告単価は下がるでしょう。
また、流通のパーソナライズが十分に進化すれば、メディアに掲載されない情報もさらに届くようになります。企業がオウンドメディアで情報を発信しブランドメッセージをコントロールする手法はより強化され、AIエージェントがコンテンツと人間のタッチポイントとなるため、メディア企業への広告出稿は減っていくかもしれません。
平均広告単価の減少もまた生成AIの出現前からあったトレンドです。プライバシー保護によりターゲティングが難しくなった影響で広告単価は下がりつつあります。生成AIはこのトレンドも加速させていくでしょう。
インターネットやスマートフォンの出現時と同様に、生成AIという新しい技術でさまざまなチャンスが生まれています。その反面、メディア各社が取り組んでいる本質的な課題にその技術を活用できないと、さらに存在感が低下してしまうのではないかと危惧しています。
私は、一社一社で独自に活用方法を模索するだけでなく、メディア業界として活用ノウハウを共有できるコミュニティが必要ではないかと考えています。現在開発しているapneaも、そのようなコミュニティの一助となるべく進化させたいと思います。
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