「m.ripple代表作 “長財布DEW-002”」
レザー屋の仕事をしていて、バッグのオーダーをお請けすることはあります。
「こういうサイズの、こういうバッグが街にない」とか、
「仕事でこういうものを入れるので、専用のバッグがほしい」とか。
しかし、財布に関しては、ワンオフ(イチからオーダー)というのはあんまり意味がないように思います。
なぜなら、財布というのは、お札、コイン、カード、その他領収書の類、くらいしか基本的に入れることがないからです。そこはみんな同じはずです。
ですので、オリジナルなものを希望されていても、いまある財布のモデルから、気に入るモノを見つけ、革/色を変えるとか、一部にアレンジを加えるほうがきっとよいのです。
m.rippleのDEW-002は、村上氏が「財布の機能、使い方を、イチから考えてみた」ものです。
世にある財布の“パターン”をいったん措いて、「こうなってたら使いやすいのではないか」、「こんなふうにしたら美しいのではないか」と、クラフツマンであり、アーティストである村上さんが、工夫に工夫を重ねて考案したかたちと構造です。
村上さんがどれほど考えて、どれくらい丁寧につくっているのか、彼自身の言葉でつづったブログもご覧いただければと思います。プロの視点と技術にいつも感心します…。
〈このとても小さな世界の中に、何をどう収納して、動線を考え、使い込んだ未来の姿を考え、デザイン・設計します〉
m.rippleの代表作「DEW-002」を、お借りしてしばらく実際に使ってみました。
左が新品で、右がお借りしたユーズド。ツヤが出ているのがわかります。
使用後の右の方が、厚みが落ち着いてきています。
使ってみた結論を言いますと、
「ものすごくいいです!」
まず手に取った感触。ミネルバボックス(イタリアの牛革)の柔らかな、吸いつくような手への馴染み方。
よりコシのあるブッテーロ(これもイタリアの革)の、艶やかなフラップを開く瞬間のスピード感。
財布からお金を払うときって、モタモタしたくないものですが、DEW-002は、コイン、お札、カードが並列に並んでいるので、そのへんは心配いりません。
コインポケットにジッパーがないのも、ワンアクション少なくてよいです。
中身が一望できるというのも、使いやすい要因だと思います。
カードのしまい方が変わっていて、ポケットではなく、レザーの仕切りに挟んで分ける仕組みになっています。
これが思いのほか、見やすくて出しやすい。
ちなみに交通ICはここに、別に入れています。
スナワチで取り扱うブランドのレザー製品は、使用後の修理も承りますが、財布の場合、たいがい壊れるのは金具です。
ジッパーのプルタブがとれたとか、ジッパーテープ(ジッパーの歯がついている布地)が破れたとかが多いです。
ですので、金具がないということは故障が圧倒的に少ない(はず)。
DEW-002のスリムバージョンである、DEW-003もありまして、ちがいはカードを入れる向きです。002は横方向に、003は縦方向にしまいます。
正直、DEW-003(写真右)の方がフォルムがすっきり見えるのか、こちらの方が売れます。
しかし、私はあくまでもm.rippleの代表作はこちらのDEW-002ではないかと考えています。往年の名車、三菱パジェロとパジェロミニみたいなことです…。
なお、残念なことに、現在m.rippleが起用するイタリアン・レザーの供給が滞っていて、なかなか仕入れられないようです。
すでに何人かのお客さんに製作をお待ちいただいています。入手でき次第つくってもらいますので、すみません…。
自然な方法で鞣されたレザーというのは、元が動物なので色やシワの入り方もまちまちですし、供給も不安定なものです。
そのあたりをご理解いただいた上で、「これよさそう! 私もほしい」という方は遠慮なくご連絡ください。
「使ってみたら本当によかった」と思っていただけることは、私の折り紙つきと思っていただいて差し支えありません。
Thanks.
「愛せるモノを、持たないか?」
スナワチ
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