「えー!打楽器やってんの~?wじゃあ……
人生において避けられない「呪い」は沢山ある。
男であれば、下ネタとかゴミみたいに浅い政治の話とか「男なら当然のこと」とされる話を振られる。
漫画が好きなら「えー漫画好きなんだ!俺もワンピ読んでるw」と何故か漫画好きは全員ワンピを読んでDの意志に想いを馳せているワンピ考察勢である前提で話を振られる。
とにかくそういったコミュニケーションの取り方が一般的なようで、僕はこれらを「呪い」と呼び恐れている。あ、ワンピは好きですよ、空島までは
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さて、僕はマリンバ(大型の木琴)を専門に演奏している。見たことがない人も多いだろうが、「きょうの料理」のテーマ音楽の楽器というと分かってくれる人も多い。
マリンバは「鍵盤打楽器」に分類され、鍵盤打楽器は「打楽器」に大別される。
本題はここからです。
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飲み会で
「何やってる人なんですか~?w」と訊かれることは間々あることだ。
僕は決して「マリンバです」とは答えない。なぜなら「え?マリ…何?」となる事は目に見えているし、ニッチな楽器やってるマウントと取られる可能性もあるからだ。
まずは「あ、打楽器をやってます。」と答える。大きな枠組みから答える、万人に伝わる良い方法です。
しかしどうだろう、打楽器をやっていると言うと
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「えー!じゃあドラムとか叩けんの?w」
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である。
あ、完全に「呪い」が発動しました。
"じゃあ"?ドラム"とか"?もうこの時点でコミュニケーションは死んでいる。
彼らの中では漫画はワンピか鬼滅しか存在しないし、映画は天気の子しか存在しないし、打楽器はドラムしか存在しないのだ。
しかしこのままドラムが叩けると認識されてしまうと、新たな呪いが生まれるのである。
「えーじゃあ箸でエアドラムやってみてww」
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死にました
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……ダメだ。ここで言葉を詰まらせては何かを失う。
普段修行していることを飲みの席でやらせる失礼さを説こうにも、箸でドラムに興じるというマナー違反を先に言えばいいのか、いや、根本の意識から発言しているなら、そもそもコイツはどんな幼少期を経てきたんだ
しかしここで黙ってしまうと第二第三の呪いが次々と飛んでくる。
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「俺もバンドやってたwwww」
「ワンオク叩ける?wwwww」
「バンドの人紹介してよwww」
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あっ
あっちょっま
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死にました。
─────────(心電図)
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語り部が二人死にましたので、ここからは三人めの僕が続けます。
飲み会のノリを続けながら、自分がなにを専門としているのか伝えるのはそもそも無理なのだ。
なぜなら、彼らの語尾には常にwwwが付いており、このタイプの飲み会の中で常に優先されるのはウケること、モテることのみだからだ。
次に僕は「じゃあドラムとか叩けんの?w」の呪いを回避しようと
「あ、木琴やってます。」
と言う。マリンバと言うよりまだ分かりやすいし、ドラムの呪いは来ないだろう。
しかし安心してはいけない。
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「木琴ww小学校の時やってたww」
「木琴とかwwwウケんねwwww」
「バチ何本持てんの?10本?www」
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そう。
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三人目の僕も死にました。
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──────────
プライドは低くあれ。
誇りを持たず初心に生きろ。
とはかの有名な経営者の金言であるが、普段から路傍で職質されながら文句を言わず生きているさすがの僕も残機がなくなりました。まあその言葉いま考えたんですけど
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★☆★☆★☆ボーナスステージ☆★☆★☆★
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さあ!
地獄の呪いの飲み会、僕ァいろいろ言うけれど!
コミュ障背負って三十余!
文句を言えたためしナシ!!
これからお見せいたしますのは!
実際のリアルタイムで進む地獄の呪いのアッ飲み会の!ご様子ザンスよ~!!
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ワイワイガヤガヤ
知らない人「え、ハセさんは普段何やってる人なんですか~?w」
ぼく「あス…普段、普段というと、えー、だ、だ打楽器です、ね」
知らない人(以下、敵)「えー!じゃあドラムとか叩けんの?w」
ぼく「あ…ドラム、ドラムっぽいのも何と言うか、やる時もあるんですが、主にクラシックで」
敵「えーじゃあ箸でエアドラムやってみてww」
ぼく「アスッ…?!あの、ちょ、ちっとそれは難しい、です───スミマスン…」
敵「ウケるwwww」
敵2「俺もバンドやってたwwww」
敵3「ワンオク叩ける?wwwww」
敵4「バンドの人紹介してよwww」
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ぼく「あ、すみません!!仕事の…いや、タっ…トイレ行ってきます!!」
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ぼく「……ハァー、やってけね~(笑)あいつらとツルむのはガチで勘弁だわ(笑)程度が低い(笑)」
笑顔とは裏腹に、僕の頬には暖かな光が滑り落ちた。
完
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