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短編小説『冬の少年少女』

 朝。
 布団から出れない。
 学校があるのはわかってる。お母さんが怒るのだってわかる。
 目だってしっかり開くんだよ。でも、外は寒くて、布団の中はとても暖かい。
 布団から出なきゃ、出なきゃ、って思っている間に、瞼がふわりふわりと落ちてくる。その心地よさといったらもう……もう……凄い。
 ダメだ!
 このままでは自堕落な人間になってしまう。
僕が布団から出られないのは、布団に入るからだ。簡単な話だ。布団に入らなければいいんだよ。
 だが、今度は寒すぎて眠れん。凍死してしまうよ。
 こんなんだから僕はいつまでも子どもっぽいと言われるんだ。
 中学生、高校生、大人。彼らはきっと布団からすぐに飛び出ることができて、学校や仕事にハキハキと向かうかうことができるんだろうなぁ。

 少年よ。
 その考えは間違っているぞ……。
 極めて間違っている……。

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