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ドラマ感想『自由研究には向かない殺人』

ネットフリックスのドラマです。
主人公ピップ役のエマ・マイヤーズが信じられない程に可愛い作品です。

1 何を大事にするか

小説を読んでからドラマに挑んだので、やはり違いには敏感になりました。設定が変更されていたり、後半の見せ場を前半にもってくるなどの変更はかなりありました。

着実に真実に迫っていく原作に比べ、視覚的な見せ場を重視していたように感じられます。

よって、原作を知らない人はどう犯人を予想して楽しむのかがわからないような、プロット的にはあまりうまくない作りのように感じました。

しかし、今作で原作よりも重要視されていたのは、主人公ピップの愚かさと犯罪の怖さだと、僕は思います。

ピップというのはわりと危ない人間です。犯罪実録のポットキャストを聞くのが日課で、普通の女子高生を演じはていますが、自分が犯罪の世界に片足を突っ込んででも未開の事件を解決したいという、探偵の欲望が渦巻いていることは間違いありません。

ドラマではそのピップの恐ろしい部分が如実に表れていて、勝手に人の部屋に入って物を物色したり、平気で嘘をついて人のスマホを奪い取り操作するなどの、探偵としてはあるまじき行為が極めてポップに描かれます。不自然なまでの明るさが(そしてエママイヤーズの可愛さも相まって)、逆にピップに潜む、一般的な good girlとは程遠い不健全な部分を露わにしています。

なぜ、ここまでピップの狂気性に焦点を当てるのかと不思議に思っていると、もう一つ原作よりも痛烈に胸に入ってきたものがありました。それは犯罪の怖さです。

この作品は、小さい町を舞台としながらも、いくつもの凶悪犯罪が絡み合う、とんでもない規模の犯罪群を題材としています。文字を読んでいると、どうしても犯人を追ってしまいます。ですが、先程も言った通り、ドラマ版はいまいちミステリーとしては弱く、見ごたえがありません。この情報を得たいからこの行動を起こす、という過程の積み重ねや、こいつが犯人なのではないか、犯人だったら嫌だな、というピップの個人的な疑いと感情が、どうしても客観的な視点になるドラマではわかりづらいので、ついていくのが難しい、といった感じでしょうか。

ただ、その分際立っていたのが、一つ一つの犯罪の怖さです。文字ではさらりと流せても、その場面が訪れたり、被害者の表情が映されると、やっぱり殺人、レイプ、監禁、の凄惨さがより伝わってきます。それらを行った犯人が、顔見知りとして近くに住んでいるという恐怖も倍増します。

ピップという何の権力も持っていないただの高校生が、これらの犯罪に立ち向かうためには、good girlの状態では足りないのです。目には目を、歯には歯を、ではないですけど、凶悪な人物と相対する時に、ピップはそれに負けずとも劣らない、正義と言う名で固められた狂気で戦うしかないのです。

犯罪と高校生。この組み合わせがいかに釣り合わず、いかにいびつであるのか、という部分を大事にし、視聴者に作品が持つ狂気をお届けする、というのがドラマ版の面白さだったと思います。ミステリーとしての魅力は弱いですが、視覚的に見ていて面白さが絶えませんでした。

なにやら続編もドラマでやりそうなので、追うこと間違いなしです。(エマ・マイヤーズ可愛いし)

原作同様ラヴィもいい奴でよかったです。

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