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短編小説『やはり故郷が落ち着く』

「うわー、腰がいてぇ」
 俺がそう呟くと、後輩が近づいてきた。
「僕が何とかしましょうか?」
「え? ……おう」
 後輩は俺の右膝をトントンと指で叩く。
「どうですか」
「どうですかって、俺は腰がいた……はっ、痛くない」
 腰の痛みが引いている。
 この後輩は凄い!
「あれ、でもなんだかめっちゃ右膝が痛くなってきた」
「はい」
 後輩は俺の左肩を指でトントンと叩いた。
「右膝の痛み取れたぞ! ぐあっ、左肩がいてぇ!」
「はい」
 ははん、そういうことか。
 俺は後輩に体のありとあらゆるところをトントンさせ、痛みが弱い場所を探した。
 そして。
「後輩よ」
「はい」
「わかったぞ。腰が痛いときが一番痛くない」
「痛みも生まれた場所が落ち着くんでしょう」
「……」
「ごめん」
「いえ」
「……」
「湿布持ってきましょうか?」
「うん、お願い」
 後輩には後で何か奢ろう……。

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