2024-09-09【Essays on Identity】
今、心理セラピストを描いたイギリスのフィクション小説を読んでいます。彼は幼少期に父親から虐待を受けたために、自分自身に精神的トラウマを抱えています。幸運にもある心理セラピストとの出会いのおかげで、彼は自分のトラウマから解放されて、人を助けるために自分もその職業を選びました。治療の間、そのセラピストがしたことはただ話を聞いて、苦痛を彼と共有することだけでした。何年にもわたる虐待の結果、彼は情動に乏しく無感動になっていたのですが、ある日、そのセラピストと無表情で話していると、彼女の目から涙があふれていることに驚きます。彼女は彼の代わりに痛みを感じていたのです。これこそが心理療法が効果を発揮するやり方なのです。患者は自分のバラバラになった過去の経験を他者に投影することで、心の断片が統合され、一貫した自分のイメージを再構築することができます。そのイメージはアイデンティティと呼ばれています。
週末に家族を題材にした映画をみました。酒屋を営む若者が、ある日自転車で配達の途中、中年女性にぶつかってしまいます。幸いけがもなく済んだのですが、謝罪すると、本人やその夫からひどく罵られ、お前は人間の屑で生きている資格がないとまで言われてしまいます。若者は罵られているうちに、自分は本当に最低の人間だと落ち込んでしまい、いたたまれなくなって母親に電話します。すると母親は、若者が小学生だったころ、運動会の徒競走で一番で走っていたのに、後ろで転んだ子供を助けようと駆け寄って、ビリで一緒にゴールした思い出を語ります。「お前は昔からそういう優しい子だよ。」 若者は自信を取り戻して仕事に戻ります。家族は自分のアイデンティティを形成する原点と言えます。
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