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相手のやる気を引き出す褒め方、「2ストライク1ボール」の法則

20代のビジネスパーソンに「評価」に関する調査を行ったところ、約半数にあたる48.2%が、評価を実感できていないと答えたそうです。

ちなみに、評価されていると感じる瞬間の圧倒的第一は、「上司から褒められたとき」(53.1%)。

いま、組織には「褒める力」が求められているようです。

実際に、社員同士が成果を評価したり、お互いに報酬を与え合う「ピアボーナス」サービスの導入も増えているといいます。

このような仕組みの導入も大事ですが、最近感じるのは、日常の仕事の中にも、実はたくさん「褒める」チャンスはある、ということです。

そこで今日は、私が意識している若手に対するコミュニケーションを、「褒める」という点に着目して書いてみたいと思います。


アドバイスは「2ストライク1ボール」


今年からマネージャーになったので、後輩が書いた企画書にアドバイスする機会が増えました。

ところで、企画の世界には、このようなオキテがあります。それは、「企画書は、書いた本人がプレゼンする」というものです。

人が書いた企画書は、文字だけを読み上げることはできますが、気持ちが込もりません。気持ちが込もらないプレゼンは、当然のことながら相手にも届きません。

企画者たるもの、自分で考えて、自分で企画書を書き上げて、自分の言葉でプレゼンをする必要があると、私は考えています。

だからこそ、企画書のアドバイスは意外と難しい作業なのです。

アドバイスしすぎてしまうと、「自分が書いた企画書」感が薄れてしまいます。とはいえ、修正しないと、仕事の質が落ちて、本人の成果や達成感にもつながりません。

いっそ、自分で書いて自分がプレゼンした方が楽だな、と思うこともありますが、それでは一生プレイングマネージャーから抜けられませんし、若手も育ちません。

そんな時、私が思い出すのが、ある先輩コンサルタントが教えてくれた、「2ストライク1ボール」という言葉です(当時はまだ、ストライクを先に言う時代でした)。

その先輩から、部下の仕事にアドバイスする時には、「最初に2つ褒めて、次に1つ改善点を指摘する」という法則を教えてもらいました。

それ以来、、例えばこんな感じで「2ストライク1ボール」を実践しています。

後輩から、作成中の企画書の説明を受けた後。

「企画書の説明ありがとう!(まず感謝から入る)

この企画書、全体的に読みやすくて、相手のことを考えて丁寧に作っているのが伝わってくるよ(1ストライク目は、全体感で褒める)。

特に、15ページ目のこの言葉はすごくいいね。クライアントのAさんに刺さりそうな言葉だなと思いました(2ストライク目は具体的な箇所について褒める)。

やっぱり、このページは言葉にいろいろとこだわったの?(質問をいれる)

すごくいいと思うんだけど、気になるところが1つあって、このページはどういう狙いで入れているの?(改善点は、本当は3つぐらいあるが、まずは1つに絞る)」

このように、まず褒めること、聞くこと、その上で指摘すること、という流れを意識するようにしています。

そうすることで、指摘される側も、自分の仕事を褒めてもらった上で、改善点の指摘をされるので、ある程度受け入れやすいのではないかと思います。

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マイボール感を生み出す"I"メッセージ


さらに、話し方にも注意が必要です。

私は、アドバイスする時には、なるべく「"I"(アイ)メッセージ」、すなわち自分を主語にした話し方をするようにしています。

企画の仕事は、何が正解なのか、世の中に出してみるまで誰もわかりません。

特に広告やコミュニケーションの世界は変化が激しいので、私よりも若い人の感覚の方が合っているなんてことが、よくあります。

ですので、改善点を指摘する時に、「世の中はこうだ」「クライアントはこうだ」「我が社はこうすべきだ」という「"WE"メッセージ」は使わずに、「私は、一人のプランナーとしてこう思うけれど、あなたはどう思う?」という「"I"メッセージ」を使うように意識しています。

そして、「こうしなさい」ではなく、「どう思う?」と問いかけで終わるようにしています。

私の個人的な改善点は伝えたけれど、その意見を聞くかどうかはプレゼンするあなたが決めることだ、というニュアンスで伝えることで、相手の「マイボール感」を損なわないように意識しています。

なぜなら、企画書やプレゼンは、自分が作ったという「マイボール感」がすごく大事だからです。

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「マイボール感」があれば、上司の意見を参考にしながらも、自分で企画書を改善しようという気になります。仮に提案がうまくいかなかったとしても、何が悪かったのかを必死で考えるので、得るものは大きいはずです。

逆に、「マイボール感」がないと、「上司が言っているからこうしよう。でも失敗しても上司のせいだな」となってしまい、学びの効果も激減してしまいます。このような事態を避けるためにも、"I"メッセージが重要なのです。

ここまでをまとめると、以下のようになります。

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もちろん、私が常に完璧にできているかというと、そんなことはありません。

しかし、このような機会は、企画書のチェックだけでなく、簡単な資料の確認やメールのやりとりなど、日常の中に結構多くある気がします。

そういう機会を逃さずに、「褒める」「問いかける」を行うことが、若手の評価や成長の実感につながり、モチベーションを高めるきっかけになるかもしれません。


若手はどうすべきか?


「私も褒められたい!」

そんな若手は、どうしたら良いでしょうか。最後に、私が若手にオススメする、褒められやすい(?)行動について、2つの点を書きたいと思います。

1点目は、上司には早めに資料を見せにいくことです。

締め切りまでに時間がないと、「褒める」「問いかける」なんて余裕は無く、具体的な改善点するしかありません。

完成度が低くても構わないので、修正できるタイミングで、早めに持ってきてもらえると「2ストライク1ボール」がやりやすいので助かります。

2点目は、"I"(アイ)メッセージのページを作る、つまり「自分はこう思うのですが、こうしたいのですが」という意思を込めたページを1ページでもいいので入れてくれると、私だったらとても嬉しいです。

特に企画のような正解のない仕事では、個人の意志がとても大事です。

もちろん、「クライアントが」「会社が」というページも必要ですが、それだけで埋めてしまうのではなく、1ページでもいいから「自分が」という"I"(アイ)メッセージで作った勝負ページを入れてもらえると、こちらも"I"(アイ)メッセージで話しやすいと思います。

年齢や経験関係なく、「1人のビジネスパーソン」同士が意志を持って議論した方が、良い企画が生まれるに違いありません。

ということで、若手の方におすすめの行動としては、2つです。

● 早めに資料を持っていこう。

● 意志を込めたページを作ろう。

このような若手は、きっと上司から評価され、成長も早いと思います。

コミュニケーション機会が減りがちな昨今ですので、上司も若手も、限りある機会をうまく使って、成長や評価が実感できるチームになれるといいなと思います。

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岡田 庄生 | ブランド戦略コンサルタント
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