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41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟 ~転職は、プリキュアだ。~ ①

2024年2月1日、『ふたりはプリキュア』放送開始から20年の記念すべき日。
この21回目となる「プリキュアの日」に、念願叶って転職を果たしました。

東証プライム、かつての東証一部上場企業で、給与や待遇は全く一変しました。福利厚生やキャリアサポートの手厚さも、前職とは比較になりません。

現職ではTech PMO兼DXコンサルタントとして、仕事と勉強に多忙な日々を送っています。自社にも同僚にも先輩にも上司にも後輩にもクライアントにも恵まれ、社会人やってきて今が一番充実していると思います。

今回は私が転職を決意し、成功させ、人生が文字通り一変するまでの経緯を、時系列に沿って書き留めておこうと思います。

いま転職活動をされている方、転職を検討されている方の後押しはもちろん、新卒で就職活動をされている方、将来の就職に備えて準備をされている方にもお役に立てれば幸いです。

なぜ、転職を決意したのか。
なぜ、畑違いの分野に飛び込んだのか。
なぜ、この歳で転職に成功できたのか。

苦境に追い込まれた私を、プリキュア達はどのように助けてくれたのか。
ソラちゃん達の、ヒーローガールの生き様を見て、どんな憧れを抱いたのか。

そして「転職はプリキュア」とは、一体どういうことなのか。

それらは、追々わかってくると思います。

これは、戦いの記録です。
前職の呪縛との、そして過去の自分との。



第1話「私が管理職!? ありえない!」


エンジニアさんが退職? そんなの聞いてないです〜!!

私は20代からアニメ「プリキュア」を楽しむ傍ら、情報系の大学院で修士課程を修め、IT業界でエンジニアとしてインフラ構築からWeb開発、コーポレートITまで様々な仕事をしてきました。

筆者自宅の『プリキュア』映像ライブラリ

もともと仕事でもプライベートでも、自分が興味を持って身につけた技術で誰かに喜んでもらえるのが好きだったんでしょうね。私の中では、スキルを磨いて仕事でクライアントに喜んでもらうのも、Twitterや出演イベント、同人活動で仲間に喜んでもらうのも、全て地続きでした。

筆者出演イベントにて。「阿佐ヶ谷ロフトA」壇上。

2019年冬からの前職では専らWebエンジニアとして、Webアプリの設計開発をメインに働いていました。とても優秀でセンスの良いエンジニア達に囲まれて、最初の2年ほどは楽しく充実した仕事ができていたように思います。

しかし、社内のエンジニアがじわじわと減っていきました。私より長くいる社員が次々にいなくなり、後輩の新人たちもいなくなり、気が付けば自部署にいるエンジニアはベテランの先輩と私の2人だけになっていたのです。

その間にもあらゆる案件で深刻な属人化が進行し、会社上層部もそのことは十分承知していましたが、なかなか根本的な対策は取られませんでした。

そしてとうとう2023年2月のある日、先輩エンジニアが退職することを告げられました。残されたエンジニアは、私1人だけ。完全に逃げ遅れました。

当然何らかの形で後任が補充されるものと思いきやそんなことは一切なく、先輩の仕事の半分が何故か私に引き継がれます。会社で一番のエースエンジニアの手持ちの半分がいきなり上乗せされるのですから、エラいことです。

これが、退職に至る最初の引き金になりました。

先輩エンジニアの手持ち仕事を引き継ぐため、同じプロジェクトに参画して直接いろいろ引き取ることに。内容は、大手企業の子会社が提供するWebシステムのリニューアル。

システム内部は一切変更を加えず、外観だけを社内で既に作成が進んでいるリニューアル版に差し替えるだけとのこと。話を聞く限りでは、特に大きなリスクも課題もなく進められそうな雰囲気です。

しかし、それは完全に見込み違いでした……。

なんと! ド素人上司がプロジェクト管理しちゃいます!!

さて、あらゆるWebシステムは大まかにフロントエンド(ユーザー端末で表示されるページや実行されるスクリプトなど)とバックエンド(サーバで実行されるプログラムや接続されるデータベースなど)の二つにわけることができます。

ではWebシステムのリニューアルプロジェクトにおいて対象範囲が「バックエンドは既存流用」「デザインのみリニューアル」と定められた場合、バックエンドや現行フロントエンドの中身を一切無視して見た目だけの当てずっぽうで開発を進めたら、一体どんなことが起こるのでしょうか?

もうおわかりですね、動きません。動くはずがありません。

見た目だけ参考にした別物を勝手に嵌め込もうとしているのですから、当然です。駅の券売機で喩えると、機能を変えずにフロントパネルだけ改修するのに、ベースとなる機種の仕様を何ひとつ確認せず正面からの写真だけパシャリと撮って、それだけをもとに設計・開発を行うような無謀な行為です。

私の直属上司であるA課長は、本来すべき作業の範囲を正確に見極められず、単に思い付きの行き当たりばったりでプロジェクトを指揮していたのです。

リニューアルだからと要件定義も設計も全てすっ飛ばし、現行システムをちゃんと分析しないまま、見た目以外何ひとつ考慮せずにデザイン(ページ画面の見た目を決める作業)とコーディング(デザイン通りにページ画面の構成要素を組み立てる作業)が行われた結果、私達エンジニアが入った時には

  • バックエンドのコードと要素も名前も全て食い違っているフォーム

  • 操作の結果「想定外」(現行仕様通り)の表示崩れを起こすページ

  • 既存スクリプトおよびバックエンドと矛盾を来す新規スクリプト

という、極めて品質の低い中間成果物ができあがっていました。これは次の工程を担当するエンジニアへの宣戦布告、あるいは死刑宣告に他なりません。

特に、近年流行りのカスタムチェックボックス、カスタムラジオボタンは全滅でした。フロントエンド部のうち既存のスクリプトが参照および操作していた箇所の要素も名前も変えてしまったのですから、当然です。かといって元に戻したところで、今度は新規で作ったCSSカスケーディングスタイルシート:ページの要素の表示を専用の言語で記述するファイル)の適用が外れ、「動作は正しいけど見た目が壊れてる」という状態になります。八方塞がりです。

あまりの惨状に「現行システムを考慮していないコーディング素材で正常に動作させるのは難しい」と申し立てますが、知見のないA課長には馬耳東風です。とにかく「作っちゃった」ので、とにかくこれで完成させるようにとのお達しです。

もしもここで引き返していれば、コーディングのやり直しでコーダーを1〜2週間拘束すれば済んだと思います。しかしながら、最終的にF取締役とA課長の強硬な意向で、「作っちゃった」「お客さんに見せちゃった」コーディング素材を最優先して作業することになってしまいました。

その結果、無傷で温存するはずだったバックエンドや、何故か見落とされていた旧フロントエンドのスクリプトにガシガシと手が入っていきます。そもそも改修前の時点で作りも良くはなく、1箇所さわると3箇所、3箇所さわると30箇所……と、影響を受ける箇所が雪だるま式に膨れ上がっていきました。

「誰かのやらかしの尻拭い」ほど、後ろ向きで虚しい仕事もあったもんじゃないです。全責任を負っていながら「俺はシステムはわからない」と私に全てを押し付け逃げ続けるA課長に不信感を抱きながら、本来やらなくてもよかったはずの作業に延々と時間を費やします。

そうこうするうちに、先輩エンジニアは有給消化期間に突入しました。羨ましい。今や、この難工事を完成させるのは全て私ひとりの仕事です。

A課長とF取締役から、残業・休日出勤をしてでも何とか3月中に完成させるよう指示が出ます。素晴らしいアイディアですね。実現不可能という点を除いては。

それでも、必死にやり通しました。なんせ3月中にリリースだと言うんですから。おかげで3月の残業休出は、累計200時間にも及びました。

そして何と、その仕事は日の目を見ることなく流れてしまいます。

もうダメです… 検収が不可になりました…

テストもあらかた終えてようやく納品が近づいてきた3月も末になって、納品ができなくなったというエイプリルフールみたいな話を耳にしました。

詳しいことは聞いていませんが、納品にまつわるA課長の不手際によって、顧客から「検収不可により納品拒否」という業界に10年以上いて初めて聞くようなレアカードを食らい、見込み売上が全て吹き飛んだというのです。

炎上どころか灰燼へと帰したプロジェクトは、社内の別部署が引き取ることになりました。

とはいえもはや私には何の関係もなく、どんな結果であれようやく炎上クソPJから解放されたという喜びを噛み締め、あとは3月の残業200時間分が残業代に化けるのを心待ちにしていました。

この時点ではまだおめでたいことに、それが裏切られことになるとは知らなかったのです。

嘘だと言ってください! わたしの雇用形態!!

さて、5月の給与支給日にウッキウキで口座を覗いた私は、呆然と立ち尽くしていました。いつもの金額にわずかな額を乗せただけ。徹夜をした日の深夜残業の割増分の金額です。

出社後にA課長を問い詰めますが、どうも要領を得ません。そもそも私の直属の上司であるにもかかわらず、私の給与形態を知らないというのです。

あれ、そういえば私も知らないぞ……。

これは、本当に取り返しのつかない私の落ち度でした。後に上場企業に勤めて思い知りましたが、前職では入社前に労働条件通知書が交付されていなかったのです。これは明白な労働基準法15条違反です。

(労働条件の明示)

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法 | e-Gov法令検索

なのに、そのことの異常性に全く気付いていませんでした。

これを読んでいるみなさんも、くれぐれも労働条件通知書は自分で把握し、合意を取らせるようにしてください。そんなの知らないという方は、すぐにでも会社に問い合わせましょう。

F取締役は私をこの会社に入れた張本人なので知っているはずですが、何度尋ねても答えません。会社にはあらゆるチャンネルを通じて現在の給与形態を明らかにすること、また残業代を精査し正当な手当を支払うことを求め続けましたが、毎度のらりくらりとかわされ、延々と先延ばしになりました。

ようやく7月になって残業代についてのみ、「やっぱり払わない」という素晴らしくシンプルな回答を引き出しました。しかもその理由が「管理職だから払わない」という理解不能なもの。

私が……管理職……?

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

労働基準法 | e-Gov法令検索

何も説明された記憶も形跡もありません。とりあえず軽く調べて「管理監督者は残業代が出ないらしい」ということだけはわかり、釈然としないまでも一応は納得しました。

仮にそうだとしたら、F取締役は私が一方的に損をするのを知っていて残業や休日出勤を指示してきたことになります。その上、私が残業代が出ると勘違いしていることまで知っていたたわけです。最低なオッサンです。

なお、この時点では会社の行為が完全な労働基準法違反であるという認識には至りませんでした。慣れとは、本当に恐ろしいものです。

そして私が会社に不信感を募らせるのと時を同じくして、会社の雲行きもどんどん怪しくなっていきます。


次回予告 (第2話…4/27土曜 あさ7:00公開)


突如、〝上〟の思い付きで立ち上げられた新規事業。何の脈絡も背景もない無謀な挑戦に、疲弊する現場。祥太は3次請けエンジニアとして出向し、技術を獲得してくることに。

そんな中、祥太の出向を理解していないA課長が客先から地雷案件を安請け合いしてきて、出向中のはずの祥太に満額乗せてくる最悪の事態に。

祥太の1か月工数が2.0人月という意味不明な事態に陥り、さも当然のように残業と休日出勤を要求された祥太。二度も騙されるかと一度は突っぱねたものの、「報酬を出す」という甘い言葉にうっかり心が揺らいでしまい……

『41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟』、
「大ピンチ! 悪夢の200%稼働」

転職は、プリキュアだ。


サブタイトル元ネタ…『ふたりはプリキュア』(2004) 第1話

小見出し元ネタ…『ハートキャッチプリキュア!』(2010) 第32、15、45、47話

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