あの頃、蝉は寝ぼけていた
幼い頃の夏休み。
東京を離れて祖父母が住む田舎へ行くと、町中から聞こえてくる大合唱にいつも驚かされた。
私の育った東京の端っこにある町は、大きな川が流れていたり、その川沿いにはそれなりに大きい公園があったりして、都会にしては確かに緑が多い場所だったけれど、夏になると聞こえてくる蝉の声のボリュームはやはり田舎のそれには全く敵わなかった。
どうして田舎の方が大きく聞こえるのかは、もちろん生息している数の違いが一番大きな理由であったと思うが、生息している種類の違いも大きかったのでは