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企画を通す時に必ず確認したい、4つのチェック項目

所属する日本広告学会で、昨年、学生向けのアイデアコンテスト「学生広告クリエーティブ賞」の設立に携わりました。

オンライン完結型のコンテストとして、コロナ禍でいつものように活動できないゼミの皆様に参加頂き、なんと、予想を上回る82組・約250名に応募していただきました。嬉しい。

金賞は青山学院大学のチームでした。大学のWEBサイトでも取材されており、賞への挑戦が学生にとって良い経験になっていると感じる素敵な内容です(賞を立ち上げてよかった!と思いました)

そして、とても残念なことですが、今年の大学の活動も引き続きオンラインが中心になりそうです。

学生広告クリエーティブ賞は今年もこちらのページで募集を開始しています。説明会の動画もアップしました。

日本広告学会の会員の先生方には、ぜひこの機会をご活用いただければと思っています。

さて、今日は、上記の説明会でも解説されている「企画の4つの審査基準」について書きたいと思います。

これは、私を含めた広告会社で実務経験のある四人の審査委員が、企画を見る上で特に大事だと考える4つの視点です。

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説明会で別の審査委員が解説しているのを聴きながら、改めて、これは学生のみならず、企画やプレゼンをするすべての人にとっても大事だな!と思いました。

どうしても通したい企画がある時には、この4つの視点で見直してみることで、その確率を高めてくれると思います。

そこで、今回は私なりにこの4つの項目について解説してみたいと思います。

参加を検討している学生や、企画の仕事をしている人の参考になれば嬉しいです。

1.説得力

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1つ目は、説得力です。

企画の多くは、企業が抱える課題の解決のために行われます。

ですから、企画の冒頭に、今回の企画はどのような課題を解決するものなのかという課題の設定があります。

課題の設定に十分な説得力があるのか?というのが1つ目のチェック項目です。

例えば、あるオフィスビルで、「エレベーターの待ち時間が長い!」「エレベーターが改善されなければ引越もやむをえない!」と使用者のクレームが出ていたとします。

そこで、管理会社はビルのオーナーにエレベーターを増設する企画を提案することにしました。(このエピソードは、エイコフ著「問題解決のアート」を参考にしています)

このような企画の場合、設定された課題は「エレベーターの待ち時間が長いというクレームが多発している」ことです。

しかし、普段はビルにいないオーナーから見たら、本当にそれがお金をかけても解決するほどの大きな課題なのか分かりません。

そんな時、「利用者の80%が課題に感じている」「実際に10社中7社が引っ越しを検討している」などの情報があると、この課題に対する説得力が高まります。

また、数字だけが説得力を高める唯一の方法ではありません。例えば、人々がエレベーターに対するクレームを語る映像を見せることで、いかに怒りが高まっているかが伝わるかもしれません。

いずれにせよ、課題の設定が企画者の単なる思いつきや、一部の声の大きい人のものではなく、重要な課題であるという説得力を増すことが重要です。

特に、初めて企画を見る相手にとって説得力があるものか、という視点で見なおしてみるのが大事です。

2.発想力

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2つ目は発想力です。課題を解決するアイデアに、「その手があったか!」と驚きを与えるポイントがあるかどうかです。

企画の「企」は「企てる」「企む」という意味です。

企画に独自の企て・企みがあるのか、さらには、それが相手に伝わっているのかを確認します。

先程のエレベーターの事例を再び使います。エレベータの増設には大きなコストがかかり、現実的ではないことが判明しました。

そこで、ビルの管理会社で若手を集めてブレインストーミングをした結果、次のようなアイデアが生まれました。

各階のエレベーターの前に大きな鏡を置く

実際にこの提案は実行に移され、その後すぐにクレームは一切なくなったそうです。

この企画の「たくらみ」は、エレベーターの待ち時間を実際に短くするのではなく、待ち時間を気にしなくさせる、という発想転換にあります。

鏡があれば、身だしなみを整えたりすることで気が紛れて、待ち時間が気にならなくなるのではないか。そんな発想力が、この企画に「その手があったか!」を感じさせるのです。

企画全体が「正しいけれどつまらない」ものになっていると感じたら、発想力が弱いのかもしれません。

「その手があったか!」とまでに感じられるポイントがあるのか、を確認することが重要です。

3.定着力

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あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、広告クリエイティブの分野で「アイデアを具現化する」という意味で使われている言葉です。

企画段階においては、そのアイデアの実現可能性が高いかどうか、という点をチェックすることが重要です。

どんなに説得力や発想力が良くても、実際に実行できる内容でなければ良い企画とは言えません。

先程のエレベーターの事例でいえば、「待ち時間を気にならない時間に変える」という方針だけでは、「確かにそうできたらいいけど、どうやって実現できるの?」となってしまいます。

そのような方針と一緒に、「各階に大きな鏡を置く」というコスト的にもスペース的にも実現可能な方法がセットで提案されていることが、企画の定着力を高めているのです。

方針を実現する具体的な方法を考えておくことは非常に重要です。逆に、「例えば?」と質問されて言葉に詰まるようでは、良い企画とは言えないかもしれません。

4.解決力

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最後のポイントは、解決力。この企画が、当初設定した課題を解決してくれるのか?という問いです。

どんなに面白いアイデアで実現性が高くても、課題を解決してくれない企画には意味がないとは言いませんが、「やった方が良い」止まりになってしまいます。

企画を考えていると、だんだんとのめり込んで、具体的な実施方法に熱が入るがあまり、当初の課題を忘れてしまうことがよくあります。

例えば、エレベーターに設置する鏡を色々と探していたら、鏡の奥深い世界にはまりこんでしまい、つい鏡面の美しさやサイズを熱弁してしまうようなことがあります。

でも、当初の課題に立ち戻れば、ただ待ち時間に身だしなみが整えられればよいだけなので、鏡面のキレイさは大きな問題ではありません。

この企画はなんのために行うのかという視点で企画を見直すことが重要です。

そして、課題解決に直接関係がない要素があれば思い切って削り、本当に必要な部分を際立たせることで、ストレートで力強い企画になると思います。

企画で一番ハッとさせたい所にこだわりを持つ

以上が、企画をより良くするための4つの視点です。

最後に、私が学生の方にアドバイスする際、次のような質問をします。

この企画で、一番ハッとさせたいポイントはどこですか?

今回は4つのチェック項目をお話ししましたが、4つすべてを80点で無難に作るよりも、自分がもっともハッとさせたいポイントを定めて、「3つの項目70点だったが、1つの項目だけは100点だった」という企画の方が、聞き手の心に残ります。

迷った時は「自分が一番面白いと思ったところはどこか」に立ち戻り、自分の感覚を信じてブラッシュアップしてもらえたらと思います。

たくさんの良い企画が集まることを楽しみにしています!


※ツイッターでも自分が気になる記事を毎日1つコメント付きで投稿しています。企画のヒントになるかも?


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岡田 庄生 | ブランド戦略コンサルタント
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