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読みやすい文章を早く書くには、スタートダッシュが9割

日経COMEMOKOLに就任して半年が経ちました。毎月2本、約3,000文字の記事を書き続けています。徐々にリズムも掴めてきて、毎月楽しく書かせていただいています。ありがとうございます。

また、少しずつですが、「note読んでます」と言われることも増えました。先日も、ある大学の授業にゲスト講師として登壇した際に、学生の方から「先生のnoteは読みやすい」とお褒めの言葉をいただきました。ありがとうございます。

1歩進んで1歩下がる

その学生さんに、こんな質問ももらいました。「長い文章を書くにはどんなコツがあるんですか?」。今年はほぼ全ての授業がオンラインになっていて、学期末の課題もテストではなくレポートが多いそうです。長い文章を書く機会が急に増えた学生さんならではの質問でした。

一方でまだ慣れないリポート課題に追われ、「高校までの勉強とは全然違う。そもそもどう勉強したらいいかわからない」という不安もつきまとう。

学生ならずとも、長い文章を苦手にしている方は多いのではないでしょうか。私も、いまでこそ3,000文字程度であれば、書く内容さえ決まっていれば2〜3時間程度で完成することができますが、昔は次のような、うだつのあがらない執筆スタイルで、時間も10倍以上かかっていました。

よし書くぞ!とパソコンを立ち上げて、5〜6行がんばって書いてみるものの、いまいちしっくりこない。導入部分は大事だから、文章には凝りたい。書いては消し、書いては消しを繰り返していると、あっという間に30分たっている。気がつけばスマホを触っている。あ、会社のメールが来た。これは返信しておかなければ。今日は5〜6行書けたし、続きはまた明日にしよう。

そして、翌日パソコンを立ち上げると、こう思います。

昨日書いた原稿を読み返してみると、なんだかいまいちだ。全部消して、もう一度書き直そう。5〜6行がんばって書いてみるものの、いまいちしっくりこない(以下、昨日と同じパターンに戻る)。

このように、1歩進んでは1歩下がってばかりで、全く進みませんでした。

質の法則、時間の法則

どうしたら、もっと効率的にスピーディーに文章がかけるんだろう。そう思っていたある日、AIの研究で有名な東京大学の松尾豊先生が学生向けに書いた英語論文の書き方指南を読んで、「まさにこれだ!」と思いました。

研究者らしく、論理的にわかりやすく書かれていて、自分の実感にも合っていたので、ここで紹介したいとおもいます。(少しアレンジしていますので、より詳しく知りたい方は松尾先生のHPをご覧ください)

松尾先生によれば、文章作成には、2つの法則があります。

法則1:質の法則

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英語論文の執筆は実に7回も書き直すそうです。日本語の文章はそこまで必要ないかもしれません(私は、noteの記事は3回程度書き直しています)。重要なのは、論文の質は書き直しの中で上がる、ということです。逆に言えば、初稿(一番最初の原稿)から完璧なものを書くことは、プロでも難しいので、質にはこだわらなくて良いと言えます。

法則2:時間の法則

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一流の研究者ですら、やはり初稿が一番時間がかかるのです。一方で、書き直し回数が増えるほど、スピードが高まっていきます。徐々に書き直す範囲が狭くなるからです。この法則に従えば、初稿の完成スピードを早めることができれば、完成までの時間も早まることがわかります。

以上の2つの法則から、文章を効率的にスピーディーに書き上げるコツは次のようにまとめることができると、私は考えました。

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どうせ何回も書き直すので、初稿の質は低くて構わないのです。それよりも大事なのは、初稿を完成させるスピードです。

昔の私は、5〜6行書いてしっくりこないと思ったら、そこで立ち止まって、もっと良い表現はないかと文章を練っていました。それが間違いだったのです。

質の法則で言えば、どうせ初稿はしっくりこないことだらけなのです。だから、しっくりこようが、こなかろうが、立ち止まらずにどんどん先に進むのが正解です。どうしようもないひどい文章でも構わないので、最後まで一通り書き切ることが、最終的には質を高めることにつながるのです。

企画書は、まず「箱」を並べる

実はこの法則は、文章作成以外にもにも当てはまります。例えば、企画書を作るときにも、初稿を最後まで書き上げることが大事です。

そのことを感じたのは、新入社員時代の研修で、グループワークを行なっていた時のことです。研修担当の先輩から実際の企業のテーマが出されて、各チームが企画を練ってプレゼンする、チーム対抗の研修プログラムでした。

私たちは、絶対に優勝しようと、夜遅くまでチームで話し合いながら企画を練っていました。しかし、プレゼンが明日に迫っても、具体的な企画内容に入る前の、業界分析でつまずいていました。その業界が今後拡大するのか、縮小するのか・・・。チームの意見が割れ、議論は煮詰まっていました。

夕方ごろ、先輩社員が様子を見てきてびっくり。私たちのチームがダントツで進んでいません。私たちが議論した内容を伝えたところ、先輩はあきれた顔をしながらも、A4の白紙を壁に貼り始めました。そして、そこにタイトルを書いていきました。

「はじめに」「与件の確認」「業界分析」「課題」「解決の方向性」「アイデア」「展開例」「期間」など、タイトル付きのA4の白紙がどんどん並んでいきます。もちろん、内容はありません。しかし、プレゼンに必要な「箱」が最後まで見えました。

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並べられた「箱」をみると、自分たちのまだ3割程度しか終わっていないことがよくわかります。頭ではなんとなく感じていたものの、はっきりと目の前に見せられて、ハッとしました。

続いて先輩は私たちに、「これまでどんなアイデアが出たの?」「どんなスケジュールで進めるの?」など聞きながら、箱の中に箇条書きで書いてきます。15分ほどで、スカスカではあるものの、一通りの企画書ができました。そうすると、全体の流れが見えてきて、ずっと悩んでいた「業界分析」の方向性もあっさり見えてきまいた。

翌日のプレゼンは、正直良いものではありませんでしたが、その先輩の「箱」がなかったらと思うとぞっとします。きっと、もっとひどいプレゼンになっていたでしょう。

質にはこだわらず、とにかく一回最後まで作ってみる。それは、文章だけでなく企画書の質を高めることにもつながります。最初のページから順番に深く議論するよりも、煮詰まったらさっさと飛ばして、とにかく最後まで書き上げて、また戻ってきたほうが、質もスピードも高めることができるのです。

質にこだわらず、とにかく一回書き上げる

読みやすい文章を書くコツは、スタートダッシュが9割です。プロだって、最初から完璧な原稿を書くことはできません。初稿は質にはこだわらなくていい。そう考えると、少し気が楽になりませんか? 

私もいまだに、初稿を書きながら「ひどい文章だな」と思うこともあります。つい立ち止まって書き直したくなります。そんなとき、私はこの法則を思い出しながら、「ひどい文章でもいいから、とにかく最後まで書き上げよう。その先は、未来の自分がなんとかしてくれる」と、課題を先送りしながら書くようにしています。

未来の自分、よろしく!

※noteのネタをtwitterでつぶやいています。


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