2024-08-26【Japanese drug discovery capability】
先日、アイパークにおられるスタートアップの社長さんから、循環器系の新薬パイプラインに興味を持ちそうな企業を紹介してくれないかと聞かれました。「大企業はこのような一般的な疾患から遠ざかっているので、難しいとは思いますが...」と申し訳なさそうに言い添えて。たしかにそうですが例外もあります。例えばノボ社やリリー社の肥満治療薬は、生活習慣病に関連する心血管疾患治療薬のすべてを絡めとり、今では大手企業や無数のスタートアップが後を追っています。高脂血症の治療は、何十もの原因メカニズムに細分化されて、それぞれにRNA治療薬や抗体が活発に研究されています。そしてつい先週、アルナイラム社は、心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR)に対して、vutrisiranの第3相試験が示した良好なトップライン結果を発表しました。
みなさんはこの特殊な心筋症を最近よく耳にするのではないでしょうか。医薬品開発における流行の常として、最初のパイオニアがそのメカニズムを医薬品にできることを証明すると、多くの医薬品がその道になだれ込んできます。ファイザー社のtafamidisは、心筋症を伴うATTRにおけるそのようなパイオニアです。アミロイドが形成され、最終的に心不全を引き起こすまでには、複数の連続したステップがあります。トランスサイレチンは単量体として肝臓で産生され、安定した4量体を形成し、血液中で甲状腺ホルモンとビタミンAを運搬する役割をもちます。ATTRでは、この4量体が何らかの原因で不安定化、解離し、ミスフォールディング(折り畳み不全)を起こし、アミロイド線維を形成して臓器や組織に沈着していきます*。このプロセスにおいて、創薬研究は次の3つのメカニズムで探求されてきました。(1)トランスサイレチンの産生を止めるか遅らせる、(2)4量体を安定化させる、(3)ミスフォールドしたアミロイド線維や沈着物を除去する。tafamidisは(2)のカテゴリーに属しています。それは経口投与の低分子化合物で、トランスサイレチンに結合してその構造を安定化し、単量体への解離を防ぎます。その画期的な第3相試験**において、tafamidisは、ATTR心筋症患者において、野生型対変異型、心不全のレベル、投与量などで分けられたすべての患者群で、プラセボと比較して全死亡および心血管関連の入院の発生率を減少させました。結果、2019年にFDAに承認され、この疾患における最初で唯一のブロックバスターとなり、年間30億ドル超の売上を記録しました。
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