小説の書き方とプロセス①(書き始める前篇)
僕がどういう風に小説を書いているか紹介したいと思います。
きわめて個人的なやり方かもしれませんが、小説が立ち上がる過程を時系列に沿って追っていきたいと思います。
今回のnoteでは、書き始める前にどういう準備をしているかについて触れていきたいと思います。
小説を書く前は、色々と書きたい事をメモしていきます。書き溜めていき、醸成していく段階です。
この段階では、物語としては白紙の状態で、すべて単体のアイデアとして孤島のようにポツりポツりと浮かんでいる状態です。
物語として形を作っていこうとする心を一旦抑えて、思いついたアイデアを大事に、面白そうという感覚を大事に、書きたい事をメモしています。
書きたい事は主に三つに分けられます。
①設定
②テーマ
③シーン
これらについて思いついたことをLINEの一人用グループだったり、Google Keepにメモしています。家にいる時は手書きのノートに書くこともあります。
下記では①、②、③について触れていきます。
①設定
(A)人称の設定
(B)登場人物の設定
(C)舞台の設定
(D)分量の設定
などがあります。
(A)人称の設定~どの人称で書くか?~
1人称は、「僕は~」「私は~」という主人公目線で書いていく小説です。
思考や感情を含めた自意識を押し出したい小説の時に使います。
僕は内面的なもがきを書きたいことが多いので、1人称を選択することが多いです。
2人称は、主人公が「二人称の相手」に語りかけるスタイルの小説です。
語り手の主人公がメインに存在しつつも、語りかける相手(「君」「なあ、お前」「ねえ、あなた」などの二人称の対象)を世界への参照点として使います。
サリンジャー『ライ麦でつかまえて』が有名ですね。
主人公を描くと同時に二人称の相手を浮き上がらせたいときに使います。
3人称は、「新井翔太は~」のように客観的に書いていく小説です。
物語世界を客観的に進めていくのに便利です。ストーリー展開が大きいものや、何軸か並行したストーリーがあるときによく使います。
何人称で書くは、どういう雰囲気の物語を書きたいかと密接に関わっています。
前のめりな雰囲気なのか、真正面から語るのか、遠くから眺めるのか…、人称に思いを馳せることは物語の空気を想像することと不可分とも言えます。
こういう雰囲気の小説書きたいな~といったアイデアを溜めていくイメージです。
ちなみに今は一人称と三人称のを書いているので、次は二人称の小説を書きたいな~と楽しみを膨らませています。
(B)登場人物の設定~キャラクターデザイン~
こんなキャラを書きたいなあと妄想を膨らませます。
・こういうバックグランド、背景や過去を持った人物を書きたいな
・こういう信条やこだわりを持った人物を書きたいな
・こういう特徴やクセのある人物を書きたいな
などこういう登場人物がいたら面白いだろうなという特徴を書いていったりします。
執筆段階になってからは、思索の深煎り具合、思考の飛ばし具合によってキャラのバランスを取ることが多いかったりするのですが、小説を書き始める前段階なので、自由に創造できます。
(C)舞台の設定
舞台設定は、どの時代か、どこの場所かの二点です。
僕の場合は、基本的に”現代”を書きたいという志向なので、時代設定に関してアイデア出しすることは少ないです。
ただ、現代といっても、具体的に20xx年と想定する場合もあれば、広く現代という文脈で書くかなどのアイデアを考えることはあります。
なので年代というよりも、季節や何月を書きたいと思うことの方が多いです。
前回作である『夏が割れる』はタイトルに夏が入っているように、夏という季節を中心的に書きたいと思って書いています。
どこの場所かというところでは、ここを書きたいと心に響いたものがあれば、書き留めます。
実際に行った場所であれば、写真を撮って保存しておいて、見返すことが多いですね。
後で書くシーンにも通じるのですが、特定のこの場所を書きたいという時もあります。
この橋の下を書きたいなとか、この湖書きたいなとか、この建物書きたいなとか。
(D)分量の設定
これは、長編を書きたいな~、中編を書きたいな~、短編を書きたいな~
という気持ちです。
応募する賞によっても、原稿用紙200枚~250枚みたいな、分量の指定があるので、それによって考えることもあります。
ちなみに僕は、長編を書くのが一番好きです。想像を超えた物語が出来るからです。
今は長編を書いていますが、それが終わったら次は短編書こうかなと思ったりします。
②テーマ
こういうテーマで書きたいな~というのを思いついたらメモしています。
テーマが、「こういう○○を抱えた○○」みたいに文章的・説明的なものもあれば、「時間概念」「シニフィアン」のような思想的な場合もありますし、「就活」「音楽」「スポーツ」「桜」のような一般的な言葉をテーマにすることもあります。
例えば、前作の『夏が割れる』では、「境界」、「解体と統合」、「意味の生成」、「アイオーン時間」、「割れる」といった比較的思想的なものを主なテーマとしています。
他には『エイプリルフールの嘘』という作では、”「エイプリルフール」という主題の中に、「嘘」が混じった、どこにもいけないような悲哀”というテーマもあります。
生活していると、ふと、「ああこういうの書きたい!」「書いたら面白そうやな」といったキラメキが発せられるときがあるので、それを取り逃がさないようにキャッチすることが大事になってきます。
③シーン
小説を書く前の段階では、このシーンを思いつくことが大半です。
①の設定が文章量が多いですが、実際は①の設定よりも②のテーマや③のシーンについてアイデアが出てくることの方が多いです。
シーンというのは、小説の断片の原型といってもいいでしょう。
例えば、処女作では
”登場人物が街中で瓶の酒を飲み切り、空の瓶を地面に叩きつけて破裂音が響き渡る”
といったシーンがどうしても書きたくて入れました。
割と②のテーマと通じるところもあって、
例えば、「解体と統合」のテーマを書きたいし、同時に”相手の言葉の意味と音声が解体されて、周囲のざわめきと同化してしまう。やがて焦点を合わせるようにその人の発した言葉が言葉としての意味を持ち統合される”みたいなシーンも書きたいなとなったりします。
上の例だと「解体と統合」以外にも「(言語学における)シニフィアン」という概念が含まれてます。
以上のように、
小説を書く前の段階では主に、①設定、②テーマ、③シーンのアイデアを考えています。
もし、小説書く前の準備として何をすればいいか迷ったら参考になさってください。
次の記事では、小説を実際に書くときにどういうプロセスを踏んでいっているかを追っていきます!
ARIGATO,
Shota Arai