41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟 ~転職は、プリキュアだ。~ ③
お待たせしました。ようやく「光の章」です。
今回は転職活動編です。転職を考えている方の参考になれば幸いです。
ようやくタイトルの「~転職は、プリキュアだ。~」が一部回収されます。
転職は とにかくプロに 任せよう (五七五)
優秀なエージェントさん達に見守られ、素敵な企業の方々と対話を重ねることができた転職活動では、失敗すらも良い思い出、人生の糧となり、怨み辛みも一切ありません。今回はスッキリとさわやかな回になっており、不快な話は最後にちょろっとだけです。
あと最初に言っておきますが、次回、また最悪の闇に覆われます。
前回までのあらすじ
Webエンジニアとして働いていた祥太。会社がクソすぎて同僚エンジニアが次々と会社を去る中で、ひとり逃げ遅れてしまう。
F取締役ら会社上層部がトチ狂って意味不明な新規事業を始め、完全出向させられ振り回される祥太。にもかかわらずA課長は私が社内にいる前提で地雷案件を取ってきやがるのだった。
そして、また出なかった残業休出の手当。二度も騙されてやんの。いやいや、さすがに今回はハッキリ約束したのに反故にされてるからね。
F取締役とA課長に何度抗議しても黙殺される始末。はてさて、この先どうなりますことやら……。
第3話「祥太の道! 私、転職します!!」
みつけて! 祥太のきらめく職場(すてーじ)!
11月13日月曜日午前、昔何かの拍子に登録していた転職エージェントさんから、一本の電話がかかってきました。
そういえば何年か前に、特に転職を考えていたわけではなかったものの、プリキュアを製作する東映アニメーションほか色んなアニメ製作会社のエンジニア求人が気になってアカウント作って覗いてたのを思い出しました。
考えてみれば、これもプリキュアが結んでくれた不思議な縁でした。
現在転職を検討しているかと聞かれ、「転職……そうか、そういうのもあったな……」と思い出し、「検討も検討、大検討中でございます」と二つ返事で即答。
今から考えれば転職一択という状況でしたが、人間とは追い込まれると本当に視野が狭くなって何もわからなくなるものです。
さっそく転職活動をスタートし、まずWeb適性検査の受検手続きをしてもらい、受検します。
前回の転職は、周囲に相談せず聞こえの良いスカウトにホイホイ乗っかる形で結果として大きな失敗をしました。 今の仕事や職場に満足していない人、まず転職のプロに相談しましょう。広い視野、多くの視点は大切です。
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し。でも、その道の先には……
紡げ! 祥太の新たな経歴(すとーりー)!
11月14日火曜日朝、Web適性検査の受検結果がメールで届きました。自分の適性や性格を客観的・定量的な指標で俯瞰してみるのは大切です。
そして11月15日水曜日午前、履歴書と職務経歴書をエージェントさんに送付します。これは書類選考で頑張ってきてくれる自分の分身なので、しっかり力を入れてよく考えて作りましょう。つい見栄を張ってしまいそうになりますが、深掘りされて困ることは書かない方が無難です。むしろ、面接でどんどん聞いてもらいたいネタをたくさん仕込んでおきましょう。
続いて11月16日、夜。エージェントさんとZoom面談が始まります。
まずはキャリアビジョン、「こうなりたい」という理想像を描くところからスタートです。
「転職は35歳までが限界」という流説を耳にすることがあります。一面的には確かにそうなのかも知れません。ただし、「22歳で新卒入社した後に何の努力もしないでいると、このくらいで潰しがきかなくなり、若い新卒に太刀打ちできなくなる」と私は解釈しています。「プログラマー35歳限界説」と同じですね。
実際、私も転職活動を始める前は「41歳で何者かになれるわけがない」「仕事で公知の実績があったわけでもないのに語る経歴なんかない」というネガティブな意識が根底にありました。
その意識から変えていくため、まずエージェントさんと相談しながら、そもそも私が今後どうしたいのか、どうなりたいのかを整理していきます。
私の要望は、シンプルに二つ。
プリキュア費上昇のため給料上げたい
仕事でなるべく多くの人の役に立ちたい
この二つの「転職軸」を満たすキャリアチェンジをエージェントさんと一緒に考えていきます。
前々職から前職へ移った経緯を思い出してみました。技術に特化したい私と会社の方向性のミスマッチ、また会社も私を持て余して自社の主要事業ではなくSES要員としてあちこちの変な現場に突っ込むだけになっていたことから、その時に出向していた現場である前職に誘われてそのまま移籍したのでした。
しかし前職は優秀なエンジニアが何人かいてキラキラした現場に見えましたが、個々の人材を活かして事業を成功させる舵取り役の不在、そして修羅場ばかりの割にサッパリ儲からない事業体質が次第に目についてきます。
前々職で意外と楽しかったこと、前職に移って失ったもの。そこに答がありそうな気がしてきました。
前々職は業務内容が幅広く、アプリ開発からインフラ、コーポレートIT、コンサルからDX支援まで様々な仕事をしていました。ほとんど何でも屋のように業務内容は多岐にわたっていましたが、一貫していたのは
顧客に近いところにずっといて
顧客の反応を気にしながら
顧客のためにあれこれ考えて
顧客と力を合わせてがんばる
というスタイルでした。
エージェントさんの助言で、これを私の強みとして推すことにしました。
私自身ずっと「自分はどちらかといえばあまり人と関わらずに技術を突き詰める方が得意で」と何故か思い込んでいたので、この結論は意外でした。
いや、考えてもみればそうだよお前、Twitterでも同人即売会でも登壇イベントでも、いっつも何かやってみんなにウケたいって必死じゃん。何が人と関わりたくないだよ。超かまってちゃんじゃん。根っから芸人気質じゃん。自分の仕事で誰かに喜んでもらうのが生きがいなとこあるじゃん。
結果、私の目指すキャリアビジョンは
Tech PMO (技術や知見を活かしてプロジェクトを成功させる)
DXコンサルタント (色んなお仕事をデジタルで変えるお手伝い)
に決まりました。
PMOは、何か価値を実現したい人にとって、ヒーローのような存在です。
折しも、当時は『ひろがるスカイ!プリキュア』が放送中。私は自分のなりたいヒーローを目指して頑張るソラちゃんに勇気をもらい、心の中にある自分のヒーロー手帳に自分のなりたい理想像を書き留めていきました。
PMOは燃えているプロジェクトを絶対に見捨てない
進捗がどんなに厳しくても、正しいことを最後までやり抜く。それがPMO!
『プリキュア』は全作が、ふつうの子が様々な困難に見舞われながら勇気を奮い、自立して考え、行動し、仲間たちと出会い、成長しながら「なりたい自分になっていく」「夢を叶えていく」物語です。
これは、人生における転職・キャリアチェンジと全く構造です。
大切なものを守るため、なりたい自分になるため、変身して戦い、それを通じて人として成長していく。みなぎる勇気。あふれる希望。光輝く絆とともに。転職とは、ぶっちゃけプリキュアなのです。ええい、俺はシラフだ。
Viva! 19本立てDEトロピカれ!
さっそく、エージェントさんが私にマッチしそうな求人を見繕って紹介してくれます。その数、33社。
……えっ、こんなにあるの?
とりあえず、少しでも興味があるものはどんどん応募していきます。紹介してもらったもの以外も積極的に応募していきますが、不思議なもので自分で選んでみた求人は書類選考で見送りになるケースが多かったのに対し、エージェントさんがおすすめしてくれた求人は面接に進むケースが多かったように思います。
必ずしも提示された選択肢が希望通りとは限らない場合もありますが、プロが見込んだあなたの素質は必ず道を切り拓いてくれることと思います。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ではありませんが、転職活動は数をこなすこと、良い意味で慣れることが大切です。厳選に厳選を重ねて恋い焦がれた企業の選考に漏れて凹んで気力をなくす、みたいなことを繰り返していてはいつまでたっても内定は得られません。
良い意味で一期一会の出会いと割り切り、毎回毎回ベストを尽くし、手痛いダメ出しで落とされれば貴重な助言として糧にでき、高評価で通過させてもらえればさらなる意欲に繋がります。
というわけで、まずこの日のうちに12社に応募してみます。既に履歴書も職務経歴書もエージェントさんに提出してあるので、応募はボタンをポチッと押すだけです。なお、この中に現在の弊社もありました。
さらに翌月12月9日までかけて、累計19社に応募しました。そのうち書類選考を通過したのが10社、一次面接を通過したのが5社、最終面接を通過し内定を獲得したのが2社でした。
41歳で特に天才でもないエンジニアからPMO/DXコンサルというのはちょっぴり無謀なキャリアチェンジではありましたが、結果的に多くの企業が興味を持ってくれました。
みなさんも、勇気を出して一歩進んでみてください。恋愛と同じです。フられることは切ないけど、悪いことではありません。たくさんの出会いと別れを重ねていけば、いつか運命の出会いが待っているかも知れません。
面接の一番大事なこと
面接で大切なのは、次の3つです。
結論から話す
簡潔に話す
論理的に話す
前職で大した実績がなくても、資格とか持ってなくても、ここさえ押さえれば「あ、このひと仕事できるわ」という印象が勝ります。そんな人なら実績なんて機会を与えれば作ってくれるし、資格も後からついてくるでしょう。
逆にダラダラと文脈が迷子になりながら考えずに話してると、印象は最悪です。絶対仕事できない人だと思われちゃいます。それだけは避けましょう。
ただ、わかっていてもいざ本番となるとなかなか思うようにできないと思います。そういう意味でも、場数を踏んで良い意味で慣れていきましょう。個別直接応募のお祈りメールと違って、エージェント経由での応募は落ちた場合でも「何故落ちたのか」をハッキリと教えてくれます。最初のうちは落とされても実地訓練と割り切って、指摘された改善点を次回以降の面接で確実に潰していきましょう。
また、面接では「言語化」も重要なスキルです。特に志望動機や転職軸などは、たとえどんな切り口で聞かれても言葉に詰まったりせず端的に簡潔にすらすらと自分の言葉で答えられるようになっておくといいと思います。
エージェントさんの方では根本的な面接対策を手厚く実施してくれますし、選考が進んでいくと各社の特性でカスタムした面接対策を伝授してくれます。しっかりと準備をして、想定質問と回答も淀みなく言えるようにして、想定外の質問が来ても落ち着いて冷静に答えられるようにしていきましょう。
夢は無限大! 50代になったら何になる?
面接で多く聞かれることとして、「キャリアビジョン」があります。これはどんな自分になりたいかということにとどまらず、1年後、3年後、5年後、10年後……というスパンでキャリアパス、つまり自分を成長・変革させていく長い物語の〝シリーズ構成〟を考えておく必要があります。
WebサイトやIR資料などから意中の企業の「物語」の今後のあらすじをしっかり読み込み、その本篇と絶妙に絡み合うスピンオフシリーズの企画を提案するつもりで自分のキャリアパスを練り、面接に臨みましょう。
なお、ここでキャリアパスを宣言したからとて、入社後も忠実にその通りに生きていく必要はさらさらありません。企業も自分も、未来は常に変わり続けていくものです。あくまで、求められているのは「美しい物語」ではなく、「物語を美しく紡げるメインライター」なのですから。
(話が)飛ぶよ! (目が)泳ぐよ! 祥太の初面接!
さて、いよいよ面接本番のはじまりです。
11月27日月曜日にはじまり、12月8日金曜日までの平日2週間10日間のうち8日間に面接がセッティングされました。これほどの頻度で面接を受け続けるのは人生で初めての経験です。
現在の弊社の一次面接も、12月5日火曜日 18:00にスケジュールされました。
一次面接ラッシュは、なかなかキツかったです。特に準備不足が露呈した序盤は明らかに自分がハマっていないと空気でわかり、それが緊張に拍車を掛けてテンパった末にグダグダになるという悲惨な回がありました。
毎回、面接が終わると概要をエージェントさんに報告します。その中で、自分の面接を振り返り反省点を見つけ、次回に活かします。
これを繰り返していくと、だんだん面接の通過率が向上していきました。
下記は、11月28日火曜日から12月11日月曜日までに一次面接を受けた7社からのフィードバックです。
姿勢が良くなく頬杖に見える瞬間があった。質問に対して回答が来ず、別の話をされることがあった。⇒お見送り
緊張されていたのか、要約して伝えることが得意ではないと感じた。質問した内容に求める回答が返ってこないことがあった。⇒お見送り
ご年齢に対し経験が乏しいと感じ、弊社の求める基準には達せず。自己分析があまり出来ておらず、回答の深掘りに対しては浅い回答が多かった⇒お見送り
面接での受け答えやコミュニケーションは問題なく評価しているが、これまでのご経験に対して弊社保有案件との親和性が乏しい⇒お見送り
お人柄に好感が持てた。技術サイドの知見や経験を活かしていただけそうだが、一方でPMO領域の経験の少なさに懸念あり。⇒最終へ
ご応募いただいているポジションにご本人の経験がマッチしており、意欲の高さと学習姿勢からPMO経験の少なさは入社後にキャッチアップしていただけそうと感じた。⇒最終へ
エンジニアとしてのご経験が豊富で想定案件とのスキルマッチ度が高い。向上心があり伸びしろが期待できる。お人柄も既存組織にマッチしそう。⇒最終へ
少しずつ、しかし着実に、面接官の印象が良くなっていることがわかります。特に全敗だった1週目と比べて、2週目以降は全勝です。一体、何があったのでしょうか。
たった2週間なので、出している書類にも話している内容にも大差はありません。大きく変わったのは、話し方と受け答えのレスポンスと精度、そしてストーリーテリングです。弱点であった「PMO経験の少なさ」を、逆に「今いちばんメチャメチャがんばってること」と、敢えて自分のセールスポイントとして話すようにしました。
また、先ほど紹介したような面接のポイントを意識し、徹底的に訓練を繰り返しました。また各企業への解像度を上げられるだけ上げ、咄嗟の質問や雑談のネタをしっかり仕込んでおきます。特に独特のカルチャーを大切にしている企業の場合は、確実に押さえておきましょう。
少しずつですが、手持ちの最終面接が増えていきました。
こうして順調な滑り出しを見せたかに思えた転職活動でしたが、実は一次面接が始まった1週目、自社からは思いもよらぬ妨害を受けていたのです。
会社の罠! 囚われた祥太!
11月30日木曜日17時、突然、テレワークを中止して週明けの12月4日月曜日から出社するよう指示が会社から届きました。
現在の出向契約とは明らかに矛盾する内容です。というか、全面的に身に覚えのないデタラメが並べ立てられています。
ただちにエージェントさんに連絡し、12月4、5、8日の18:00に組んだ一次面接のスケジュールを延期してもらいます。
ちなみに12月5日 18:00からの面接は現在の現職、本命企業でした。
転職活動を悟られた? いや、そんなはずはない。そもそもゴミ同然の扱いをしてくるくせに、何故今更出社指示を……?
疑心暗鬼に苛まれ、転職活動で夢を描き光を取り戻していた私の心は、再びドス黒い闇に染まっていくのでした。
次回予告 (第4話…5/11土曜 あさ7:00公開)
社長名で発された怪文書。それは、ありもしない話をでっち上げた挙げ句に現在の出向契約をガン無視して出社を命じる不可解なものだった。
そして出社の人質に取られる残業代。
テレワーク前提だった面接スケジュールは全面的に見直すハメになり、暗礁に乗り上げた転職活動。
そして出社後、公然と犯罪行為を唆してくるA課長とF取締役。お客様を裏切るなんてできないし、バレたら全責任を負わされ捨て駒にされちゃうかも。
わたし、一体どうなっちゃうの!?
『41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟』、
「お断りしますわ! 私、犯罪者になりません!!」
転職は、プリキュアだ。
サブタイトル元ネタ…『スマイルプリキュア!』(2012) 第43話
小見出し元ネタ…『トロピカル〜ジュ!プリキュア』(2021) 第39、40、33、44、34、18、16話