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YouTuberの「リアクション動画」を仕事に取り入れたら、会議の暗黙知が言語化された。
今年は、新人のトレーナーを担当しています。毎年思いますが、今の若い人は私が新人時代だった時とは比べ物にならないくらい優秀です。
私が担当している新人も、まだ数週間しか一緒に働いていませんが、議事録は早くて正確だし、質問のためのオンライン面談を向こうから設定してくれるし、とても助かっています。
一方で、新人の方は不安でいっぱいかもしれません。
なにせ、今年の新人は入社即リモート世代。
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先輩と一緒にオンラインのミーティングに出ても、なかなか発言もできません。ミーティングが終わった瞬間にブチっと切れて、わざわざ質問をするのも気後れしてしまいます。
これまでは、商談からの帰りの電車などで色々質問できたかもしれませんが、リモートワークだとそのような機会もありません。「先輩の背中をみながら学ぶ」という、従来のOJTスタイルが通用しなくなっています。
新人や中途社員の教育やコミュニケーションは、テレワークならではのハードルのだといえるでしょう。
そこで今回は、私が最近やってみた、動画を活用したコミュニケーション手法について紹介したいと思います。
リモートで伝えにくい、仕事の「行間を読む力」
私も含めて、今年の新人教育係は、色々な工夫が求められています。
以下の記事から、その様子の一部を引用してみます。
(前略)前原さんの上司、岸本真史さん(36)は「画面共有の機能で一緒に資料を見ながら指導したり、フィードバックの場を増やしたりすることで、遠隔でも新人に知識を身につけさせることは可能だ」と話す。
一方、相手の心理を推し量るといった「行間を読む力」はやはり教えにくい。録音した実際の商談を聞かせるなどの工夫もしているものの、岸本さんは「全てオンラインでは限界がある」と認める。
私も、フィードバックの時間を確保するために、オンライン会議終了後に少し残ってもらって、質問に答える時間を取るようにしています。
しかし、会議の終了時間が業務終了時間とかぶったり(新人は基本的に残業させない)、新人が研修などで出席できない会議などもあり、なかなかうまくいきません。
そんなある日、新人からこんな依頼がありました。
「岡田さん、次のこの会議ですが、私が出席できないので録画しておいてもらえますか?」
おおぅ。そうだね、録画をしたら後から見られるね。ということで、オンライン会議を録画しておいて、新人にデータで送りました。
会議動画を一緒に見る「リアクション動画」スタイル
次の日。
新人とのオンライン会議を設定しました。送った動画を見て、感想や質問があればそれに答えようと思ったのです。
その時、ハッとひらめきました。一緒に会議の動画を見ながら、ポイント解説をしていったらいいのではないか。
参考にしたのは、Youtubeで最近よく見る「リアクション動画」というものです。
代表的なのは、ボイストレーナーやダンストレーナーなど教えるプロのYoutuberが、実際の歌手が歌ったりダンスをしている動画を見ながら、いかにすごいスキルが使われているかを解説するものです。
プロならではの解説で、作品の楽しみ方が広がると、最近人気のジャンルです。「リアクション動画」で検索するとたくさん出てきますので、ぜひ見てみてください。
同様に、私が会議の動画を流しながら、途中で止めて、大事なポイントを新人に解説します。
「今、A部長がこういう発言をしたのは、実はこんな背景があるんだよ」
「さっき、私があえて質問した意図は、Bさんの意見を引き出すためだよ」
このように、動画を見るだけではわからない会議の「行間」を言語化していきました。
「リアクション動画」式トレーニング3つの効果
このリアクション動画式トレーニング、新人はもちろんのこと、私自身も色々な学びがありました。
特に印象に残ったのが、以下の3点です。
1.暗黙知の言語化ができる
2.新人が質問を用意できる
3.自分の教育スタイルがわかる
それぞれ、簡単に説明していきます。
1.暗黙知の言語化ができる
同じ会社で長く働いていると、会議は「暗黙知」で進んでいきます。しかし、こうやって動画を見ながら新人に言語化することで、「形式知」に変えることができます。
形式知にすることで、知恵を伝達しやすくなったり、「なんでこうしていたんだっけ?」と振り返る良い機会になります。
先ほどの新聞記事にもあるような、もっとも伝えにくい「行間」を伝えるのに向いていると感じました。
2.新人が質問を用意できる
事前に動画を(たぶん1.5倍速ぐらいで)見ているので、質問をあらかじめ用意することができます。この時も、新人が最初から3つ4つ質問を用意してくれたので、とてもスムーズでした。
人材開発の専門家である立教大学・中原淳教授がブログの中で、『これからのOJTは「背中を見て盗んで学ぶ」と「デジタルで前もって学ぶ」のハイブリッドラーニングになるのでは』と述べていますが、今回の会議動画を使ったラーニングは「デジタルで前もって学ぶ」に近いスタイルかもしれません。
会議の中には、「新人は発言の機会はほぼ無いが、情報共有(とお勉強)のために出席している」ような会議も少なくありません。
そのような会議には出席させずに、空いた時間に素早く録画を見てもらった上で、トレーナーと1対1でしっかり話せる時間を作った方が、教育効果は高いのかもしれません。
3.自分の教育スタイルがわかる
これは意外な効果だったのですが、会議のポイントを新人に説明する中で、「あ、自分は教育担当として、こういうところを意識しているんだな」と、自分の教育スタイルに自分で気づいた側面がありました。
具体的に、何に気がついたかと言えば、自分は新人に対して「木を見ず、森を見よ」を意識している、ということです。新人には、個々の発言よりも、その背景にある仕事全体の流れを掴んで欲しいんだなと、自分で話していながら気づきました(この点については、また別の記事で書いてみたいと思います)。
いずれにせよ、自分の動画(を見るのはいつも気持ち悪いですが)を見ることで、自分のスタイルとか癖とかが見えてきます。自分自身を振り返る良い機会になりました。
教育係こそ学ばなければいけない
さて。
肝心の「新人の理解は深まったのか?」については、その成果を判断するのはまだ早いかなと思います。今後の新人の発言や行動の変化次第。
私としては、より効果的な伝え方を研究すべく、Youtuberの「リアクション動画」を改めて研究してみたいと思います。
これまでは楽しみとしてしか見ていませんでしたが、これからは「プロの暗黙知を形式知化するためのヒント」として、分析してみたいと思います。
今年のOJTでもっとも学びが大きいのは、新人ではなく、私のような「教育係」でしょう。従来の背中を見せるスタイルが通用しない今、私たち教育係自身が新しい手法を開発していかなければなりません。
これまでのやり方を一度忘れて(アンラーニング)、会社の外(Youtuberなど)にもヒントを求めながら、試行錯誤してみたいと思います。
※記事の元ネタを、Twitterで投稿しています。
新人が都合で出られなかった社内のオンラインミーティングを録画しておいて、二人で見ながら解説するという、令和な感じのOJTを行った。
— 岡田 庄生 / HAKUHODO Inc. (@s_okada) September 9, 2020
「ここで営業部長が発言した理由はね…」など、無意識なことを言語化できて、自分的にも学びがあった。
まるでリアクション動画みたいだなぁ、と思った。
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![岡田 庄生 | ブランド戦略コンサルタント](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/85541981/profile_be9dc1223c6eedc81dcbe05439f8b4cd.jpg?width=600&crop=1:1,smart)