2024-11-11【The Annual Meeting of Japanese Biomedical Society】
筋ジストロフィーは原因遺伝子の違いにより60種類以上のタイプがあります。その中でも福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は日本人に多く、重度の筋ジストロフィー、脳異常、眼の合併症を特徴としています。原因遺伝子は第9染色体上のフクチンですが、その産物は長い間不明でした。
先週、日本生化学会の年次大会にお招きいただき、希少疾患に対する医薬品開発の現状について講演しました。そこで愛媛大学の金川基教授のご講演を拝聴し、筋ジストロフィーの原因が細胞内だけでなく、細胞外にもあることを知り、大変驚きました。つまり、筋ジストロフィーの原因はジストロフィンという細胞骨格の崩壊だけでなく、筋細胞と細胞外マトリックスの断絶にもあるというのです。α-ジストログリカン(α-DG)がこの細胞内外の橋渡しをしています。金川先生は、長らく不明であったフクチンの遺伝子産物が、リビトール5リン酸転移酵素であることを突き止められました。その酵素はα-DGのグリコシル化に関与しています。フクチン遺伝子異常がこの酵素の働きに影響し、α-DGを介した細胞骨格と基底膜の結合の破綻をきたすことで、FCMDの発症につながっているのです。標的メカニズムが明確になることは、効果的な治療薬の開発に大きな前進をもたらします。そしてFCMDは日本ではデュシェンヌ型(DMD)に次いで2番目に多く、ほぼ日本人にしか発症しないため、日本がこの分野の研究をリードしています。しかし、この日本にしかない独占性そのものが、医薬品開発を困難にしています。
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