「するべきではない」を伝えるときに気をつけていること
依頼者の不利益を未然に防ぐための工夫
弁護士として日々アドバイスしていますが、「するべきではない」というアドバイスをするときはすごく神経を使います。依頼者の“したい“を否定しなければならないからです。
一歩間違えれば、「あの先生は"できない"ばかり言う。ビジネスセンスのない弁護士だ。」なんて悪評を立てられかねません。
でも、弁護士だって意地悪で止めてるのではありません。依頼者のためを思って止めているのです。依頼者に不利益だと気づいたのであれば、それがたとえ依頼者がどうしてもやりたいことであっても、適切に止めることが出来なければ弁護士失格なのです。
では、どう伝えるのが良いか。色んな方法がありますが、今回は「たしかに」+「かえって」+代替案という方法を紹介したいと思います。
これは、「たしかに××という方法も考えられますが、そうすると、△△となって、かえって不利益となることが考えられます。むしろ、〇〇という方法をとれば、同じ内容を実現できますし、△△というリスクも低くなりますよ。」という伝え方です。
なぜ、代替案を直接示さずに「たしかに」+「かえって」なんてプロセスを踏むかというと、依頼者は自ら考えた案に愛着を持っていることが多いからです。いきなり「〇〇という方法の方が良いですよ」と伝えてしまうと、依頼者の愛着のある案を否定することになり、「いや、××でも良いじゃないか」という感情的反応を引き出してしまうおそれがあるのです。一度こういう反応を引き出してしまうと、一貫性の原理が働いて、××案で決まってしまうことがままあります。
一度「たしかに」で依頼者の案を受容し、フラットな状態にしてから、「かえって」で不利益を提示して、依頼者に前のめりな状態から少し体を起こしてもらい、代替案を提示して、依頼者の利益になる方へ誘導する。こうすることで、依頼者の抵抗少なく、「するべきではない」を伝えることができます。
うまい代替案がみつからないときは、「たしかに××という方法も考えられますが、そうすると、△△となって、かえって不利益となることが考えられます。ですので、今回の状況では××という方法はおすすめできません。」などとすることが考えられます。これでも幾分かは抵抗が低くなります。「今回の状況では」などとつけると、依頼者の案は全く悪いのではなく、今回の状況だから適切でなかったといったニュアンスも出てより和らぐと思います。
結語
いかがでしたでしょうか、「たしかに」+「かえって」+代替案。汎用性のある方法だと思うので、是非試してみてくださいね。
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