ジブリ映画が僕は浮気性なのではないかと不安な気持ちにさせる
今夜の金曜ロードショーは”千と千尋の神隠し”らしい。それを知った僕は、朝からわくわくが止まらない。
千と千尋の神隠しは映画館で観た。今ふと思い出したけれど、初めて一人で見た映画が千と千尋の神隠しだった。川崎の映画館で。
もう18年も前の映画だというのだから驚いてしまう。
20代で初めて映画館で見てから、その後も何度も何度も繰り返し見た。
DVDは買ったし、ハードディスクには以前放送された金曜ロードショーが録画してある。そしてそれは千と千尋の神隠しに限らず、他のジブリ映画作品でも同じだ。
そうやっていつでも好きなときに見られる映画であるはずなのに、金曜ロードショーで放送されるとなると、どうしてかわくわくしてしまう。
たくさんの人たちが今同じタイミングで同じものを見ているという一体感というか、ライブ感みたいなものがあって、多分僕はそれが好きなんだろう。
20代後半の頃なんかはラピュタやトトロが放送されるとなると、友達の家に集まってお酒を飲みながらわざわざ一緒に見たりもした。
ジブリ大好きっ子の僕は映画のセリフがほとんど頭に入っていて、質の悪いことにテレビを見ながらメイやサツキが言うよりも早くセリフを言ったりするもんだから、友達の子供からしたら煩わしい訪問者だったに違いない。
ところで皆さんの一番好きなジブリ映画はどの作品だろうか?
これは僕にとって究極の選択とも言える質問なのだが、一応ニュートラルな気持ちでいるときには”天空の城ラピュタ”だと答えている。あれは何年経っても色あせない素晴らしい映画だ。
敵も味方も魅力的なキャラクターばかり。特にドーラは最高!
(c) 1986 studio Ghibli
ストーリーは男の子が大好きな冒険要素も満載で、さらにパズーとシータのラブロマンスの要素もちょっぴりあって。
夜中にタイガーモス号の見張り台にいるパズーのところへシータがやってくるシーンがある。薄着で寒そうにしているシータをパズーが自分の外套の中に入れてあげるのだけれど、あのシーンなんて子供の頃はそうでもなかったのに、今見るとなんだかすごくドキドキしてしまう。
両親や祖父母を早くに亡くし、天涯孤独の身の上であったシータが初めて家族以外に心を開いたのがパズーだ。それは単純な恋心でもあると思うし、パズーのことをお兄ちゃんのように慕っているのもあるのだと思っている。
その感情が一番綺麗に描かれているのがあの見張り台のシーンだと思っていて、パズーがシータに
「入りな」
と外套の中に導き入れて、その中でシータが
「あったかい...」
と安心したように声を漏らのだけれど、このシーンはセックスを描く以上にエロティックだし、二人は背中合わせだけれど、正面から抱きしめるよりもずっと優しく僕の目にはうつる。
(c) 1986 studio Ghibli
というわけで、僕がラピュタを大好きなことに全く疑いは無いし、堂々と一番好きだと言っているのだけれど、これが別の作品を見ている瞬間は話が変わってくる。
例えばナウシカが王蟲の怒りを鎮めるシーンでは思わず「やっぱりナウシカは深いよなぁ...。ナウシカが一番いいかもな」とか言ってしまうし、キキがトンボを空中でキャッチした瞬間には「最高!!!魔女の宅急便がナンバーワンだ!!!」とか言ってしまうし、それはトトロだろうと紅の豚だろうと、ももののけ姫でも、千と千尋の神隠しでも全て一緒。
今見ている作品が一番好きだと思ってしまう自分がいて、そんな自分に気が付くたびに、もしかしたら僕は浮気性なのではないかと不安な気持ちになるのだ。
だから今夜も千と千尋の神隠しを見終わったあとには「良かったね。成長したね千尋。やっぱり千と千尋の神隠しが一番だよ」とか言いながら目頭を熱くしてる僕がいると思う。
ちなみに主題歌の”いつも何度でも”は木村弓さんの歌声のせいか、ハープの音色のせいかはわからないけれど、聞くたびにどうしても涙が溢れそうになるので、僕にとってはうかつな場所では聞けない名曲となっている。