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種類株式って何?
皆さん、種類株式って知っていますか?
そもそも株式に種類がある事自体を知らない人が多いと思います。
今回はその種類株式について、お話しさせて頂きます。
最近、スタートアップが資金調達をする際には、普通株式ではなく、種類株式が発行されると聞くことがあっても、そもそも種類株式が何か分からない方が殆どだと思います。
種類株式の中で一番有名なのは「黄金株」と言われる株式で、これは一株当たり100gの純金を使用した株券であり、、、と言うのは冗談で、(拒否権付株式)の事を言います。
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株式会社と言うのは基本的に、ごく解り易く言うと多数決で決めるというのが原則ですが、この「黄金株」には1株だけでも、他の全株主が行使した議決権を拒否できる権利を持っています。
「株主平等の原則」や「1株1議決権の原則」を害する側面があり、株式会社の原理原則に合わない非常に特殊な株式であり、東京証券取引所では「黄金株」を発行している会社は上場できない事になってます。しかし、何事にも例外があり、東証に上場している会社で唯一、黄金株を発行している会社があります。さあ、それは何という会社でしょう!
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答えは、【株式会社INPEX】(旧国際石油開発帝石株式会社)です。
資本金2,908億983万5千円という巨大企業で、東証Pに上場しており、8月15日の株価は2,241.5円と言う会社です。
この会社は旧社名を見たら何となく想像できるように1941年に帝国石油株式会社法により設立された半官半民の国策会社・帝国石油株式会社と、1966年に設立された国際石油開発株式会社が2008年に完全統合を行い発足した企業です。
株式会社INPEXの全ての株式を海外企業に買収されてしまうと、国内でのエネルギーの安定供給が不可能になってしまう恐れがあります。統合前から国策企業(※)ということもあり、政府(正確には経済産業大臣)が黄金株を保有し公共性の高い事業を運営しているのです。
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黄金株には定款で色々な拒否権を定める事ができるのですが、INPEXの黄金株には以下の6つの拒否権が与えられています。
①取締役の選任・解任
②重要な資産の処分など
③定款変更
④合併・株式交換・株式移転
⑤資本の額の減少
⑥会社の解散
多分日本で一番潰れる可能性の低い株式会社ではないでしょうか!
超一流会社ですがこんな会社で働きたいか、と問われればそれは別の問題ですね。
しかし、上場を予定していない、中小企業では会社法108条(異なる種類の株式)に基づき、色々な種類の株式を発行する事が可能となっています。前述の黄金株(拒否権付株式)もその一つであり、何についての拒否権を付与するのかも定款で定めれば、上記INPEXのように6つでは無く、①だけとか③だけとかの設計が可能です。
種類株式を発行するには、定款に記載しなければなりませんが、逆に言えば定款に記載さえしていれば、発行会社の自由に出来るとも言えます。
そこで、今回は、種類株式とは何かということや、種類株式を発行する場合の定款への記載例をわかりやすく解説していきます。
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種類株式とは
「種類株式」とは、特殊な権利が一切設定されていない株式(=普通株式)とは異なる権利内容が設定された株式のことをいいます。
たとえば、普通株式では認められている権利を制限したり、普通株式に優先した権利をつけたりした株式は、種類株式となります。
法律上、発行が認められている種類株式は、以下のように9つのタイプにわかれています。
譲渡制限株式
⇒ これは有名ですよね、と言うより中小企業のほとんどの株式がこれにあたります。剰余金の配当
残余財産の分配
議決権制限株式
取得請求権付株式
取得条項付株式
全部取得条項付株式
拒否権付株式
役員選任付株式
種類株式は、剰余金の配当については普通株式をもつ株主に優先させるけど、議決権については無しにする、といったように、これらのタイプを組み合わせて発行されます。
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株式会社がこれらの種類株式を発行する場合には、「定款」に、取り扱う株式の権利内容やどれだけの数の株式を発行するかといったことをあらかじめ書かなければいけないことになっています。
一般的にはその権利の違いにより、普通株式、A種株式、B種株式とか記載されている事が多いです。
「定款」とは、個々の会社が自ら定めた自社の基本的なルールのことで、会社の目的や株式、株主総会、決算などといった事項について定めたものです。その会社の憲法ですね。
もっとも、種類株式を発行する際に、定款にあらかじめ書かなければいけないといっても、具体的な内容が決められないこともありますよね。
それでは、これら9つのタイプの種類株式について、それぞれどういった内容の株式なのか、発行する場合には定款にどのような内容を記載すべきなのか、その記載例を以降の項目で説明していきます。
1 譲渡制限株式
(1)譲渡制限株式とは
「譲渡制限株式」とは、譲渡された株式を取得して株主となるために、会社から「いいよ!」と承認をもらわなければいけないない株式のことをいいます。
「いいよ!」と社内のどこが承認するについては、原則として取締役会がある会社は取締役会、取締役会がない会社は株主総会、となっています。
もっとも、定款にあらかじめ定めておくことで、どこが承認するかを好きなように設定できます。
2 剰余金の配当
(1)剰余金の配当とは
「剰余金の配当」とは、会社が生み出した利益(=剰余金)を、株主に分けることをいいます。
株式会社は、株主が出資したお金で成り立っていますので、株主に対して、株式会社がその事業で生み出した利益を配当するのが一般的です。配当のない会社になんて普通出資しないですよね。
剰余金の配当において種類株式を発行する場合、
普通株式よりも有利な配当(優先配当)を受けられるパターン
普通株式よりも少ない配当しか得られないパターン
配当が一切ないパターン
がありますが、一般的に発行されることが多いのは、優先配当のパターンです。
優先配当を受けられる株主(=優先株主)が普通株式をもつ株主(=普通株主)よりも先に配当を受けたあと、さらに配当するお金が残っていれば、普通株式しか持たない普通株主への残額の配当が行われます。
「参加型」とは、この普通株主への残額の配当の際に、優先株主に追加で配当を受けることができる権利を持たせることをいい、「非参加型」とは、追加で配当を受ける権利を持たせないことをいいます。
それでは、剰余金配当についての種類株式の定款への記載例をみていきましょう。
なお、本解説では、種類株式を「A種株式」、A種株式とは別の種類株式を「B種株式」、A種株式を持っている株主のことを「A種株主」としています。
3 残余財産の分配
(1)残余財産の分配とは
「残余財産の分配」とは、会社経営が立ち行かなくなり解散・清算する場合に、負債をすべて返し終わった後に会社にのこった財産(=残余財産)を株主にわけることをいいます。なぜこのような内容の株式があるかというと、会社の経営がうまくいかずに倒産したり、合併により会社がなくなってしまう場合に、残余財産を普通株主よりも先に分配してもらうことで、株主が少しでも投資した額を回収できるようにするためです。
なお、負債をすべて返し終わって、会社に財産が残っていなかった場合は、株主にわける財産はないため、残余財産の分配は行われません。
残余財産の分配において種類株式を発行する場合、
普通株式よりも有利な分配(優先分配)を受けられるパターン
普通株式よりも少ない分配しか得られないパターン
分配が一切ないパターン
といった3つが考えられます。
このうち、一番発行されているのは、優先分配をおこなうパターンの種類株式です。なぜなら、優先配当と同じように、株価が高くなり、少ない株式発行で、多くの出資をしてもらえるためです。
4 議決権制限株式
(1)議決権制限株式とは
「議決権」とは、株主総会において、会社の運営の仕方やお金の使い方などの議題に対し、株主が賛成・反対などの票をいれることができる権利のことをいいます。
そして、「議決権制限株式」とは、ある事項については票を入れられないといったように議決権を限定する内容の株式のことをいいます。
この議決権制限株式は、経営に関与する気がなく、配当や株価の値上がりにしか興味がない株主と、経営に口出しをされたくない会社側の、双方の要望を満たす株式だといえます。そのため、議決権制限株式は、優先配当と組み合わせることが多いです。
議決権制限株式を発行する場合、
一部の議決権を制限するパターン
議決権を全く与えないパターン
の2つが考えられます。
会社は、どうしてもある議題だけは株主に関わってほしくないといった場合に、一部の議決権を制限することが考えられます。また、株主に一切口出しされずに自由に経営したいという場合には、議決権を全く与えないパターンの株式を発行することが考えられます。
5 取得請求権付株式
(1)取得請求権付株式とは
「取得請求権付株式」とは、株主が、会社に対して「持っている株式を買い取ってくれ!」と要求することができる株式のことをいいます。
会社は、株主に対して、株式を買い取る対価として、お金だけでなく、普通株式、社債、新株予約権、他のタイプの種類株式などを対価として支払うことができます。
この取得請求権付株式があることで、会社の経営にふさわしくない者に株式がわたらないよう譲渡制限をかけた場合にも、会社が株式の買い取りを保障することになります。そのため、株式を売りたくても売れないという事態がおきないことから、株主の投資を促す効果があります。
取得請求権付株式を発行する場合は、
対価がお金であるパターン
対価がお金以外であるパターンの2つがあります。
対価としてよく使われるものはお金と普通株式です。
対価としてお金が選ばれるのは、たとえば、投資家による会社(スタートアップなど)への投資において、上場前に投資家がEXITを図る場合です。
会社が株式上場をする目標時期を定め、その時期を過ぎた場合には、取得請求を行使することができるようにすることで、上場前であっても、投資家は、リターンを得ることができる場合があります。
一方、対価として普通株式が選ばれるのは、たとえば、会社が上場準備をスムーズに行いたい場合です。
上場準備として種類株式は普通株式に転換されることが一般的です。この際、取得請求権を株主が行使して普通株式に転換を行えば、会社側から働きかけて株主のもつ種類株式を普通株式へ転換させる場合(後に説明する取得条項付株式や全部取得条項付株式)に比べ、一部処理の手間と時間を省くことができるため、上場準備をスムーズに行うことができるようになります。
6 取得条項付株式
(1)取得条項付株式とは
「取得条項付株式」とは、一定の事由が発生した場合に、会社が強制的に株式を取得することができる株式のことをいいます。
取得請求権付株式と似ていますが、請求できるのが、会社という点で取得条項付株式とは異なります。また、「強制的」とあるように、株主の同意は不要です。もっとも、同意は不要だとしても、会社は、株主に対価を支払う必要があります。対価としては金銭や、金銭以外のものを渡さなければなりません。金銭以外のものとして、普通株式、社債、新株予約権、他のタイプの種類株式などが挙げられます。
取得条項付株式を発行することで、会社が意図していない人へ株式が渡ることを防ぐことができます。
7 全部取得条項付株式
(1)全部取得条項付株式とは
「全部取得条項付株式」とは、株主総会の特別決議によって、会社が株主のもっている株式すべてを取得することができる決まりがある株式のことをいいます。
会社は、株主からすべての株式を取得する対価として、お金や株式といったお金以外のものを株主に与えます。もっとも、対価をなしと設定することも可能です。
全部取得条項付株式は、株主全員の同意がなくとも、株主総会の特別決議さえあれば、全株式の取得を実行できるため、会社の経営権を取得できていない少数株主を排除するための手段として活用されることが多いです。
8 拒否権付株式
(1)拒否権付株式とは
「拒否権付株式」とは、株主総会または取締役会において決議すべき一定の事項を否決することができる株式のことをいいます。
拒否権付株式を発行した場合、一定の事項に関して株主総会または取締役会における決議に加えて、拒否権付株式をもつ株主による種類株主総会の決議の2つが必要になるため、種類株主総会で反対することで、否決の流れに持っていくことができます。
拒否権付株式は、敵対的な買収を予防することに役立ちます。
たとえば、一部の友好な株主に拒否権付株式を与えることで、敵対的買収があっても種類株主総会の決議で否決することが可能になります。
9 役員選任付株式
(1)役員選任付株式とは
「役員選任付株式」とは、種類株主総会で取締役または監査役を選ぶことができるという内容の株式のことをいいます。
役員選任付株式を発行すると、特定の株主のみが選任に携わることになります。
たとえば、会社の経営者に1株だけ役員選任株式を発行しておけば、経営者の決定だけで好きな人を役員にすることができます。
まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。
「種類株式」とは、特殊な権利が一切設定されていない株式(=普通株式)とは異なる権利内容が設定された株式のことをいう。
種類株式のタイプは、①譲渡制限株式、②剰余金の配当、③残余財産の分配、④議決権制限株式、⑤取得請求権付株式、⑥取得条項付株式、⑦全部取得条項付株式、⑧拒否権付株式、⑨役員選任付株式の9種類がある。種類株式を発行するには、それぞれの種類株式ごとに、定款に書かなければいけないことが決まっている。
定款に書かなければいけないことのうち、具体的に書く必要はなく、大まかな内容だけをかけばいい事項(内容の要綱)もある。 (これってある意味何でもありって事ですね。)
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殆どの人は自分の勤める会社、いや経営する会社の定款ですら、しっかりと読んだ事どころか見た事も無い、何処にあるのかも判らないという人が殆どですが、創業者が賢い奴(ズルい奴)である場合、しっかりと見ておかねば何を書かれているか分かったものではありません。
一度、あなたの会社の定款をじっくり見てみましょう!
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