動詞と、動詞のようで動詞でないもの

動詞が大きな役割を占める英文法の分野として、「時制(tense)」「相(aspect)」「法(mood)」「態(voice)」があります。みなさんも、「現在進行形」「受動態」「仮定法」「現在完了進行形」などなど、これまでの英語学習のなかで、こうした考え方に、出会っているのではないでしょうか。

時制、相、法、態について、詳しくは別の機会に触れるとして、今回はそれに関連することとして「動詞と、動詞のようで動詞でないもの」について考えてみたいと思います。

「動詞」についてはみなさんよく理解していると思うので、説明はいらないでしょう。では、「動詞のようで動詞でないもの」とは何でしょうか。ここでは、「動詞から活用によって派生したけれども、それ自体はもう動詞ではないもの」という意味で使っています。"eat" を例にとって説明してみましょう。

eat(原形)
eat または eats(現在形)
ate(過去形)
eaten(過去分詞)
eating(現在分詞)
eat(原形不定詞)
to eat(to不定詞)

これらはすべて「動詞」でしょうか。「シンプル英文法」では、これからを「動詞」と「動詞のようで動詞でないもの」とに分類します。

動詞
eat(原
eat または eats(現在
ate(過去
動詞のようで動詞でないもの
eaten(過去分詞
eating(現在分詞
eat(原形不定詞
to eat(to不定詞)  

動詞に含まれるのが原形、現在形、過去形で、動詞のようで動詞でないものが過去分詞、現在分詞、それとto不定詞です。覚え方は簡単です。「〜形」となっているのが動詞で、「分詞」や「不定詞」と呼ばれているものが動詞ではないものです。「分」や「不定」なのですから、「動」でないことは、その名前が教えてくれているようなものです。原形と原形不定詞はまったく同じものですが、あえて分けています。命令文の動詞として使用されているのが原形(Eat this apple.)で、使役構文などに登場するのが原形不定詞(He made me eat an apple.)です。

さて、この「動詞」と「動詞のようで動詞でないもの」という分類は、いったい何に役立つのでしょうか。冒頭で触れた「時制(tense)」「相(aspect)」「法(mood)」「態(voice)」のうち、特に、相と態をシンプルに理解するのに役立ちます。また、"eat" とその派生語を用いて例を挙げましょう。

I eat an apple every day.(私は毎日リンゴをひとつ食べる:現在形)
I ate an apple yesterday.(私は昨日リンゴをひとつ食べた:過去形)
I am eating an apple.(私はいまリンゴを食べている:現在進行形)
I was eating an apple when the earthquake occurred.(地震が起きたとき、私はリンゴを食べていた:過去進行形)
I was eaten by an apple in my dream last night.(私は昨夜、夢のなかでリンゴに食われた:受動態過去)
I have eaten an apple.(私はリンゴをひとつ食べたところだ:現在完了形)
I have been eating an apple since this morning.(私は今朝からずっとひとつのリンゴをかじり続けている:現在完了進行形)
I had eaten an apple before you came.(あなたが来る前にリンゴをひとつ食べ終えていた:過去完了形)
I will have eaten an apple by this time tomorrow.(明日のいまごろには、私はもうリンゴをひとつ食べてしまっているだろう:will+現在完了形)

意味のおかしな例文も紛れ込んでいますが、英文法的にはどれも正しい文です。文のなかで動詞が時制、相、態に関するさまざまなルールの適用を受けた結果が現れています。シンプル英文法は個別的なルールから一般法則を導き出すことを目指します。今回のテーマは、「動詞と動詞のようで動詞でないもの」でした。動詞を太字にしてみましょう。

eat an apple every day.(私は毎日リンゴをひとつ食べる:現在形)
ate an apple yesterday.(私は昨日リンゴをひとつ食べた:過去形)
am eating an apple.(私はいまリンゴを食べている:現在進行形)
was eating an apple when the earthquake occurred.(地震が起きたとき、私はリンゴを食べていた:過去進行形)
was eaten by an apple in my dream last night.(私は昨夜、夢のなかでリンゴに食われた:受動態過去)
have eaten an apple.(私はリンゴをひとつ食べたところだ:現在完了形)
have been eating an apple since this morning.(私は今朝からずっとひとつのリンゴをかじり続けている:現在完了進行形)
had eaten an apple before you came.(あなたが来る前にリンゴをひとつ食べ終えていた:過去完了形)  

ここから一般法則が導けます。どんなに複雑な時制、相、態の組み合わせであろうと、「動詞はひとつ」です。この法則は、次のように言い方を変えることもできます。「進行形、完了形、受動態の場合、eat が動詞から動詞でない現在分詞(eating)や過去分詞(eaten)に変わってしまうため、代わりに動詞がひとつ必要になる。そのときに借りられてくる動詞がbeとhaveである」。

私は、「進行形」を「be+現在分詞」と教えますが、そのときに「現在分詞」はもはや「動詞ではない」ことも強調します。そうすることで、「あれ? 動詞がなくなっちゃった… 何か動詞を借りてこなくちゃ…」という感覚を促し、be動詞を忘れることを防ぐことが狙いです。受動態や完了形についてもほぼ同じことが言えます。

この話は、時制、相、態だけでなく、to不定詞、動名詞、現在分詞、過去分詞を形容詞的に用いる用法、知覚動詞の構文、使役動詞の構文など、かなり広い分野に及ぶのですが、今回はここで終えておきましょう。

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