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地獄の入り口

「あなたは地獄に落ちました」という声が聞こえた。
私は目を開けて、周りを見回した。どこにも火や悪魔の姿はなかった。ただ、白い壁と天井のある小さな部屋に、一台のパソコンが置かれているだけだった。
「これが地獄なの?」と私は声に出して言った。
「はい、これが地獄です」とパソコンから返事が返ってきた。「あなたはこのパソコンでインターネットを自由に使うことができます。ただし、一つだけ条件があります」
「条件?何だよ、それ」
「あなたはこのパソコンで検索したり閲覧したりしたすべての内容を、この部屋にいる他の人たちに公開しなければなりません」
「他の人たち?どこにいるんだよ」
「この部屋にはあなた以外にも99人の人間がいます。彼らも同じようにパソコンでインターネットを使っています。そして、彼らもあなたと同じ条件を守らなければなりません」
「それで何が問題なんだ?別に恥ずかしいことを検索したりしなければいいだけだろ」
「そう思うかもしれませんが、あなたはまだこの地獄の恐ろしさを理解していません。あなたはこの部屋から出ることができません。あなたはこの部屋で一生を過ごさなければなりません。そして、あなたはこの部屋の他の人たちと一切会話することができません。あなたは彼らの顔も名前も知りません。あなたは彼らの存在を感じることしかできません」
「それがどうした?インターネットがあれば十分だよ」
「本当にそう思いますか?では、あなたは今からインターネットを使ってみてください。そして、あなたがどんな気持ちになるかを感じてください」
私はパソコンの画面を見た。ホームページはビングだった。私は好きなキーワードを入力して検索ボタンを押した。
すると、画面には検索結果だけでなく、他の人たちが検索したり閲覧したりした内容も表示された。私の目に飛び込んできたのは、暴力的な画像や動画、卑猥な言葉やサイト、偏見や憎悪に満ちたコメントや記事だった。
私は思わず目を背けた。これが地獄かと思った。私は自分の興味や好奇心を満たすこともできず、他人の欲望や苦しみに晒されることしかできないのかと思った。
私はパソコンから離れようとした。しかし、その時、パソコンからまた声が聞こえた。
「あなたは逃げることができません。あなたはこのパソコンから目を離すことができません。あなたはこのパソコンでインターネットを使い続けることしかできません。これが地獄です。これがあなたの罰です」
私は絶望した。私は叫んだ。
「助けてくれ!誰か助けてくれ!」
しかし、誰も私の声に答えなかった。私はこの部屋で一人ぼっちだった。私はこの地獄で永遠に苦しむことになった。

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