しょうさま@損保アンダーライター

現外資系損保アンダーライター 元Apple Inc.勤務 USCPA CISM 経営に…

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現外資系損保アンダーライター 元Apple Inc.勤務 USCPA CISM 経営に纏わるリスク、保険の引受に関する情報やニュース、周辺知識の記事を書いていきます。

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プラスチックに関する企業等の責任とリスクマネジメント:プラスチックの危険は増すばかり

現在、海には推定3,000万トン、河川には1億900万トンのプラスチックの廃棄物があるとされている。プラスチックの生産と使用にはどのようなリスクがあるのか。プラスチックの生産と使用に伴うリスクとは何か。どうすれば企業はそのリスクを減らすことができるのだろうか。 当記事ではプラスチックに関する問題の現状ならびに関連する企業等の経営リスク、また、大手・上場企業含む200社近くの役員等賠償責任保険の引受を行ってきた私の見解を述べる。是非一読いただきたい。 プラスチックの現状遠い

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    • 経営責任のリスク管理(保険)

      過去数年間で経営保険(Management Liability)分野には数多くの保険会社が参入し、競争の激化により保険料が大幅に下がっています。しかし、この分野には規制や技術関連のリスクが増大しており、価格以上に補償範囲の質や保険会社の信頼性が重要となっています。 特に取締役および役員等賠償責任保険(D&O保険)、法人・個人雇用慣行賠償責任保険(EPL保険)、また、日本では馴染みが然程無いと思いますが年金運用等における受託者責任保険(Fiduciary Liability保

      • サイバー侵害に纏わる訴訟件数が増加している課題に直面して

        サイバー侵害は米国の原告団にとって最新の的となっている。 ここ数年、米国ではサイバー侵害やその他のサイバー事件に対する訴訟件数が大幅に増加している。より多くの個人情報がインターネット上に保存されるようになるにつれ、巧妙化するサイバー犯罪や単なる人為的ミスの可能性も高まっている。 そして、情報漏洩が発生すると、多くの場合、同時に多数の消費者に影響が及ぶ。 データ漏洩が増加する中、訴訟の影響を受けている企業数は2019年の79社から2023年には357社になり、350%以上増

        • 保険引受(アンダーライティング)におけるAIは成長するが、人間に取って代わることはない

          進化する技術は、リスク評価における人間の判断を補強するだろう。 保険について最も古くから繰り返し言われている言葉のひとつに、「保険は人によるビジネスだ」というものがある。人工知能(AI)の出現と急速な発展により、このことわざが今後も真実であり続けるかどうか疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、AIやその他のテクノロジーが、特に保険引受においてますます影響力のある役割を果たすようになるだろう。 大量のデータを選別する能力を持つAIは、リスクの評価、分析、プライシングといっ

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        プラスチックに関する企業等の責任とリスクマネジメント:プラスチックの危険は増すばかり

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          生体情報関連の訴訟は企業等にとって重大な新リスクである

          要旨:生体情報関連の訴訟は、特に米国で関連事業を行っている企業や同国の賠償保険を補償する保険会社が現在考慮しなければならない重大な新リスクである。 米国各州では、企業が許可なく指紋や顔認証等のデータを収集・流布することを防ぐため、生体情報に関する法律を制定する動きが加速している。 イリノイ州は生体情報に関連した最初の法律、生体情報プライバシー法(BIPA)を2008年に制定した。ニューヨーク州、マサチューセッツ州、メリーランド州を含む9つの州も最近、生体情報の法律を導入し

          生体情報関連の訴訟は企業等にとって重大な新リスクである

          M&Aにおける隠れた保険のリスク

          M&Aは、成長を加速させ市場シェアを拡大する機会を求める大きな影響力のあるビジネス戦略であり、近年ではかつてないほどの短期間で行われるため、全ての関係者は適切なデューデリジェンスの実施を急がされている。このような状況下で、現在契約しているD&O保険やその他賠償責任保険等が無効とならないようにするため、参考となる記事を掲載した。 以下は、考慮すべき潜在的な隠れたM&A保険のリスクと責任である。 売り手企業の責任を引き受ける強引なM&Aプロセスは、売り手企業の不当な行為により

          M&Aにおける隠れた保険のリスク

          初めて有料記事を掲載いたしました。 参考にしているデータやニュースは無料で読めるものですが、米国の記事から参考を探したり、私の経験を活かした見解を述べたりと労力を使ったために有料にしました。 是非一読いただけますと幸いです。 https://note.com/shosama0603/n/n9e77acbfa4d6

          初めて有料記事を掲載いたしました。 参考にしているデータやニュースは無料で読めるものですが、米国の記事から参考を探したり、私の経験を活かした見解を述べたりと労力を使ったために有料にしました。 是非一読いただけますと幸いです。 https://note.com/shosama0603/n/n9e77acbfa4d6

          中小企業の役員個人やその相続人のリスク

           株主代表訴訟や第三者訴訟、これら役員個人に対しての損害賠償請求は株主やその他利害関係者の多い上場企業や大手企業ならではのイメージをされている方も少なくないだろう。しかし、役員等賠償責任保険(通称D&O保険)の引受ならびに開発をしてきた私が実際に関わった役員個人への損害賠償請求は意外にも中小企業が多数である。本記事は中小企業の役員が何故、そして、誰から訴訟を提起されてしまうのかの概要をまとめている。 株主代表訴訟  広範囲の親族(姻族等)が株主等に含まれている場合は、一定

          中小企業の役員個人やその相続人のリスク

          役員賠償事故から見る、中小企業の役員が直面する脅威の増大と中小企業のD&O保険の必要性[要約]

           保険業界のデータプロバイダーであるAdvisenが発表した調査によると、過去10年間のD&O保険金請求のうち、中小企業が占める割合は70%であった。  この間、保険金請求件数は大企業の対前年200%増に対し、中小企業は対前年300%増という驚異的な伸びを示し、企業規模を問わず役員等賠償責任保険(D&O保険)の重要性が高まっていることが浮き彫りになった。 主なリスクシナリオ D&O保険は、様々な法的措置や損害賠償請求から企業やその役員を保護する上で重要な役割を果たしている

          役員賠償事故から見る、中小企業の役員が直面する脅威の増大と中小企業のD&O保険の必要性[要約]

          AIとサイバー脅威の状況:どれほど懸念すべきか?

          人工知能が経済のほぼ全ての分野に破壊的な影響を与えそうな中、日和見主義的なサイバー犯罪者たちは、人工知能を悪意を持って利用する方法を試行錯誤している。2023年7月には、悪意のあるコンテンツを生成することに特化した大規模言語モデル(LLM)がダークウェブで販売されているという様々な報告があった。当記事では、サイバー保険の引受にて本日時点で126社のサイバーリスク分析をした私が、サイバー犯罪者がAIを利用する理由と方法について考察し、AIが脅威の状況をどのように変えるかをまとめ

          AIとサイバー脅威の状況:どれほど懸念すべきか?